第3部:分析①——市場判断の誤り(2%の幻想)
なぜ、コンテストで「最高」と評価された作品が、市場でこれほどまでに無視されるのか。
その最初の原因は、「評価の母集団」と「市場の母集団」が決定的に異なるという点にある。
カクヨムのユーザーは「総人口の2%」に過ぎない
カクヨムや「小説家になろう」といった投稿サイトの登録ユーザー数は、それぞれ約200万人程度と言われている。これは日本の総人口(約1億2,000万人)のわずか2%に過ぎない。
つまり、これらのプラットフォームで評価される作品は、日本の読者の「2%」の嗜好を反映したものであり、残りの「98%」の嗜好を代表しているわけではない。
2%の「好き」と、98%の「買わない」
この2%のユーザーは、いわゆる「ヘビーなACGファン」であり、かつ「創作経験者」でもあることが多い。彼らが面白いと感じる作品の傾向は、必ずしも一般の読者が「買いたい」と思う作品の傾向と一致しない。
· 2%のユーザーが「好き」な作品 → プラットフォームで高い評価を得る
· 98%の市場が「買いたい」と思う作品 → Amazonで売れる
この二つは、しばしば一致しない。そして角川は、前者を後者と誤認している。
なろう系ランキングは「同好会のランキング」に過ぎない
「小説家になろう」のランキングは、あくまで「なろうユーザー」の間での人気を示すものである。それは「日本全体の読者」の間での人気を示すものではない。
角川がこのランキングを「市場の声」として採用し、出版判断の基準にしてしまったことで、出版社として最も重要な機能——「編集者が市場を見極める」という機能——が徐々に退化していった。
編集機能の放棄
本来、出版社の役割は、プラットフォームの「数字」をそのまま受け入れることではない。編集者が市場を読み、読者がまだ気づいていない「面白さ」を発掘し、作品を磨き上げることにある。
しかし、角川はその役割を放棄し、「PVと評価ポイント」という単純な指標に出版判断を委ねるようになった。
その結果が、冒頭のデータである。





