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後書き3 ~ 長いタイトルへの社会的スティグマ(社会的烙印)について

みなさんは、以下の作品をご存知だろうか。


『豪華客船で無職の貧乏画家は悪役令息の婚約者である貴族の令嬢をNTRして、最後は令息が婚約破棄して、令嬢が無職画家を見殺した件』


『異世界に転生したら絶滅危惧種の青い巨人になって、なんと部族の令嬢と結婚して、悪役地球企業と戦うことになった件 ~青い体で愛と平和を守るファンタジー~』


『【弾丸回避チート】社畜が目を覚ましたら実は選ばれし者だった件〜機械軍団を無双して人類を救うまで〜』


『隣に住む人妻を救うため、固有スキル【数学】を持つおっさんは、無双のアリバイをそのチートで構築したけど、まさか親友が刑事だった件』


……すみません。うっかり、お馴染みの「なろう・カクヨム」風の長いタイトルで書いてしまった。


標準語タイトルは、それぞれ以下の通りである。

『タイタニック』

『アバター』

『マトリックス』

『容疑者Xの献身』


■ 脳が拒絶する「違和感」の正体


もし、先ほどの長いタイトルを見て、


「何だこれ?」

「笑えるけど、なんか生理的な違和感がある」

「こんな知性の低そうなタイトルの作品、高確率で観たくない」


と感じたならば、それこそが、一般読者がネット小説の「長いタイトル」に対して抱くリアルな感覚である。


あなたが『タイタニック』のなろう化タイトルに感じた強烈な違和感。それは、一般読者が**『転生したら婚約破棄した大公から追放された私は、辺境伯に嫁ぎます』**というタイトルを見たときに抱く「社会的スティグマ(忌避感)」と、まったく同じものなのだ。


ネット小説の長いタイトルには、二つの完全に矛盾する側面がある。


【プラットフォーム上のメリット(生存戦略)】

キーワードの詰め込み:アルゴリズムの検索に引っかかりやすい

タイムパフォーマンスの極大化:中身(異世界、転生、婚約破棄など)が一目で伝わる

瞬間的なPVの獲得:クリックを促すドーパミン誘発装置


【実店舗(リアル書店)でのデメリット(死の宣告)】

美意識の欠如:「知性の低い、恥ずかしい本」と映る

社会的スティグマ(羞恥心):レジに持っていくこと、電車内で開くことに抵抗感を覚える

信頼の崩壊:「まともな読書体験」として認識されない


つまり、長いタイトルはネット上では最強の「武器」だが、一歩現実世界(書店)に出た瞬間に、自らの足を引っ張る「重い鎖」へと変貌するのだ。


■ では、どうすればいいのか?


答えは単純だ。「書籍化(商業化)するときに、タイトルを短くすればいい」。

プラットフォーム上では、長いタイトルを「PV獲得のための撒き餌」として割り切って使い倒し、いざリアル書店で勝負する段階になったら、洗練された短いタイトルに変更する。プラットフォームと実店舗、それぞれの生態系に合わせた「最適化(変身)」を行うのだ。


実際、東野圭吾の作品はどれも驚くほどタイトルが短い。


『容疑者Xの献身』、『白夜行』、『流星の絆』。どれも内容を直接的に説明してなどいない。それでも、私たちは吸い寄せられるように本を手に取る。なぜなら、短いタイトルには**「この中には、言葉に尽くせない物語が眠っている」という、作品と作家に対する「絶対的な信頼感」**があるからだ。


長いタイトルは「内容を説明する」ことには成功しているが、「作品としての信頼感ブランドを生む」ことには決定的に失敗している。これが、いくらネットで数百万PVを稼いだ作品でも、実店舗に並んだ瞬間に爆死する最大の理由だ。


■ まとめ


タイトルは、作品の「顔」である。


プラットフォームという狂ったアルゴリズムの世界と、静謐なリアル書店という現実世界で、同じ顔を使い続ける必要はまったくないのではないか。


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