彼の目に映るもの
1
ジェレマイア・ワシントンは、毎朝同じように目を覚ます。
しかし、目を覚ますたびに、まず彼の意識に浮かぶのは感謝ではなく、今日も息ができることへの驚きだった。
膵臓癌。ステージ4。医師が宣告した余命は、あと半年から一年。
アラバマ州モンゴメリーの小さなバプテスト教会から徒歩三分の場所にある彼のアパートは、日曜日ごとに聞こえてくるゴスペルの残響が壁に染みついている。五十七歳の彼は、教会の信徒会長を務め、聖書研究のクラスも教えている。信仰は彼の骨の髄まで浸透していた。
「主よ、今日もあなたを讃えます。私に今日という日をお与えくださり、ありがとうございます」
ベッドの脇で膝をつき、祈りから一日が始まる。それは幼い頃に母から教えられた習慣だった。
しかし——ここ数年、祈りの最中に引っかかるものがある。まるで喉に小さな魚の骨が刺さったような、取れない違和感。そして今、余命宣告を受けたことで、その違和感はもはや無視できない大きさに膨れ上がっていた。
これが私の最後の仕事かもしれない——彼はそう直感していた。
2
きっかけは、教会の改装だった。
建て替えられた礼拝堂の正面、バプテスマのプールの上に、新しいステンドグラスが据えられた。イエス・キリストが両腕を広げ、羊飼いの杖を持っている——どこにでもあるような優しい構図だ。
しかし、そのイエスは金髪で、碧い瞳を持ち、透き通るような白い肌をしていた。
ジェレマイアはそのステンドグラスを初めて見た時、奇妙な感覚に襲われた。それは怒りではなかった。怒りならまだ単純だ。それはもっと深く、もっと複雑で、言葉にするのが難しい何かだった。
「美しい窓だね、ジェレマイア」
隣に立っていた老執事のルーカスが言った。彼も黒人だったが、その表情には何の曇りもない。
「ああ…美しいな」
ジェレマイアはそう答えることしかできなかった。
だがその夜、彼は眠れなかった。スマートフォンを手に取り、ニュースをスクロールした。まただ。フロリダで、ジョギングをしていた黒人の少年が、白人の自警団員に射殺された。遺体を特定する前に、警察は「不審者だった」と発表した。少年はただ、朝のジョギングを楽しんでいただけだった。
彼はニュース記事を閉じ、天井を見つめた。
——神様は、白人優先なんだろうか。
その問いが、彼の心に重くのしかかった。
3
その翌週の日曜日、説教の最中に、新任の若い白人牧師がこう言った。
「兄弟姉妹の皆さん、私たちはみな、神の似姿に創られました。肌の色や髪の形に関係なく、私たちはみな、あの美しい金髪のイエス様のように、神の栄光を映し出しているのです」
会衆は「アーメン」と応じた。
ジェレマイアだけが、口を閉ざしていた。
「金髪のイエス様のように」——牧師に悪意はない。それはわかっている。むしろ、善意から言っている。私たちもイエスのように美しいのだ、と。しかし、その言葉の裏にある前提が、ジェレマイアの胸に鋭く突き刺さった。
つまり、イエスは白人であり、私たちはその似姿として創られている——その神学が、無意識のうちに刷り込まれている。
彼は礼拝後、牧師に話しかけようとして、やめた。何と言えばいいのか。あなたの言葉は無意識のうちに白人性を神聖化しています、などと言ったところで、牧師はおそらく首をかしげるだけだろう。「私はただ、イエスの美しさを讃えただけです」と。
4
その火曜日、ジェレマイアは通院の帰りに、教会の書庫の整理を手伝った。もう体力は限界だったが、じっとしているよりはましだった。
長年使われていなかった段ボール箱の底に、埃をかぶった一冊の本があった。表紙はボロボロで、背表紙の文字はほとんど消えかけている。彼がそっと開くと、それは二十世紀初頭に出版されたキリスト教美術の集成だった。
ページをめくると、ラファエロ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ——よく知られたルネサンスの作品が並んでいる。どれも金髪か薄茶色の髪、白い肌のイエスだ。
しかし、彼がふと手を止めた。目次に「東方教会のイコン」という章があった。そこに彼は衝撃的なものを見た。
——黒い肌のイエス。
いや、厳密に言えば、それは「黒い」というより、中東の人々が持つ、オリーブ色の肌、黒い巻き毛、力強い眉。シリアの古い教会のイコン、エチオピアのラリベラ岩窟教会のフレスコ画、コプト教会の写本挿絵。
そこに描かれていたイエスは、彼の知っているどのイメージとも違っていた。しかし、彼の魂の奥底で何かが——まるで長い間暗闇に置かれていたものが、ようやく光を受けたように——震えた。
その時、彼の携帯電話が震えた。着信画面に表示された名前を見て、彼の心臓が早鐘を打った——いや、それは癌のせいでもあったが。
「もしもし、母さん」
「ジェレマイア、エドワード・R・ジョンソンのニュースを見たかい?」
母の声は震えていた。
エドワード・R・ジョンソン。ジェレマイアはその名前をよく知っていた。十代の頃、日曜学校で教わった黒人殉教者の話だ。エドワードは無実の罪で死刑を宣告された。彼は無実を訴え続けたが、誰も聞かなかった。最後の瞬間まで、彼は母と共に祈り、神に全てを委ねた。処刑される前に、彼はこう言ったという。
「私は無実です。しかし、もし私の死が何かの始まりになるなら、それでいい。」
エドワードは処刑された。後に、彼が完全に無実であることが証明されたのは、彼の死後何年も経ってからだった。
「覚えています、母さん。いつも母さんが言っていた。『エドワードは地上では無実の罪で殺されたけれど、天では真実の冠を授かった』って」
「そう。でもね、ジェレマイア。あれから何十年経っても、同じことが繰り返されている。ジョギングしているだけで殺される少年。コンビニでキャンディを買っただけの少女。自分たちの権利を主張しただけで命を奪われる人々。」
母の言葉が、ジェレマイアの胸に深く刺さった。
5
その夜、ジェレマイアは書斎でテレビをつけた。フットボールの試合が流れている。しかし、試合は異様な雰囲気だった。
一選手が、国歌演奏中にひざまずいていた。
解説者が言う。「これは抗議の意思表示です。黒人に対する暴力と、それを見過ごす社会への抗議です。」
その選手の名前はコリン・キャパニック。彼は後にこう語ることになる——「私は抑圧された人々のために旗を掲げている人々に敬意を表している。私は殉教者のためにひざまずいている。」
ジェレマイアはテレビの前で、拳を握りしめた。
「黒い天使はいないのか」彼は声に出して呟いた。「私たちのために祈ってくれる、私たちと同じ肌を持った天使は、この国にはいないのか」
彼はそのまま、書斎の椅子で祈り始めた。
「主よ。私はもうすぐあなたの元へ行きます。私の余命は、あとわずかです。しかし、この地に残される兄弟姉妹たちのために、私は何かを残したい。彼らが『神は自分たちのことも見ている』と確信できる何かを。」
彼の目に、あの古いイコンのイエスが再び浮かんだ。オリーブ色の肌。黒い巻き毛。エチオピアの聖堂に描かれた、黒人の母が抱くイエスの姿。
彼の中で、一つのビジョンが形になり始めていた。
6
ジェレマイアは翌朝、教会の信徒総会に提案を持ち込んだ。
「新しいステンドグラスを、作り直したい。」
会議室に沈黙が広がった。新しく入れたばかりの窓だ。費用もかかっている。
老執事のルーカスが口を開いた。「ジェレマイア、君の気持ちはわからないでもないが…」
「わかっていない」ジェレマイアは静かに、しかし確かな声で言った。「ルーカス、あなたはわかっていない。私も長い間わかっていなかった。」
彼はゆっくりと立ち上がった。化学療法の影響で、体は震えていたが、声は澄んでいた。
「この国の黒人たちは、どれだけの理不尽を耐えてきたか。無実の罪で処刑されたエドワード・R・ジョンソン。ジョギングをしていただけで殺された少年たち。ひざまずくことで抗議の声を上げた選手たち。彼らは皆、神を信じていた。神は自分たちと共にいる、と。」
彼は息を吸った。
「しかし、教会に来るたびに、彼らは見る。金髪で碧い瞳のイエスを。自分たちとは何の関係もないように見えるイエスを。私たちは無意識のうちに、『神は白人のものだ』というメッセージを、窓や絵画を通して発信し続けている。」
会議室の空気が変わった。
「私はもうすぐ死ぬ」ジェレマイアは言った。「だからこそ言いたい。この地に住む黒人たちが、白人と同じように『神は私のものだ』と言える教会を作りたい。黒人たちが、自分たちの姿をした天使がいることを知ることができる教会を。」
その時、若い白人牧師のマイケルが静かに立ち上がった。
「私は、賛成します。」
全員の視線が彼に集まった。
「私には、わかっていなかったことが多すぎました」マイケルは言った。「ジェレマイア兄弟が教えてくれるまで、私は自分が見ているイエスだけが全てだと思っていました。でも、違う。神は全ての人の中に、全ての姿の中に、宿っている。」
彼はジェレマイアの方を向いた。
「あなたの残りの時間を、私たちに分けてください。一緒に、新しい窓を作りましょう。」
7
それから数か月間、ジェレマイアの体力は急速に衰えていった。
しかし、彼は毎日のように教会に通い、デザイナーと打ち合わせを重ねた。化学療法の日は、病院のベッドの上でスケッチを描いた。
彼が求めたのは、一つの窓に全てを込めることだった。
中心には、オリーブ色の肌を持ち、黒い巻き毛のイエス。その周りを、様々な肌の色を持つ天使たちが囲む。金髪の天使もいる。黒髪の天使もいる。そして——一人、漆黒の肌を持ち、大きな翼を広げた天使が、イエスの右手に立っている。
「これだ」ジェレマイアはデザイナーに言った。「これが、私が見たかったものだ。」
「その黒い天使は、何か特別な意味があるのですか?」デザイナーが尋ねた。
ジェレマイアは少し間を置いて、答えた。
「黒人たちは、自分たちのために祈ってくれる天使がいることを知らない。殉教者エドワード・R・ジョンソンが、もし天使だったら——きっと、こういう姿をしていると思う。」
デザイナーは黙ってうなずき、筆を進めた。
8
ステンドグラスが完成したのは、ジェレマイアが入院してから二週間後のことだった。
彼は病床で、マイケルから写真を送ってもらった。新しい窓に夕日が差し込み、礼拝堂全体が虹色に染まっている。黒い天使の翼の部分だけが、なぜか他の部分よりも強く輝いていた。
ジェレマイアはその写真を、スマートフォンの画面でじっと見つめた。
涙が止まらなかった。
「母さん」彼は携帯電話に言った。「できたよ。あの時の、母さんがクローゼットに隠した絵みたいな窓が。」
電話の向こうで、九十歳を超えた母も泣いていた。
「よくやった、ジェレマイア。あなたは、あなたの人生を無駄にしなかった。」
9
除幕式の日、ジェレマイアは車椅子で教会に運ばれた。
彼の体はもうほとんど動かなかった。酸素マスクをつけ、点滴の針が腕に刺さっている。しかし、彼の目だけは、以前にも増して力強く輝いていた。
礼拝堂は満員だった。白人の顔も、黒人の顔も、ヒスパニックの顔も、アジア人の顔もあった。マイケルが短い説教を述べた後、ジェレマイアが車椅子のまま、前に押し出された。
彼はマイクを握りしめ、ゆっくりと語り始めた。
「私は、子どもの頃から教会で育ちました。神を愛し、隣人を愛することを教えられました。でも、どこかでずっと違和感があった。神様は、本当に私のことを見ているのだろうか、と。」
会場が静まり返る。
「私は長い間、その答えを見つけられなかった。エドワード・R・ジョンソンが無実の罪で殺された時も。ジョギングしていた少年が撃たれた時も。ひざまずく選手たちが批判された時も。『神様はどこにいるんだ』と叫びたかった。」
彼はステンドグラスを指さした。
「でも、今日、私はここに答えがあると思う。」
彼の声が震えた。
「神様は、金髪の姿だけじゃない。碧い瞳だけじゃない。神様は、私たち一人ひとりの中にいる。黒人の母の涙の中に。無実の罪で叫ぶ声の中に。ひざまずいて祈る者の中に。」
彼は深呼吸をした。
「私はもうすぐ、この世を去ります。でも、この窓は残ります。ここに来る子どもたちが、この黒い天使を見てほしい。『神様は私のこともちゃんと見ている』と、彼らが思えるように。」
彼は車椅子の上で、うつむいた。肩が震えている。
会場全体が、すすり泣く声に包まれた。
その時、誰かが立ち上がった。また別の誰かが立ち上がる。やがて会場全員が立ち上がり、拍手が起こった。それは祝福の拍手であり、感謝の拍手であり、そして——一つの人生への敬礼だった。
10
その夜、病院に戻ったジェレマイアは、窓の外を見ていた。
モンゴメリーの街の灯りが、遠くに瞬いている。あの教会のステンドグラスも、今ごろ月明かりに輝いているだろう。
彼はベッドの上で、最後の祈りを捧げた。
「天のお父様」
彼は言った。
「あなたはどんなお姿なのでしょうか。私は知りません。でも、今日、私は一つのことを知りました。あなたは、私がずっと探し求めていた答えそのものだったのだと。」
目を閉じると、彼のまぶたの裏に、あのステンドグラスが浮かんだ。オリーブ色の肌のイエス。その右手に立つ、漆黒の翼の天使。
その天使の顔は——エドワード・R・ジョンソンにどこか似ていた。いや、もしかすると、ジョギングをしていたあの少年に似ていたかもしれない。あるいは、ひざまずいたフットボール選手に似ていたかもしれない。
いや——それはもしかすると、幼い頃に母の腕の中で見上げた、母の優しい顔に似ていたかもしれない。
彼は静かに微笑んだ。
「私をあなたの似姿に創ってくださって、ありがとうございます。たとえその似姿が、この世のどんな絵画にも完全には描き表せないものだとしても——私はそれを知っています。私は私のままで、あなたのものだということを。」
彼は目を開けた。窓の外で、一筋の光が星のように瞬いた。
ジェレマイア・ワシントンは、そのまま静かに息を引き取った。
彼の顔には、安らかな微笑みが浮かんでいた。まるで、何かとても美しいものを見るような、そんな微笑みだった。
エピローグ
それから十年後、モンゴメリーの小さなバプテスト教会は、全国的に知られるようになっていた。
「黒い天使の教会」——人々はそう呼んだ。
毎年、命日になると、全国から人々が集まった。黒人も、白人も、ヒスパニックも、アジア人も。子どもたちがステンドグラスの前に立ち、黒い天使の翼の部分に光が当たるのを見て、こう言う。
「ねえ、天使が笑ってるよ。」
そのステンドグラスの下には、小さなプレートが嵌め込まれていた。そこにはこう刻まれている——
「ジェレマイア・ワシントン 1958-2024
『私は私のままで、あなたのもの』
この地に生きるすべての人々が、神の似姿であることを忘れないために。」
礼拝堂の外では、風に乗ってゴスペルが流れている。低く、深い、魂の底から響く声。それは、命の続く限り、決して途切れることのない祈りのようだった。
(終わり)




