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scene8, -終わりの始まり-


身も心も疲れ果ててしまったのか

スヤスヤと眠る時早矢先生を布座は背負い

ぼくたちは旧校舎を後にしていた。


「クソッ。結局あいつらの言ってる事、なにひとつわからなかったぜ…。」

少しの沈黙のあとに布座は続ける。

「なあ。坂井。お前…出ないよな?ダンゲロス。」

ぼくはすぐに返事ができなかった。


「お前は納得したのかよ。」

「あいつらの言ってた世界の破壊とか。生徒会長を殺すとか。」

布座の言葉がしだいに語尾を強めて来る。


「ぼくは…。」

「ぼくは参加する事にしたよ。ダンゲロスに。」


ぼくの言葉を予想していたかのように布座は顔をふせ、チッと小さな舌打ちをする。


「ぼくは昔からずっと。この世界になんか違和感のようなものを感じていたんだ。」

「みんなの言う言葉や考え方が、自分の見ている世界と違う感覚。」

「それが、そんなぼくの世界に対しての違和感が」

「あいつらの話を聞いてなんとなく理解できちゃった気がするんだ。」


布座。お前の言葉よりも…。

とは。ぼくは言えなかった。


「…あいつらの言うように。ぼくはあっち側の人間なのかもしれない。」

「いや。もちろんあいつらのやろうとしている事は悪だ。」

「世界の破滅とかとんでもない話だと思うよ。」

「それに。」

「もうひとつ。何かもう一つ足りない気がするんだ。」

「あいつらの言葉。生徒会長の言葉。どっちも間違ってはいない。」

「確かにどっちも正しくないのかもしれないけど、どっちも悪とは思えない。」

「自分の中で足りていないその何かひとつが」

「このダンゲロスの結末を見届ける事でわかるような」

「そんな気がするんだ。」

「だからぼくは参加する。ダンゲロスに。」


ぼくの話を黙って聞いてくれてた布座が、静かに、でも強い口調で言う。

「死ぬかもしれないぞ。」


「もちろん死ぬ気なんてないさ。」

「でも、学校中の魔人の何人が、何百人が殺しあうのがダンゲロスだ。」

「そんな中で。ぼくがどうなるかはわからない。

「…ぼくに何ができるかもわからない。それでも。参加したいんだ。」


ぼくの言葉に布座は息をのみ込み。

「お前…やっぱりあの噂は本当だったんだな。」


うわさ?ぼくには覚えがない。


「お前が本当は魔人で!危ねえ能力を隠してるってうわさだよ!」


・・・ぼくは何も答えなかった。


そして布座が叫ぶ。

「俺は出ないからな!お前がどうなっても俺は知らねえぞ!」


「ああ。布座。お前は、時早矢先生を守るんだ。それで良いと思う。」


お互いに、それ以上の言葉は交わさなかった。

布座は先生を背負ったまま自宅へと帰っていく。

ぼくは強い決意を胸に、2人を見送るだけだった。


【12/24 終業式】


終業式に番長は現れなかった。

番長は、終業式が終わり、生徒たちみんなが下校した頃に

投稿して来るらしい。

それは、その後に起こるであろう事態に備えての事だろう。


その日は集会ののち、ダンゲロスに不参加の生徒はみな

わき目もふらずに教室を後にした。

ダンゲロス勃発の噂を聞いていた教師たちも

戸締りもせずに逃げるように足早で帰っていく。


ぼくはといえば・・

終業式にも参加せずに

あの人に会いに行っていた。


用務員の石神外さん。

「石神外さんも、今日は仕事なんてしないで早く帰んなよ。」


「ああ。とうとうこの日が来てしまったんだね。」

石神外さんは悲しそうな目で窓から見える本校舎を見つめている。


「もうすぐ終業式が終わる。」

「そうしたらこの学校にはもう、安全なところなんてなくなるんだ。」

「石神外さん。今までありがとう。ぼくは・・行くよ。」


黙ってぼくを見つめる石神外さんを置いて

ぼくは用務員室を後にした。


「君が顔を見せてくれてる日は今日で最後なんだね…。」

「さようなら。坂井くん…。」


そのお言葉はぼくの耳には届かなかった。

やがて石神外さんは用務員室の外へ出て

あの巨大な掲示板を見上げる。


「さようなら。慈正心学園…。」


【旧校舎 3-C】


そこにはあの時のメンバーがそろっていた。

昨日は窓の外も暗くなり、それぞれの顔までは見えなかったが

今日は外から差し込む光のおかげで

彼らひとりひとりをしっかりと確認する事ができる。


「来てくれると思っていたよ。坂井くん。」

昨日教団で演説をしていた、リーダーらしき男がぼくを出迎える。


「・・勘違いしないでもらいたい。」

「ぼくは確かに君たちの言葉が正しいと思った。」

「でも、全部じゃない。」

「世界の破壊なんでバカらしいと思うし」

「生徒会長の抹殺なんて許せると思えない。」

「・・君たちの味方になるつもりはない。」

「でも君たちの敵になるつもりもない。」

「ぼくは、ぼく自身の目で、このダンゲロスが最後に迎える”正義”の正体を知りたいんだ。」


ぼくの言葉を最後まで黙って聞いていたリーダーが言う。

「うん。・・まあ及第点かな。」


「実はさ。」

「君がもしぼくたちの誘いを断り、ダンゲロスに不参加だった場合。」

「・・あの先生に仕掛けた爆弾が爆発する仕組みだったんだよ。」


ぼくは男の言葉に驚いた。


「ぼくたちがあの先生をさらって、何もせずに帰すと思ってたのかい?」

「爆発はさほど大きなものではないから周りは巻き込まないけど、」

「確実に先生は命を失っていただろうね。」

男は不敵に笑いながらとんでもない事を話してくる。


「でもまあ、君は及第点だ。」

「どんな腹の内だろうと、こうしてダンゲロスに参加してくれたんだからね。」

「先生の爆発はやめておくよ。・・今のうちはね。」

「君の活躍を、期待しているよ。」


リーダーの言い終わると同時に

学校のチャイムが校内に鳴り響いた。

下校時間。


いよいよ開幕する。

参加者のほとんどが生きて帰る事のできないと言われる

魔人どうしの最終抗争。

ダンゲロスが。

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