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scene4, -火種-


口舌院さんの告白を断ってからの数日間。

ぼくは学園内では針のむしろだった。


誰もが僕を冷ややかな目で見つめ。

中にはヒソヒソと隣人と何かの話をする者もいた。

・・・きっとぼくが学園のマドンナを振ったところを誰かが見ていて

それがゴシップとして学園内に広まっているのだろう。

親友であったはずの布座ですらなんとなくぼくと距離を置いているように思える。

なんとも居心地の悪いものだ‥。


しかし、そんな所在のなさもわずか数日で終わりを迎えた。

より衝撃的なある噂話しが広がった事によって事なきを得たのだ。


「生徒会長が番長を刃物で刺した」という噂。


たしかにここ数日番長の姿を見ていない。

生徒会長は変わらず登校してきているが

やつれた顔ですぐ生徒会室に駆け込み、終業時間まで出てこない。

そんな状況が続きこの噂はかなり真実味のあるものとなっていた。


なんだか不穏な感じがする。

電光掲示板の表示は「400/401」を示していた。


【番町室】


それは本校舎1階のとある場所にある。

生徒会と教師陣が用意した、

誰もが知っている番町グループの集会所だ。

番町グループ総勢およそ130人。

そこに集まるのは生徒間で「不良」と恐れられる

素行の悪い連中たちだ。


その番町室に、生徒会長「ド正義」は訪れていた。

番町室に集まっていた不良たちは一触即発の様相で会長を取り囲んでいる。


「君たちに話しておきたい事があって来たんだ。」

「君たちの総番。阿観世代くんの事を。」


「あぁ!?姐さんを刺した張本人さんが今更なんの話があるって言うんだ!?」

番町グループのひとりにすごまれるが会長はひるまない。


「・・阿観世代くんの容態はどうなんだい?」

会長の質問にまた他の番町グループ員が答える。


「命にかかわるようなもんじゃねえってさ。」

「1か月もすりゃまた来れるようになるだろうってよ。」


「そうか。。良かったよ。」

会長の返答に、番町室の空気はさらにひりつく。


「1か月後。姐さんが帰ってきた時。そん時はてめえがどんな目にあうかわかってんだろうな?えぇ?」

不良の一人に問われるが会長はそれを無視して続けた。


「あの日の事について。きちんと説明しておきたいんだ。君たちには是非話しておきたい。」


「あああん!?てめえから聞く話なんてねえよ!!」

「姐さんが帰ってきたら聞く事はひとつだけだ。」

「・・・ダンゲロスの許可をくれっていう話をな!」


会長は黙って口を噛みしめる。


「・・・おおかたてめえは。」

「姐さんを手籠めにしてめんどくさい事になったからやっちまったってとこだろうよ!」


「姐さんを弄んだ罪!きっちりケジメつけさせてもらうからよう!!」

この不良の言葉に会長は冷静な心を失った。


「言うに事欠いて!弄んだだと!!貴様には言われたくないぞ山鈴木!!」


「・・あ?なんだてめえなんで俺を知ってんだよ。」


「この学園内の生徒の事は全て知っている!私は生徒の代表生徒会実行委員会長だからな!」

「【山鈴木本気龍(ヤマスズキマジロウ)】!貴様はこの学園内と隣町の中学生。合わせて3人の恋人がいるな!」


「あん!?て、てめえ…」


「そこの!【煩悩鐘三度(ボンノウガネミタビ)】!貴様は我が校の一年生と交際しておきながら、尻が軽いで有名な女子に片っ端から声をかけてるようじゃないか!」


「うぇ!なんでそんな事まで…」


「もちろん色恋の話だけではない。」

「山鈴木。お前は物心ついた時から孤児で幼児期は施設で育っていたそうだな。」

「煩悩鐘。君は両親の自殺で親戚の家を転々としていた過去があると聞いた。」

「だがしかし!」

「この学園内に孤児院出身の生徒は6人いる!その中で番町グループに属しているのは貴様一人だ!」

「そして両親が自殺した生徒は8人いる!その中で番町グループには2人!」

「貴様らは不幸な身の上を免罪符として学生の本分である学業を疎かにし!」

「このように多数の仲間にも恵まれ!無垢なる少女の同情を引き己れの私欲の吐け口としているんだ!」

「同じ境遇の少年少女の中には!貴様より幾倍も不幸な境遇の中!」

「それでも真面目に学業にいそしみ未成年としての慎みを貫いている者が大勢いる!」

「貴様らは!恵まれていながら不幸な生い立ちを全ての免罪符に!」

「さらなる欲求を目指すクズではないか!!」

「だから私は貴様らのようなクズ共が許せないのだ!!」


・・・会長の暴走に、ひとときは室内が静まり返った。

しかしもちろん、言われっ放しで大人しくしている連中ではない。

誰も声は出さなかったが、ある者は木刀を手に。

ある者は青筋を立てた拳を自分の手の平に叩きつけながら。

ゆっくりと会長へと距離を詰め寄る。


「まあまあみんな待ちんしゃい。」

その時声を出したのは、番町グルーブ副番【白黒熊太山(シロクログマフジヤマ)】だった。

「会長さん。。ご高説ありがとうございす。」

「俺たちの事よ~くわかっていらっしゃるようで痛み入りますわ。」

「ま。ここにいるみんなそれぞれ言いたい事はあるんでっしゃろが・・」

「こうなってはもう分かり合う事は不可能や。」

「ここはいったんお帰りいただいて。」

「また。1か月後・・ですかね。」

「あらためてお話合いしましょ。」


副番白黒熊は身の丈2メートル。腹囲も2メートルという大男だ。

その圧もすさまじいが

何よりもこの場を収めるにはこれ以上の判断はないだろう。

事態は最悪の展開だ。


「・・・失礼する。」

会長は一礼をして番町室を退室した。

番町グループ総員の殺意を込めた視線だけを残して。


・・生徒会室に戻った会長は扉の鍵を閉め、

いつものように一人机に座り分厚いファイルをめくる。

「くそっ!なんでこんな事になったんだ!」

「きっと!きっとこの中に何かヒントが…!」

ファイルを次々にめくり中の書類にくまなく目を通す。

「探せ!何か見落としているはずなんだ・・!」


その時、ページをめくっていた彼の手が止まった。

「・・・これか!どおりで今まで気が付かなかった訳だ…。」

彼はファイルから一枚の書類を抜き出し

ファイルを閉じて立ち上がった。

「すぐに対処するんだ。」

「来るべき。ダンゲロスのために!」


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