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scene33 -終幕と開幕-


3人の視線はその異様な雰囲気の2人に向かう。

男が立ち止まり言った。

「・・傷心くん。これはどういう状況だい?」


彼の姿を見て、傷心はビクンと体を振るわす。


「そこの2人にほだされたのか。」

「やはりお前は・・意思の弱い人間だな。」


男の言葉に。

ガタガタと体を振るわせ傷心が答える。


「ナ・・ナナトさん。」

「違うんです!これは・・!」


言いかける言葉をさえぎり。

ナナトが続ける。


「意思の弱い人間はいらない。」

「世界を恨む気持ちの弱い人間なんて。ぼくたちの仲間じゃない。」

「だからもう。ぼくは、お前なんて・・」


傷心が、番長とド正義をかばうように

やつとの間にバッと立ちふさがる。


「キライだ!!」


ナナトの言葉と共に

ドゴォォン!と傷心の半身が火を噴き吹き飛ぶ。


傷心の体の左胸から肩先に大きな風穴が空き。

左半身が吹き飛ぶ。

風穴からは爆炎と血があふれ。

彼女は血を吹きながら崩れ落ちていった。

誰が見ても即死だろう。


あまりの事態に

番長とド正義は動く事が出来なかった。

さらにナナトは続ける。


「生徒会長と総番長。」

「お前らの演説。拝聴させていただいていたよ。」

「愛と未来への希望を謳ったとても素晴らしい演説だったと思う。」

「・・ヘドが出たよ。」


「かねてから論争を繰り返し」

「競い合っていた2人が結ばれる純愛劇。」

「虫唾が走る。」


「俺は。そんなお前たちが昔から・・」


2人は咄嗟に身構える。

だが、そんな2人に容赦なく。あの言葉が投げかけられる。


「大っっっキライだった!!!」


その言葉と同時に。

ひと際大きな爆発が巻き起こる。

爆風と灼熱が渦を巻き

壁を砕き校舎を半壊させるほどの爆発。

番長とド正義。2人のいたその場所を中心に。


やがて爆風は治まり。

爆煙の晴れたその場所は

大きなガレキの山となっていた。


ひと際大きなガレキの下で倒れ

なんとか意識を取り戻した番長。


その番長を守るように覆いかぶさり

降りかかるガレキやガラスを

己の背中ですべて受け留めたド正義。


「ド正義!!」

なんとか体を起こした番長が

ド正義を抱き支えるが

彼の横腹からは黒煙と血があふれてきている。


息も絶え絶えながら

かすかに意識のあるド正義が

言葉を絞り出す。


「愛される資格がないなんて・・」

「そんなのは君が決める事じゃない・・。」

「ぼくは、弱い人間だった。」

「迷い、苦しみ。間違える。愚かな人間だ。」

「でもな。」

「愛した人の事は死んでも守る。」

「ぼくは・・そんな男なんだ。」


言葉も出さずに涙をぼろぼろとこぼす番長の

ほほに静かに手を添え。

そして。

その手が静かに落ちていく。

息のなくなったド正義を

番長は言葉もなく見送った・・。


そんな番長の頭上でナナトが言葉を続けた。


「どいつもこいつも・・」

「他人を守って死んでいく。」

「実に美しい死にざまだな。」

「・・心から胸糞悪い。」


「人に愛され守られ。」

「人を愛して生きながらえた番長。」

「俺は。そんなお前が・・・」


胸にド正義を抱いた番長は

その場で身構える。


ナナトの、その言葉を遮ったのは・・


「うぐっっ!」と背中に走った激痛に身をかがめるナナト。

駆けつけてきた架神の「存在しない刀」が

ナナトを背後から切りつけたのだ。


「ナナト!その方に手を出すのはぼくが許さない!」


息を切らし叫ぶ架神へゆっくりと振り向くナナト。


「架神。」

「君までもぼくを裏切るのか。」

「・・どいつもこいつも。」

「ぼくを怒らせやがる。」


ナナトは架神に向かって叫ぶ。


「キライだ!!」


架神の目の前で起こる大きな爆発。

しかし。

それを架神は「存在しない壁」で防ぐ。


そんな架神を見てナナトは続ける。

「・・ほう。」

「ぼくの爆発を防ぐなんて面白い能力だな。」

「お前のその能力。」

「その能力ならあるいは・・」


ごほごほと咳込む架神に

ナナトがゆっくりと近づいていく。


その時。


「あのー。すみません。」


ナナトと共に来た少女が

いつの間にか架神の遠く背後から声をかけてきた。


「あ。ごめんなさい。」

「ナナトさん。お目当てのもの見付けてきましたよ。」


少女の背には。

気を失った愛玩式が背負われていた。


ナナトが続ける。

「・・ふん。」

「まあいいだろう。」

「まずは当初の目的が優先だ。」


少女はゆったりと架神の横を抜けてナナトと合流する。


「ぼくを裏切ったこの子は、教育し直さなければだな。」

「いずれにしても。」

「このダンゲロスには終止符を打たなければならないが・・。」

「ぼくたちはこれからアジトを変える。」

「決着はそれからだ。」


その言葉を残し。

ナナトと少女は・・

愛玩式を連れてどこかへと去っていった。


----------------------


架神さんが部屋を出て行ってすぐ。

我に返ったぼくは急ぎ、生徒会室へと走った。


あの爆発がナナトの、転校生のリーダーのものだったとしたら。

愛玩式さんに危険が迫っているのかもしれない!


ぼくが生徒会室の前に着き

勢いよく扉を開けると、そこには・・


愛玩式さんを背負う一人の少女の姿だった。


少女がぼくを見てゆっくりと言う。


「あ。ごめんなさい。」

「私。転校生の【路傍雪成(ロボウセツナ)】といいます。」

「ナナトさんからこの子を探せって言われてたから。」

「ごめんね。この子連れてっちゃうね。」


気が付けば、2人の傍らでは無限録さんが眠るように横たわっている。


「あ。ごめんね。その子は殺しちゃった。」

「じゃまだったから。ごめんね。」


ぼくは。愛玩式さんを取り戻そうと

無我夢中で少女に立ち向かったが・・


「あなたは私のタイプじゃないから。殺せないわ。」

「ごめんなさい。」


そう言い。たしかに彼女はぼくに何かをした。

何をされたのかまったくわからないけど、

彼女のその言葉を最後に。

ぼくはそのまま意識を失い倒れた。


----------------------


次にぼくが意識を取り戻したのは。

遠くから聞こえるかすかな番長の声によるものだった。


ぼくが目覚めたその部屋。生徒会室には。

無限録さんが物言わず横たわっているだけで

人は誰もいなくなっていた。


いつの間にか外は日も暮れ始め

部屋の中は真っ暗で。

PCのモニターが青く部屋を照らしていた。

ジッジッとPCの音だけが静かに聞こえ

あの喧騒が噓のように静まり返っている。


ぼくは静かに

部屋の窓を開ける。


どこか遠くで番長さんの叫んでいる声がかすかに聞こえる。


「繰り返す!!」

「生徒会長は死んだ!!」

「ダンゲロスは幕引きじゃ!」


「生徒会長は!ド正義は死んだ!!」

「ダンゲロスは幕引きじゃ!」


「だが!ド正義は争いの中で死んだわけではない!!」

「己の意思でうちを守り!」

「うちをかばい!殺されたのじゃ!!」

「このダンゲロスに巣食うもう一つの戦力!」

「転校生と名乗る者たちに!!」


「ダンゲロスは幕引きじゃが!」

「きゃつら転校生は!」

「このド正義の抹殺と!学園の崩壊!」

「果てにはこの世界の破壊までも企んでおる大バカやろう共じゃ!!」


「うちは!」

「これより転校生の討伐に挑む!!」

「うちと!志を共にする者は一緒に戦ってくれ!!」

「会長の弔い合戦を決行する!!」


「繰り返す!!」

「生徒会長は死んだ!!」

「ダンゲロスは幕引きじゃ!」


「ダンゲロスは幕引きじゃ!!!」


番長の声は。

いつまでもいつまでも続き。

静かな空へと吸い込まれていっていた。

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