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scene.32. -阿観世代とド正義-


このダンゲロスの発端となったあの日。

生徒会長ド正義が、総番長阿観世代に刃を突き刺したというあの事件。

その全貌が。番長から会長へと静かに語られる。


いつしか、傍らにいた傷心までもが

固唾を飲みその話に聞き入っていた。


そして。すべてが語られた時。

番長は静かに言葉を締めくくり。

ド正義は絞り出すように声を発した。


「そんな・・事が。」

「それではやはり。」

「君を刺したのは・・・」

「ぼく、だったのか。」


番長が静かに答える。


「ああ。すべて、偽りなき真の話じゃ。」


「だが。うちはきさんを恨んでなんぞおらん。」

「うちが。愛されるに値しない女じゃった。」

「ただそれだけの事じゃよ・・。」


その言葉にド正義は強く言葉を返す。


「それは違う!」

「ぼくが、人を愛するには弱すぎる人間だっただけだ!」

「すべてはぼくの弱さが招いた事じゃないか!」


頭を抱えうなだれるド正義は、ゆっくりと話し始めた。


「ぼくは・・この国でも屈指の有力者の家庭に生まれてね。」

「幼少の頃から厳しくも裕福な家庭で育てられ。」

「幼いころから、自分自身の恵まれた才と環境を実感して生きて来た。」


「自分で言うのもなんだが」

「幼い頃から男女隔たり無く人望があってね。」

「異性からもモテていると錯覚していたものだよ。」


「でもね。幼いながらも気付くのだよ。」

「周囲の女子どもがぼくを見る目にはいつでも」

「我が一族が所有する財と、ぼくが将来得るであろう名声。」

「それしか映っていない事に。」


「女子だけではない。」

「信頼のおける友人だと思っていた者たち。」

「教師や親せき一同においても。」

「真の意味でぼく個人を愛している者などいない。」


「みながみな。」

「金と名声を欲してぼくに擦り寄る」

「ぼくが持っていると勘違いしていたものは全て」

「まがい物の人望だったんだ。」


「いつしかぼくは。」

「人というものをいっさい信用しなくなってね。」

「この世に必要なものは真か偽か。」

「その見極めだけだと思っていた。」


「そんな時に。」

「ぼくに真っ向から否を突き付けてくる」

「不躾で、粗暴で、ぶっきらぼうで。まっすぐな女性に出会ってね・・。」

「そしてその少女はぼくに教えてくれたんだ。」


そしてド正義は番長をまっすぐ見て続ける。


「君がぼくに教えてくれた言葉。」

「人は愛されるために生きている。」

「愛されることが人の幸せだと。」

「あの言葉を。」

「ぼくは今でも信じたいと思っている。」


「そして。ぼくにとってのその人は。」

「阿観世代くん。君しかいないんだ。」


その言葉に番長は少しだけ表情を曇らせ

そして答えた。


「・・うちはな。ド正義。」

「きさんと別れ話をしに来たんじゃ。」


「あの時のきさんの答え。」

「それだけが理由ではない。」

「うちは・・。うちは思い出したんじゃよ。」

「端からうちは。人に愛される資格のない女だったんじゃと。」


その言葉にド正義は悲しそうな目で番長を見つめ

言葉を出す事ができなかった。


声を発したのは、傷心だった。


「なんで!」

「そんなのおかしいよ!」


「番長さんは、誰にも言えない傷を隠してきた!」

「会長さんはその傷を受け容れてくれるって言った!」

「それで良いじゃない!これ以上なにを迷う事があるの!?」


叫びながらぼろぼろと涙をこぼし始める傷心に

番長が優しく声をかける。


「うちのために泣いちくれるか。」

「きさん本当は、心優しきもんなんじゃの。」


「・・うちらを説得しようと勇気を出して、かけてくれたその言葉。」

「うちの胸にしかと届いたぞ。」

「良いか。人は言葉に出してもすれ違い、傷つき合う事もある。」

「じゃがな。言葉にしなければ」

「傷付け合う事もできなければお互いの傷をわかり合う事すらもできん。」


「心に秘める思いがあれば言葉にせい。」

「泣きたければ人前でも大いに泣け。」

「そうして初めて。きさんに寄り添うもんも現れようぞ。」


泣きじゃくる傷心にそっと寄り添う番長。


「そしてありがとうな。」

「きさんの言葉も。ド正義の言葉も。」

「しかとうちの心の支えにしよう。」

「しかし。うちは自分の意思を曲げん。」

「うちはそういう女じゃw」


ド正義が言葉を言いかけたその時。


遠くからカツンカツンと近づいてくる足音。

一組の男と女が、3人の目の前に現れた。



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