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scene26, -出陣-


「生徒会長と行動を共にする。」

番長さんの言葉にはぼくも賛成だ。

だけど・・


「転校生を討つって・・」

「番長さん、ぼくの話を聞いてくれていましたか?」

「ぼくは彼らを救いたいと・・」


その言葉を遮るように彼女は言う。

「いずれにしても。頭に血の上っているきゃつらを説き伏せるのには骨が折れるじゃろうて。」

「まずは一発ぶんなぐって頭を冷やさせる。話ならそれからすれば良い良い。」


番長さんはにやにやと笑いながらそんな事を言う。


「きさんらもここまでよう生き延びたもんじゃが」

「さぞ疲れておることじゃろう。」

「傷の手当としばしの休憩を取ったら会長室へ乗り込むぞ。」

「出陣の声がかかるまでしっかりふんどし締めておくんじゃぞ。」

番長さんはがははと笑いながら部屋を出て言った。


この人は・・まっすぐで豪快な人だとは思っていたけどこんなにもとは。


ふと気が付くと、愛玩式さんがなんだかむくれながらそっぱを向いていた。

「・・愛玩式さん、大丈夫?ケガはない?」

なんとなく恐る恐る声をかけたが、彼女はなんだか機嫌が悪そうだ。


「坂井くん。とってもおモテになるんですね。」

「番長さんともあんなに親し気にしゃべっちゃって。」


・・なんで敬語?


「いや。番長さんとちゃんと会話するのなんてこれが初めてだよ!」

「愛玩式さんも知ってるでしょ?今日最初に会った、あれがあの人との初対面だし!」

なぜだかぼくも焦りながら言葉を返す。


そんなぼくたちのやり取りを、周りにいた番長グループのメンバーの面々は

にやにやと笑いながら見てくる。


番長グループの人たち。

うわさに聞いていたほど悪い人たちじゃないのかもしれないな。

ぼくはそんな事を考えながら、愛玩式さんのご機嫌をとるのに必死。

そんなひと時を過ごした。


そしてとうとう。出陣の時が来る。

番長さんはぼくと愛玩式さんに、ほれっ、と一言かけて

野球のバットを投げ渡してくれた。


「うちが会長と話をつけるまでは、生徒会派の連中はまごう事なくうちらの敵じゃ。」

「その本丸に攻め込むんじゃからのう。」

「きさんらも自分と連れの身はしっかりと護るんじゃぞ。」

そんな事を言う。


愛玩式さんは、自分の能力【鳥籠の中の(トリカゴノナカノムクロ)】で自分自身も傷付かないし

その能力の発動中は他人を傷付ける事はできない。

それでも彼女も。まるでお守りのようにしっかりとそのバットを両手で胸に抱え

強い眼差しでこくんと大きくうなずいた。


ぼくもまた。

おそらく愛玩式さんと同じ気持ちだ。


番長さんと数十人の構成員。そしてぼくたち2人は

これから起こるであろう大乱闘への覚悟をしっかりと決めて

番長室を後にするのだった。


-----------------------


本校舎の隅にある番長室から

教職員棟の3階の生徒会室に向かうにはいくつかのルートがある。

その中でも、人目につかないのは。

今日ぼくたちも使った裏庭を抜けて職員棟の窓から侵入する経路。


そんな経路をこの番長さんが使うわけがなかった・・。


清々しいほど堂々と、生徒会室へ向かう一番の近道。

本校舎の正面通路へ向かった番長。

さらにはそこで番長は


「ド正義ぃぃぃぃ!!」

「今からそこに向かうから待っとるんじゃぞ!!!!」


これでもかというほど大きな声で叫ぶ。

間違いなく本校舎中に響き渡るだろう声で。


「ちょっ・・番長さん!」

「そんな事したら校舎内の敵たちがみんな集まってきますよ!」


ぼくの言葉に彼女は

「なあに。道を遮るものはみんなぶっとばせば良い。」

「ド正義のやつと行き違いになる方が痛かろうが。」

なんて言うが


「ぼ、ぼくたちもいるのを忘れないでくださいよ!」


そんな言葉は番長さんには届かない。

まっすぐ正面を向いたまま、ふへへ、と笑う。


もちろんすぐに、大勢の足音が走り寄ってくるのが響いた。


「いたぞ!!番長だ!!」


大勢の敵がぼくたち目掛けて襲い掛かって来るが

そんな奴らを番長さんは、ちぎっては投げ歯牙にもかけず

まっすぐ階段を上っていく。

すごい勢いでぼくたちはついていくのもやっとだ。


みるみるうちにぼくたちは階段を上り。

2階。3階。生徒会室へと続く渡り廊下のある3階へとついた。

そのまままっすぐ生徒会室に向かおうとしたぼくたちだったが・・


「うぐぐぁ・・・」

ぼくたちと一緒に来ていた

番長グループの人たちが、みなうめき声をあげて崩れ落ちていった。


その状況に驚き立ち止まったぼくは

「番長さん!みんなが・・」

そう言いかけながら番長さんに目を向けると・・


彼女は言葉もなく、額からいくつもの汗をかき

目を見開きながら立ち止まっていた。


番長の視線のむこう。

ぼくたちの目の前には、一人の少女が立っていた。


「あらあらあら。ずいぶん早くここまで来たのね~。」

のんびりとした口調でそんな事を言うその少女。


「あらぁ?愛玩式ちゃんに・・坂井くん?でしたっけ?」

「番長さんとご一緒だなんて、どんな心境のご変化でしょう。」


見たことがある人だ。


そう。転校生の集会の場にいた少女。


「き、【傷心(キズゴコロ)】さん・・。」

愛玩式さんも、彼女の顔を見て固まる。


「えっとこれ・・おふたりのお返事しだいでは」

「戦わなくちゃいけないやつかしらぁ。」

傷心と呼ばれたその少女は、そんな事を言いながら不敵に笑った。



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