表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/35

scene25 -思惑-


番長、阿観世代さんの先導で番長室に戻ってきたぼくたち。

番長は地面にあぐらをかき額の血を拭い

番長メンバーの男に包帯を巻かれながらぼくたちに話しかけてきた。


「ふぅ。」

「それにしてもきさんら。少し見ないうちに良いツラがまえになったもんじゃのう。」

心なしか、彼女は優しい目をしている気がする。

しかしその目つきはすぐに鋭く真剣なものへと変わり、さらに訊ねてきた。


「それにしても。」

「先刻のおなご。我らの構成員でもなければ」

「生徒会にもあのような輩は見かけた事がないのう。」

「それに、あの旧校舎の爆発。」

「きさん。我らの及び知らんところでなにか知っとるんじゃなかろうか?」


ぼくもまた、姿勢を正し真剣に答えた。

「・・はい。申し訳ありません。」

「実は、先ほどぼくから番長さんにお話した内容には」

「いくつか隠していた事実があります。」

「ぼくは、その話をするために番長さんを探していました。」


「・・ほう。正直なことでまことによろしい。」

「して、その内容とは?」


「・・このダンゲロスには。」

「番長さんも会長さんも知らない第三の勢力が関わっています。」

「そしてその第三勢力は。この学校の崩壊と、果てにはこの世界をも滅ぼそうとしているようです。」


番長はフッと小さく笑い、言う。

「・・面白い話じゃのう。」

「くわしく聞かせてもらおうか。」


------------------


【生徒会室】


無数の傷跡から血をしたらせ。

立っているのもやっとという満身創痍の状態で立つのは

賽仰寺ただひとり。

その賽仰寺を囲むように立ちふさがるのは

無傷の生徒会役員3人。

生徒会会計の無限録、総書記架神、そして生徒会長ド正義だった。


分析と予測の無限録。人心掌握の架神。考察と判断のド正義。

慈正心学園の生徒会が、

全校生徒を管理する立場に立ち

学園内の全権限を有するのは

この3人の実力あればの話に他ならない。

むしろ、この3人をもってすれば全校生徒を思うままに支配する事もたやすいだろう。


実質。慈正心学園生徒会執行部は、この3人を核として成り立っている。

まぎれもなく、慈正心学園、全生徒の中で最強の実力者と呼べる者たちなのだ。


はあはあと息を荒げ賽仰寺は呟く。

「こいつら・・化け物かよ・・。」

「・・特に架神。こいつの能力はマジでヤバい…。」


会長ド正義がめがねをくいと押し上げて言う。

「チェックメイト。というところだな。」

「・・こいつを捕らえ尋問する。」

「転校生共の謀略の全てと、奴らの能力の事をな。」


3人がゆっくりと賽仰寺に近付いていく。


彼女の能力、【次元違いのポケット】は物質を保管できる異次元空間を作り出す能力。

その異次元空間に逃げ込めばこの難は逃れられるかもしれない。

ただし、この能力で異次元の出口を作り出せるのは、彼女の頭上に限られる。

という事は、異次元内に彼女が飛び込んだその後

異次元空間内で能力を発動したときに、その次元から抜け出す出口を作れるのか。

その保証はいっさいなく。それ故に彼女はそれを試した事がなかった。


「くそっ・・あたしもいよいよここまでかな・・。」

彼女が覚悟を決めかけたその時。


架神が。足元の血だまりにぬるりと足を取られる。

その場の誰にも認識できなかった血だまり。

陰依が残した命の残り火だ。


体制を崩した架神は、会長の正面を遮り

無限録の体にぶつかりながら倒れる。

巻き込まれた無限録も、きゃっと小さく声を漏らし体制を崩す。

ほんの一瞬。3人の視界が賽仰寺から離れた。


その隙を逃さなかった賽仰寺。

自分の頭上に歪を生み出す。

そこからは大量の煙幕玉が転がり落ち

生徒会室は一瞬で黒い煙に覆われる。


生徒会長が叫ぶ。

「くっ・・!有数くん!やつの位置の分析を!」

しかし無限録有数は突然の状況に頭が追い付かない。

架神は突然の転倒に体を起こすのがやっとだ。


暗幕が薄れ始めたのは

生徒会室の扉が大きく開け放たれていたからだった。

そこには賽仰寺の姿はなく

彼女は煙幕に紛れ生徒会室から逃げおおした後だった。


「す、すみません会長!」

「すぐに奴を追います!」

架神が叫ぶが、会長は静かに答えた。


「いい。捨て置け。」

「彼女はもう手負い。そしてどのみちぼくたちがこれからする行動に支障はない。」


その言葉に、架神と無限録は会長の顔を見上げる。

会長は、ゆっくりと口を開いた。


------------------


【番長室】


ぼくは「転校生」の事を番長に伝えた。

やつらの恐るべき計画の引き金となったあの日の

生徒会長の演説からこの場に至るまでのすべてを。


ぼくの話を聞き終えた番長は、

目を閉じたまま、ふむ、と一言だけ漏らした。


「我らのあの演説が、よもやそのような事態を招いていたとは・・。」

「・・転校生か。いたたまれない連中のようじゃのう。」


番長は目を閉じたまま何かを考えこんでいるようだった。


ぼくはさらに話を続ける。

「番長さん。あなたに、お願いがあります。」

「ぼくたち2人、この先のダンゲロスで」

「番長のお供をさせていただく事をお許しください!」


ぼくの言葉に、彼女は目を開き口元に笑いを浮かべる。

「ほう・・。」

「なるほど。この先のダンゲロスを、強者に追従する事で生き延びようという腹かい。」


「そ、それも考えていないと言えば嘘になります。」

「ですが。ぼくが番長さんにお供したいと考えたのには」

「もっと別の理由があるんです。」


番長は黙ってぼくの言葉を待ってくれている。


「ぼくはあの時。」

「番長さんに”ノロイダ事件”の事を聞きました。」

「その時のあなたの反応は。」

「・・悲劇的な彼が救われなかった事への言い訳・・でした。」


「彼が醜かったから、受け入れられなかった事もしかたない。」

「恋した相手に恐れられていたから、あの結末もしかたない。」

「・・でも、それっておかしいんです。」


「転校生たちが言ってました。」

「世界から愛されない者は、誰からも自覚なく悪気もなく」

「それが当たり前のように迫害されるのがこの世界なんだと。」

「ぼくも、その言葉に納得してしまいました。」

「そしてこうも言っていました。」

「そんな世界をおかしいと思える事。彼、ノロイダが悲劇の人だと感じる事。」

「それ自体がこの世界では異常な事で。それが転校生となる条件なのだと。」


「・・番長さん。」

「あなたはこちら側の人間です。」


番長は。何も言わず目をつぶり天井を見上げていた。


「正確には、ぼく、と同じ考え方なんだと思います。」

「彼ら転校生は、愛されない事への被害者として」

「自分が愛されない世界を憎んで生きています。」

「そしてそんな世界を滅ぼそうとしている。」


「ぼくは。そんな転校生たちを頭から否定できない。」

「彼らは被害者なのだから。」

「でも世界を滅ぼそうなんてバカな考えにも同意できない。」

「・・番長さんも、さっき言いましたよね?」

「転校生たちは”いたたまれない存在”だって。」


「だから。」

「ぼくは彼らも救いたい。」

「リーダーのナナトってやつも。ぼくを助けてくれた賽仰寺さんも。」

「さっきの、腐れ花さんも。」

「ここにいる・・・愛玩式さんも。」


「きっとそれができるのはぼくと」

「おそらくぼくのこの気持ちを理解してくれる」

「番長さん。あなたしかいないんです。」


番長は・・静かに目を開けた。

「うちはなあ。」

「このダンゲロスが始まってからすぐ」

「ちと人探しをしておったんじゃ。」

「うちの特攻隊長の【豪貫純(ゴカズミ)】という男をな。」


「ダンゲロスの少し前から姿を見せなんだもんで」

「生徒会のきゃつらに監禁でもされてるんじゃなかろうかと思ってのう。」

「だが、きさんの話を聞いていろいろ合点がいったわい。」


「豪貫純の奴を救い出し、我らの結束を盤石なものにし」

「そいだらうちはド正義へ顔を見せに行くつもりじゃった。」

「・・別れ話をしになw」

「やつに三行半を叩きつけて、このダンゲロスを終わらせるつもりじゃった。」


「だが。」

「うちの思っている以上に事態は」

「いつの間にやら大きく傾き歪んでしまっていたようじゃのう。」


番長が、ぼくたち2人を見てにやりと笑う。

「予定変更じゃ!」


その頃生徒会室では。会長が役員2人に向けて口を開いたところだった。

「ぼくたちがこれからするべき事。」


番長「ド正義とつるみ。転校生を討つぞ!」

会長「阿観世代くんと和解し、転校生へ攻め入るんだ。」


--------------


その頃、生徒会室から逃げおおせた賽仰寺は

痛む体を押さえながら必死に走っていた。

「・・やつら。生徒会の連中はあたしたち転校生の存在に気付いていた・・。」

「やつらは、きっとこれから。転校生の制圧に動くはずだ。」

「リーダーに・・ナナトの奴に知らせなきゃ・・!」


それぞれの思惑が一つに重なり。

ダンゲロスは、さらに大きく動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ