scene22, -生徒会役員たち-
【生徒会室】
生徒会長ド正義の能力の発動により
陰依は命を失い血だまりに崩れ落ちた。
だが、その次の瞬間には生徒会長含め
その場にいた生徒会メンバー達からは彼女の記憶は消え
残るのは教室の外のあちこちで響く喚声、ダンゲロスへの焦燥感と
いまだ真相のつかめない発端に対する憤りのみだった。
ド正義は頭を抱えながら椅子に座り、
頭を上げる事無く一人の少女に声をかける。
「・・有数くん。今の状況を確認してくれ。」
小さなパソコンの置かれた机に座る少女は
モニターを見つめたまま無言でこくりとうなずき
すさまじい速さでカタカタとキーボードに指をすべらせる。
少女は、タン!と大きな音を立てて指でキーボードを弾かせて答える。
「ダンゲロス参加生徒数延べ326人。」
「現在。なんらかの理由で戦闘不能となった生徒数137人。」
「残る戦闘参加者数189人。」
「うち、番長派78名、生徒会派97名、転校生10名、派閥不明が4名。」
「・・この2時間少しの時間でおよそ40%が離脱しています。」
「このままの推移で行けば、あと3時間もせずに参加者数は1桁をきる事になりますね。」
少女が見ているモニターには0と1という2つの数字が大量に並んでいる。
彼女は、学園内の生徒に関するあらゆる情報を有か無かの2択。
0か1かで掌握する事ができる。
2択の情報を組み合わせ、応用する事で
全校生徒のあるゆる事柄を把握し、それらを統計する事ができた。
学園内生徒の総数の把握や生徒会予算の計算はもちろん。
全校生徒の成績、生徒会支持率。家族構成、恋人の有無。
生徒個別の判別はできないが、統計という形を成せば
彼女に掌握できない情報はないに等しい。
それが生徒会経理【無限録有数】の魔人能力【なんでも判定算】である。
彼女の言葉を聞いて会長はさらに質問を投げる。
「・・その中で、魔人とそうでない者それぞれの人数は?」
無限録はさらにカタカタとキーボードを打ち、タン!と指を弾く。
「生存者189人中、魔人187名。非魔人2名と出てますね。」
その言葉に、顔を抱えたまましばらく何かを考えていた会長が
くいとメガネを押し上げながら顔を上げる。
「・・なるほど。」
「しばらく姿を見せない副会長口舌院くんと、書記補佐唯我得くん。」
「あの2人がぼくに隠れて非魔人の羨望者たちを集め参加させていた事は気付いていた。」
「しかし今、非魔人のダンゲロス参加者が残り2名という事は」
「あの2人に何かが起きたという察しがつく。」
その言葉に架神が言葉を続ける。
「非魔人というと一人はあの坂井くんですかね。」
会長がこくりとうなずく。
「彼の言葉には偽りの気配を感じなかった。」
架神が続ける。
「やはり口舌院さんのしわざだったか。」
「・・残りのもう一人というと、予想するところ」
「魔人を恋人に持つ非魔人が、恋人の身を慮って参加、というところですが…」
「ぼくの女子情報網をもってしてもちょっと検討がつかないんですよねぇ。」
会長はこほん。とひとつ咳をして続ける。
「まあ。非魔人2人についての真偽は考えて答えが出るものではないだろう。」
「それよりも注目すべきは。」
「戦闘離脱者のほとんどが非魔人であり現在の生存者のほぼすべてが魔人である事。」
「それはつまり、我が生徒会メンバーの中では役職者である2名の離脱が見て取れる。」
「門番の範馬くんもいつの間にか姿が見えなくなっているようだ。」
「いずれにしても我が生徒会の役職者の残りは」
「今ここにいるぼくと無限録くんと架神くん。3名のみという事だ。」
「対して番長グループは、そのほとんどが有象無象の雑兵ではあるが」
「総番長の阿観世代くんと、副番長、特攻隊長」
「これまで番長グループ百余名をまとめていたのがこの3人だ。」
「番長グループの人数をどれだけ減らそうが、」
「この3人を討たなければ我ら生徒会の勝ちは見込めないだろう。」
さらみ架神が続く。
「副番長の白黒熊さん‥でしたっけ?」
「彼はうちの門番、範馬さんと因縁がありました。」
「それにある秘匿情報では口舌院さんも絡んでの三角関係があったそうです。」
「おそらくはこの3人でのつぶし合いがあったでしょう。」
「それがどんな結末であっても、少なくとも副番が無事でいられる状況はありえない。」
「そうすると番長派の猛者は残り2人というところでしょうか。」
キーボードをカタカタと鳴らしながら無限録も話に加わる。
「生徒会と番長派の戦闘不能者の推移には微差はありますが」
「戦力さとしてはいまだ拮抗しているようです。」
「問題は、これまで沈黙を守っている転校生たちの今後の動き。」
「それと派閥不明の4人の動向と言ったところでしょうか。」
「会長。今後どのようなご算段を?」
その言葉に会長が答える。
「ああ。今回のこのダンゲロス。」
「ここから戦況は大きな変化を生むだろう。」
「その中でぼくたち生徒会が。今、するべき事は…」
その時。
ドアの外で怒声が聞こえた。
「き、きさま!何者だ!」
「番長グループの回し者か!?」
「・・・うぐっっ!!」
何人かが争う声と音。
それはほんの数秒の事で。
少しするとコンコンとドアが礼儀正しくノックされる。
「会長さーん!あっそびましょっ!」
ドアが勢いよく開かれ。
そこに立っていたのは派手に盛られたギャル風の少女。
「・・ようこそ。生徒会へ。」
「君は賽仰寺くん・・だったかな?」
生徒会長が少女に言葉をかける。
「あれ~。あたしのこと知ってるんだ~?」
「あれれ~?架神くん?どうしてここにいるのかなあ♡」
「あれれ~。おかしいよ~?ww」
賽仰寺はニヤニヤと笑いながら3人に近付いていく。
ド正義はさらに言葉を続ける。
「知っているさ。君の事も。転校生の事も。」
「ぼくはこの学校の生徒たちの事はなんでも知っている。生徒会長だからな。」
「じゃっあー。私の目的も知ってるよねw」
「会長さん。あっそびましょ♡」
ニヤリと笑う賽仰寺の頭上に黒い歪みが生まれ、そこから棒のようなものが顔を出す。
賽仰寺がそれを手に取り歪みから引き抜くと、それは鈍く光る日本刀のさやだった。
会長の盾になるかのように
架神と、椅子から立ち上がった無限録が立ちふさがる。
にらみ合う3人。
会長ド正義は。重く口を開いた。




