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scene16, -唯我得と賽仰寺-


「賽仰寺…だと…ま、まさか!」

「日本の産業、レジャー、貿易の9割を占める賽仰寺グループ!」

「世界有数の資産家。世界の貨幣の7割を所有するというあの…」

「あの賽仰寺の令嬢か!!」


「あ。ちょと違うかな。」

「今の賽仰寺グループの代表があ・た・し。なんだよね♡」


なんか…よくわからないけど

賽仰寺さんて実はすごい人だったのか…。


「まあ。よくあるつまんない話だよ。」

「あたしが生まれる前からうちは金持ちだった。」

「でも、親はどっちも仕事や金を数えるのに夢中で」

「実の我が子なはずのあたしに興味なかったみたいなんだよね~。」

「あ。昔執事から聞いたんだけどさ。」

「あたしがまだ寝返りもできない赤ちゃんだった頃にさ。」

「うちの親、赤んぼのあたしに100万にぎらせて海外旅行に行ってたんだって(笑)」

「ハウスキーパーさんが死にかけてるあたし見つけてくれて助けてくれたんだって。」

「まじうけねw?わかれっつーのww死ぬっつーのwww」


賽仰寺さんは独りで爆笑しているが、とても笑えない。


「まあそんな事とか他にもいろいろあってさ。」

「そんであたし物心ついた頃に思ったんだよねー。」

「あたしが金を稼げるようになったら親もあたしの事見てくれるんかなって。」

「そんでまずは超勉強してさ。」

「株とかFXとかで金増やしてー。ネットで店持ったりー会社作ったりー」

「んで小6くらいだったかなー。気づいたら、あたし親より金持ってたんよ。」

「で。ついでに親父の会社ももっと稼がせてやったりしてたら」

「なんやかんやあって今賽仰寺グループの社長があたしんなったって感じ。」

「ま。どうでも良い話やんねー(笑)」


「ま。ようはさ。」


賽仰寺さんが虚空に手を伸ばすと

そこにさらにひずみが生まれる。

そこから札束が無数に現れ

文字通り山のように札束が積まれていく。


「賽仰寺グループが所有してる金をあたしは自由に使えるってわけ。」

「ほら。欲しい奴は好きなだけ持っていきな~。」

「このイケメンを守りたいっていう奴だけ、残ればいいんじゃね~?」

賽仰寺さんがそう言うと

ぼくや愛玩式さんを押さえつけていた女子たち含め

その場にいた女子が一人残らず金の山へと群がっていく。


「いないって(笑)」

「あんたを守りたいって女の子♡」

賽仰寺さんはにやにやと笑いながら唯我得の顔を見る。


「たしかにさあ。金は魅力的だよ。」

「でもさ。あんたより金を持ってるあたしは」

「あんたの何に魅力感じりゃいい訳~?」

「金がねえあんたに魅力なねえってこの子らが証明してんよ?」


彼女の言葉に唯我得は言葉を失う。


賽仰寺さんが唯我得の襟をつかみ力づくで顔を引き寄せ、さらに笑い続けた。

「たしかにさ。あんたの言う事すっげえわかるよ。」

「女の金銭欲ってさ。男の性欲とすっげ似てるよねえ。」

「でもそれってさ。金出してくれれば誰でも良いなんて言ってる女。」

「ヤらしてくれる女なら何でも良いっつう男と同列に下衆いやつらって事じゃん。」

「そんな女どもにサイフの股開いてチヤホヤされて。」

「あんたそれで満足な訳?」

彼女は、唯我得の襟を勢いよく引っ張り

唯我得は地にしりもちをついた。


賽仰寺さんは。

これまでと打って変わって怖い形相でやつに馬乗りになる。

「金ってのはな。」

「幸せになるための手段に使うもんであって」

「使い方間違えりゃみんなを不幸にするもんなんだよ。」


「てめえは金の使い方間を違えてる。」

「てめえみたいな下衆野郎。あたし大っ嫌いなんだよね。」


そう言うと。

賽仰寺さんの右ストレートが唯我得の顔面の真ん中にヒットする。

「おら!金の力でなんでもできるんだろ??」

「なんとかしてみろよほら!ほら!」

賽仰寺さんは笑いながら何度も何度も奴の顔を殴り続ける。

やりすぎだろ…と思うほどでもあるけど

こいつが愛玩式さんにしようとしていた事。

今までしてきた外道なおこないを考えると、

少し、気持ちがスッとした。


賽仰寺さんが執拗に唯我得の顔面を殴り続け

やつの顔が原形をとどめないほどにボロボロになったところで

ようやく賽仰寺さんは満足したらしい。

やつは、抵抗する手も止まり。ヒクヒクと体を引きつらせ伸びてしまっていた。


はあはあと息を切らしながら言った。

「あたしのバージンがほしいんならさ。」

「あたしより金持ちになるか」

「金がなくても魅力的な男に生まれかわって出直して来な♡」


立ち上がった彼女はぼくたちの元へスタスタと歩き寄って来る。

「よう坂井少年!」

彼女は、にやにやを隠し切れないという様子でぼくに悲しかける。

「あんたやるじゃ~ん!」

「超感動したわー♡」


一瞬。彼女の言ってる言葉の意味が理解できなかったが

「ぼくが愛玩式さんを守るーってやつぅ?」

「かっこいい!超かっこいいよあんた!」

賽仰寺さんがわざとらしくくねくねし出したところで

ぼくは、今なお自分の腕の中で愛玩式さんを抱きしめてしまっていた事に気付き

あわててその手を愛玩式さんから離す。


「いや~見直した!」

「あたしも坂井くんに惚れちゃいそうになったよ~~♡」

賽仰寺さんがそう言うと

顔を真っ赤にした愛玩式さんが、両手で、彼女をぐいぐいと押してぼくから引き離す。

そんな愛玩式さんを見た彼女は…ひときわ優しい目をした気がした。

「それはやめておくけどね(笑)」

そう言うと彼女は急に真面目な顔をして愛玩式さんを正面に向き直り

そして

ぱぁぁん!と乾いた音が響いた。

賽仰寺さんが愛玩式さんのほほをひっぱ叩いたのだ。


もちろん、愛玩式さんは自分の能力で身を守っているので

痛みもなくきょとんとした顔で賽仰寺さんを見返す。

むしろ「痛ってえ~」と賽仰寺さんが手をぶんぶんと降っている。


「愛。あんた。また何もせずにただ震えてたって訳?」

「黙って誰かの助けを待って。」

「坂井くんが守ってくれなければ」

「今回あんたマジヤバかったんじゃないの??」

賽仰寺さんの口調は厳しいけど

どこか優しい感じがする。

「いいかい。愛。」

「今回はマジでピンチでもあってチャンスなんだよ。」

「あんたが。あんたの意思でこのダンゲロスを生き延びるんだよ。」

「それが今のあんたに必要な事なんだ。」


「自分がしたいことを、自分で考えて。」

「自分で決めて。行動するんだ。」

ぼくの方をちらりと見て続ける。

「今あんたが。本当にしたいことはなんだい?」

「いいか。よーく考えるんだ。」


愛玩式さんは…黙ってこくりとうなずく。


そして今度は賽仰寺さんの矛先がぼくに向かう。

彼女はぼくのにうでで抱き、顔をこれでもかと近づけて言う。

「坂井くんさ~」

愛玩式さんに聞こえないように小声で。

「これからもあの子の事・・守ってやってくれよ。」

「あんたならあの子の心を救ってやれるかもしれないって。」

「そんな気がするんよあたし。」

顔が。顔が近い。

思わず顔をそらすと、

そんなぼくたちを見てなんだかあわあわしている愛玩式さんが目に入る。


「会長とはもうナシつけたの?あと番長か。」

ぼくが「はい」と返事を返すと

「そっか~。あたしはこれから会長に用があるんよね~。」

「んじゃ。あとは任せたから。」

ぼくはようやく賽仰寺さんの腕から解放される。

「あんたには期待してんよ~。ばいぴ~。」


ぼくたちは、賽仰寺さんに見送られてその場をあとにした。


・・賽仰寺さん。やっぱり怖い人だったけど・・

でも、優しい人でもあるのかもしれない。

初めて彼女と会ったときに言っていた

「会長を殺す」というのも、本当はもっと軽い意味だったのかもしれない。

人は関ってみないとわからないもんだな。そう、思った。

関わってみないとわからない…か。

ぼくが愛玩式さんにふと視線をやると

彼女も僕の顔を見ていたらしく、ふいに目があってしまう。

ぼくは急いで目をそらす。

賽仰寺さんの言葉のせいだろうか。

もっと。この子の事を知りたい。ぼくはそう思えたんだ。


・・・


・・ぼくたちがその部屋を去ったそのあと。

賽仰寺はふたたび唯我得の目の前に立った。

すっかり伸びていた彼の背中を蹴り飛ばすと

彼はううぅと小さな声を出しながら目をさます。


おびえた顔で

賽仰寺の顔を見上げる。

賽仰寺は…そんな彼を冷たい目で見降ろしていた。


・・・


【生徒会初期補佐・唯我得裕悦 死亡】


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