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scene14, -範馬と口舌院-


「美しい愛のパフォーマンスをありがとう♡」

弓を持った男たちの間を割ってやってきた少女。

それは、生徒会副会長【口舌院言葉(クゼツインコトバ)】だった。


「わたし、感動で涙が出そうでしたわ~」

と、わざとらしくハンカチで目を拭って見せた。


「…言葉。やはりお前だったか。」


「範馬く~ん。愛するボーイフレンドを失って悲しいねえ。」

「ていうか。ほんとにそっちの道に目覚めちゃったの?」

口舌院はハンカチで口を押さえクスクスと笑っているが、

その眼差しにははっきりと軽蔑の色を示していた。


範馬慎太郎は

ゲイ

ではない。


それは魔人口舌院の魔人能力【アマ・パカンダ】によって流布された

根も葉もない嘘のウワサだった。

彼女の能力は、根も葉もないデマカセに限り

爆発的な拡散力でウワサを広め、それを信じ込ませる能力であった。

己の見たものしか信じないという信念の強い生徒の多い生徒会や

独立していて他と接点の少ない番長グループにはほぼ影響を持たない能力ではあったが

一般の生徒たちに嘘のウワサを信じ込ませれば、間接的にも彼らに伝わる。

よってその能力はほぼ制限なく無敵の効果を発揮する。


範馬は彼女の能力によってゲイだという噂を流されたが

それを積極的に否定しようとはしなかった。

信じる者のみ信じ、真実を知るものは知れば良い。

ただそれだけであったし

そのウワサを信じて告白してきた男

白黒熊の愛も、ただ受け入れただけ。

彼は白黒熊から向けられた自分への愛を受け入れ

彼と恋人関係とはなったが

本来、彼の恋愛対象は女性である。


「言葉よ。お前の能力は生徒会勝利のカギともなる」

「最優先対象者として保護されていたはず。」

「なぜこんなところにいる。」

範馬の問いに彼女は不敵な笑みを浮かべて答える。


「それはもちろん。」

「あなたを殺すためよ。範馬くん。」

「・・わたしのあの秘密をバラされないように」

「そしてあなたが孤立して苦しんでくれるように」

「わたしはあなたの根も葉もないうわさを流したわ。」

「でも、あなたはそんなのへでもないみたいな顔をして」

「何も変わらず過ごしていた。」

「それが…わたしにとってどれだけ恐怖だったかわかるかしら?」


「そして今回のダンゲロス。」

「あなたのくちを封じるのにこれ以上の好機はないと思ったわ。」

「だから、わたしはわたしの目的のため」

「着々と準備を進めていた。」


彼女がサッと手を一振り。

合図をすると、さらに何十人という男たちが集まり、範馬を取り囲む。


「そう。私はこの日のために、さらにいくつかのウワサを流したわ。」

「あなたが生徒会をつぶそうとしているスパイだとか。」

「番長を負傷させた真犯人があなただとか。」

「今回のダンゲロスはあなたの策略ではじまったものだとか。」

「それらのウワサを信じて、あなたに恨みを持った生徒たちはのべ50人。」

「そしてお察しのとおり。」

「そのほとんどが魔人ではない普通の人間よ。」

「あなたがほんのひと振り拳をふるえば」

「簡単に吹き飛ばされてしまう普通の人間。」

「あなたにそれが、できるならね♡」


群衆の中から1本の矢が放たれ

範馬の脚に突き刺さる。


グゥッと声を上げた範馬は

ひざをついたままその場から身動きが取れない。


それを皮切りに、次々と凶器を持った暴徒たちが範馬に襲い来る。

ある者は木材で、ある者はバットで、彼を容赦なく袋叩きにする。

範馬は、それらを一切避ける事なく

抵抗もせずに殴られ続けた。


・・頭から、体から大量の血をぼたりぼたりと流しながら

それでも範馬は抵抗を見せない。


「どうしたの?このまま殴られ続ければ」

「たとえ学園一のタフなあなたでも、ひとたまりもないのではなくて?」


口舌院は相変わらず高みの見物で範馬をあざけ嘲け笑う。

その言葉に、範馬はゆっくりと口を開く。


「言葉。お前は・・哀れな女だ。」


口舌院は冷たい目で範馬を見つめる。


「あの日俺がお前に言った言葉をお前は何一つ理解してくれてないのだな。」

「お前の嘘のウワサで。お前の美しさで。」

「人々を惑わし。男どもをかし使い。」

「自分は何もせずとも、お前の望みを何でも叶えてもらえる。」

「何でもしたがう男どもにすべてを押し付け」

「努力も責任も負わず、高みから男どもを見下す。」

「そんなお前のどこに魅力を感じようか。」


「お前の思いはどこにある!お前はどこにいる!」

「お前の望みをお前自身が叶えずに!本当にお前は生きているのか!!」

「あの日も俺はお前にそう言ったはずだ。」

「だから、お前の気持ちには答えられない。」

「女を磨いて出直して来いとな。」


「…なによ。ほんの気の迷いで!」

「このわたしが声をかけてあげた事を!」

「今でも自分が優位だとでも思ってるわけ?!」

「バカみたいに筋トレ筋トレで」

「浮いた話のひとつもないあんたをからかってやっただけじゃない!」

「あの坂井とかいうガキもそうよ!」

「全校生徒の最後まで恋人ができなかったかわいそうな陰キャ男子に」

「このわたしが!」

「わたしが声をかけてやったっていうのに!」

「このわたしを事なげにするなんて何様のつもりよ!」

「だからウワサを流してやったの!」

「孤立して!だれからも恨まれ!妬まれ!そして殺されてもらえるようにね!」


口舌院のその言葉に、範馬は初めて自分の頭上に振り下ろされるバットを手で

グワッと勢いよく立ち上がり怒りをあらわにした。

「俺の事はどう思うがかまわねえ。」

「だが、あの少年を悪く言うとは…お前は相変わらず、見る目がないのう。」

「真に漢たる男は!己の信念を曲げねえ男だ!」

「ちょいと外見の良い女に言い寄られたからって簡単になびかねえ。」

「己の目標のために生きる男は女の尻なんて追いかけやしねえ。」

「己の信念を貫く背中を女に見せて。」

「それの背中を追いかけてくれる女の愛を黙って受け入れるもんだ。」

「男の魅力も!女の魅力も!」

「恋人の有無じゃねえ。追っかけの数でもねえんだよ!」

「てめえの愛もてめえで叶えられねえやつが。」

「愛されたいなんてはなはだ笑わせてくれるぜ!」


範馬の言葉に

口舌院はうつむき。

ワナワナと震えながら表情を崩す。


「わかってるわよ!」

「だから!」


口舌院は。

顔をぐちゃぐちゃに崩し涙を流しながら

範馬を押し倒し馬乗りになる。


「だからわたしはあんたに惚れたんだから!!」


ポカリポカリと範馬を殴るが、振り下ろす拳に力が入っていない。

範馬はその拳を黙って受け。そしてつぶやく。

「・・痛えなあ。愛のこもった拳はどんな凶器よりも痛いぜ。」


口舌院の腕をガシッとつかむと範馬は続ける。

「言えたじゃねえか!お前自身の言葉で。拳で。」

「お前の愛!しかと受け止めたぜ!!」


その言葉に、口舌院はほほを染め、範馬の顔を見つめる。


「そして。お前の愛に俺も答えよう!」

そう言うと範馬は。

全力で口舌院のほほを引っぱたいた。

顔がちぎれるのではないかというほどの勢いのビンタ。

宙で体が半回転するほどに吹き飛び。

ズザザザと顔を地面に引きずりながら倒れこむ口舌院。


「がははは!さあ!ここからは俺の愛をたっぷり与えてやるぜぇ!」

吹き飛んだ口舌院の元に歩き寄る範馬。

体から蒸気がでているかと見間違うほどの威圧を溢れさせながら。


口舌院は、ひぃぃぃ!と悲鳴を上げながら地を這い。

「お、お、お前らあいつを止めて!早く!」

と叫ぶが

誰も範馬の彼を止める事は出来ない。


「本気の俺は。全身凶器だぜ~。近寄れるものなら近寄ってみな!」

範馬の能力【超スポーツマンシップ】により誰も彼に近付く事はできないのだ。


「だが!俺はお前を受け入れるぞ!言葉!」

勢いよく走り寄る範馬に

い”や”ぁ”ぁ”ぁ”と悲鳴を上げて逃げようとする口舌院だが


「ほれ!愛のハグだ!!」

と彼女の腰をガシッとつかみ

そのまま。

バックドロップ。


相手の脳天を地面にたたきつける

危険極まりない大技の炸裂。

みるみる地面が近づいてくるのを目の当たりにした口舌院の悲鳴がひびき。

ズン!と大きな音を立てて地面がえぐられる。


口舌院の頭との衝突を避けるように

吹き飛びえぐれた地面。

範馬の能力により、彼女はケガひとつない。

だが、涙を流しながら白目を剝く彼女は

口からブクブクと白い泡を吹き失神していた。


範馬は体制を戻し

口舌院をそっと抱き起した。


「はあやれやれ。」

「生徒会のキーマンを失神させちまった。」

「会長に怒られっかな。」

「でも」

「こんなクソみたいな戦争よりも」

「もっと大事なお勉強会をしてたんだ。」

「許してくれるよな。会長。」


口舌院をそっと抱き上げ

生徒会室に戻るべく歩き出した範馬。


「そういえば。あの少年は元気に逃げ回ってるのかね。」

「死ぬなよ坂井。また会うまではな。」


【ところ変わり】


範馬先輩がぼくたちの安否を願って伊くれていたその時。

大変申し訳ないながらぼくたちは、

あの時姿が見えなくなっていた範馬さんの心配なんて微塵もしていなかった。


そんな余裕はかけらもなかったんだ。


その時ぼくたちは。

数十人の敵に囲まれ、絶体絶命のピンチにおちいっていたのだから。

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