scene13 -範馬と白黒熊-
時は少し遡り。
坂井と愛玩式の2人が生徒会室に飛び込んだその後。
生徒会用心棒【範馬慎太郎】と【白黒熊太山】
2人のにらみ合いは続いていた。
範馬が口火を切る。
「ここじゃあ狭くてお互いに全力も出せねえだろうよ。」
「おもてに出な。そこで決着つけるぜ。」
「おい!お前ら!この門番役は任せるぜ!」
範馬がそう呼びかけると
何人かの屈強な生徒たちが生徒会室の扉に張り付く。
範馬は3階の廊下窓から勢いよく飛び降り
ずしぃぃんという音が響き渡る。
白黒熊は己の体を糸のように細く変化させて
ひらひらと風に舞うように範馬の後を追う。
魔人白黒熊の魔人能力【でぶっていぅなぁ##=3】は
自分の体を最小、糸切れほどまでに細く変化させられる能力だ。
ある日、己の腹の厚みで歩道のほとんどをふさいでしまっていた彼が
すれ違った女子高生が「じゃまなんだよクソデブ!」と
吐き捨てられた事がショックで覚醒した能力である。
対して魔人範馬の魔人能力【超スポーツマンシップ】は
ハンマー投げのハンマーや竹刀、暴投された球技のボールなど
人をケガさせかねないものに、人を近づけさせない反発空間をまとまわせる能力。
・・ハンマー投げの選手である彼は部活の練習で
「反発空間をまとったハンマー」をブン投げているため、
反発空間に吹き飛ばされたケガ人が続出している件に対して彼は
「がははは!悪い悪い!」と豪快に笑って済ませているところはご愛敬だ。
そんな2人のタイマンではあるが
言葉を交わさずともお互いの意思は合致している。
能力を使わない純然たる殴り合いだ。
しばらくお互いににらみ合うが
2人の意識がシンクロした瞬間。
同時に己の拳を相手の顔面にめり込ませる!
「ほぁ~。痛い痛い。」
白黒熊は心なしか嬉しそうに、流れ落ちる鼻血を手で拭いながら言った。
ふん!と方鼻を指で押さえ花血を噴出した範馬も言う。
「どんな凶器の一撃もものともしねえこの体だが。」
「愛のこもった拳はやっぱり効くなあ。」
「さあ!どちらかがぶっ倒れるまで!」
「限界まで!愛し合おうぜぇぇぇ!!」
お互いがお互いに、無数の拳をぶつけあう。
絵に描いたような漢と漢のタイマン勝負だ。
このパワーマン2人の全力の殴り合いは十数分も続いた。
もうお互いに体はボロボロでフラフラと立っているのもやっとの様子だ。
「ふへへ…さあ、来いよ。」
ボロボロの顔で笑って見せた範馬が白黒熊の拳を誘う。
白黒熊も、よろよろと立っていながら
最後の力を振り絞って拳を突き上げる。
その拳が範馬のほほをとらえるのと同時に
範馬の渾身の拳が白黒熊の顔面の真正面に突き刺さる。
そのまま。ずしーんと倒れこむ白黒熊。
「ふ、ふふふ…やっぱり…」
「範馬さんには敵いませんね…。」
力なく笑う白黒熊に、範馬はだまって手を差し出す。
その手を握り返し立ち上がろうとする白黒熊。
その体に
ヒュンヒュンと風を切る音と共に
無数の矢が突き刺さった。
矢の数本は白黒熊の頭部やのどを貫通し
血を噴き出して崩れ落ちる彼の
命が助かる事はない事は見るも明らかだった。
「フジィィィ!」
範馬が白黒熊の名前を叫び、彼を抱き上げる。
複数の男が、手に弓を持って彼らを取り囲むが
範馬はそれに気を止めず
白黒熊を抱き上げる。
「へへへ。範馬さん…。」
「わたし、ここでリタイアみたいですわ。」
「・・わたしの最後は、範馬さん。」
「あんたに引導をわたしてもらいたかったものですが」
「ままなりませんな・・。」
白黒熊は、血に濡れた手で範馬のほほをなぞる。
「せめて…せめて最後に…」
「もう一度だけ、あんたのキスを…。」
その言葉をふさぐように
範馬は白黒熊の唇に自分の唇を重ねる。
「あ、ありがとう…。範馬さん。」
「愛して…ました…よ。」
そう言葉を残し息絶える白黒熊。
「フジィィィィ!」
絶叫する範馬。
筋肉男と巨体男のラブシーンを見せつけられる群衆。
美しくも悲しい、ひとつの愛が終わった瞬間だった。
【白黒熊太山:死亡】




