scene9 -転校生たち-
「さてこの後の計画についてなんだが…」
そう言いかけたリーダーの言葉をぼくはさえぎる。
「ちょっと待ってくれ。」
「さっきも言ったとおり、ぼくは君たちの味方になったつもりはない。」
「君たちのじゃまもしないし、ぼく自身が必要と思えば君たちに協力もしよう。」
「ただ、ひとつだけぼくのわがままを聞いてほしいんだ。」
「…内容によるかな。聞かせてくれよ。」
「ぼくは、まずダンゲロスが始まる前に」
「直接、番町と生徒会長と話しをしに行きたいんだ。」
「もし可能であればこのダンゲロス自体も止めたいとは思ってるけど…」
「今や番町グループも生徒会の役員たちも一触即発。それは難しい事もわかってる。」
「でも‥少なからずダンゲロスの発端となったあの事件についたはぼくも知っておきたい。」
「・・なるほど。」
「だから君たちには、ぼくが2人と話しをするまでは事をしかけないでもらいたいんだ。」
リーダーは品定めをするような目でぼくを見ている。
他の転校生たちもだ。
「この要求を飲んでくれないなら。」
「今後どんな事があってもぼくは君たちに協力しない!」
「・・わかったよ。君の要求を飲もう。」
「ただし、こちらからもひとつ条件がある。」
「アイくん。」
声を投げかけられ、にこにことほほ笑んでいた少女が起立する。
「は、はい!」
「彼女は【愛玩式愛】くん。」
「君の監視役として、彼女も同行させてもらいたい。」
少女はにこにこと僕に微笑みかける。
「わかった。それで手を打とう。」
こうしてリーダーとの話は終わった。
ぼくは少女の元に歩き寄るが…
彼女はにこにこと微笑みながら僕の横を素通りして
リーダーの元へ向かう。
ぼくは窓際に立ち、彼女とリーダーが何かを話している様子を眺めた。
・・どんな話をしているのかは聞こえてこないが
彼女はリーダーの言葉に何も言葉を言い返さず
微笑みながら、ハイ。と承諾の言葉を返すだけだった。
気の弱そうな女の子だったから、リーダーに弱みでも握られてるのだろうか。
そうしていると、一人の男がぼくに話しかけてきた。
「やあ。2年B組坂井平行くん。」
ぼくの名前やクラスまで知っている?
「ぼくは3年B組の【架神好美】。よろしくね。」
男はのくに手を差し伸ばし、握手を求めてきた。
架神先輩。もちろん知っている。
生徒会総書記。面倒見の良さNO1、さわやか美形、気さくな性格で
誰からも愛されている人気の先輩のはずだ。
「総書記の架神先輩?!なんであなたがここに?」
「ははは。生徒会の役員のひとり。頼れる先輩なんてぼくのほんの一面さ。」
「真の意味で、自分を知ってもらうのは難しいってところかな。」
先輩はキラキラと輝くようなはにかみ顔で言う。
「ぼくもこの転校生のメンバーになったのはつい2週間ほど前なんだけどさ。」
「彼らの目的を知った時は驚いたよ。」
「だけどぼくも君と同じ。この争いの終結を知りたくてここのいるのさ。」
「それに。」
先輩は遠く宙を見つめ、続けた
「ぼくがどうしてもここにいなきゃいけない理由も。できた事だしね。」
最後の先輩の言葉はわからなかったけど
なるほど。一見人気者の先輩にも人に話しづらい事があるのかもしれない。
「やっほー」
気だるそうにギャルの少女が近付いてきた。
「あっし【賽仰寺円】。よっぴーでーす。」
見た目の派手さと軽薄なノリではあるけど
昨日「生徒会長を殺す」と宣言していた少女だ。
ぼくはおずおずと手を伸ばし、彼女と握手をした。
「は、はじめましてですぅ。」
賽仰寺さんの背後から小柄な少女がやって来た。
う。くさい…。この教室内の悪臭はこの子が原因か。
「わたし【腐れ花詩音】ですぅ。うへへ。よろしくお願いしますぅ。」
少女が近づいていくと、さすがの架神先輩も賽仰寺さんも少し顔をしかめて
ぼくと腐れ花さんから離れた。
「あ、えとよろしく。」
ぼくはつい、これまでの流れから
彼女の手を取り握手を交わしてしまった。
腐れ花さんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「あ。でへへへ。ありがとうございますぅ。わたし、この手、一生洗いませんから!」
・・彼女の言葉が本気ではない事をそっと心に祈った。
「坂井くん。」
リーダーがぼくに声をかける。
「お待たせして悪かった。」
「・・この子はあくまで君の監視役だから過剰な期待をしないでくれよ。」
「それでは幸運を祈る。」
ぼくは転校生たちに見送られ、愛玩式さんと一緒に教室を後にした。
「・・リーダー。彼の要求本当に飲む気ですか?」
「彼が話を終えるまで手を出さないって。」
「・・そんな訳ないだろう。」
「こちらはこちらで予定通り動くさ。」
「生徒会長抹殺の手はずをさ。」
ぼくらがいなくなった教室でそんな会話があった事を
ぼくは知る由もなかった。




