ルミア1
【術式加算 風魔法 風刃×3】
【術式強化 防御魔法 対風魔法結界】
私は先制攻撃として風刃を3つ飛ばし、それらをアマリアが皇女の一歩前に出て、展開した防御魔法でその内2つを防いだ。
アマリアの能力術式強化は自身の魔法を魔力を消費することなくおおよそ2倍の威力・強度にするというもの。
通常ならとても強力な能力だが、私の術式加算とは少し相性が悪いようだ。
残った一つは、咄嗟に黒髪の少年がアマリアを庇うようにして、剣で防いだ。
少年はその衝撃で近くの木に打ち付けられた。
「ごめんカイ、次は防ぐ!」
「ああ、頼んだぞ」
騎士は私が次の魔法を放つまでの隙を狙って距離を詰めてくる。
だた、もう次の魔法の準備はすでに出来ている。
【術式加算 岩石魔法 岩石散弾×3】
展開した魔法をそれぞれ迫っている騎士、魔法の発動準備をしている皇女、先ほどの衝撃で少し立ち上がるのに時間がかかっている少年に放った。
騎士は一度立ち止まって剣を構え、一つ一つ切り落として防いだ。
この騎士、かなり腕が立つようだ。
【術式強化 防御魔法 対岩石魔法結界】
皇女、少年に関してはアマリアがまとめて防御魔法で守った。
アマリアを信じて魔法を準備し続けていた皇女が私に向かって魔法を放つ。
【電撃魔法 追尾電流】
【防御魔法 対電撃魔法結界】
その魔法に対応し、すぐさま剣の届かない位置まで上昇した。
迫ってくる騎士と奥の少年の対策だ。
騎士は私の高度に届かないと判断し、皇女の守りを引き受けようと移動を始めた。
【牽引魔法 生体牽引】
皇女に意識が向いている騎士を牽引魔法で私のすぐ下まで引き上げ、回避できないようにしてから魔法を放つ。
今撃てる、点での最高威力を。
【術式加算 炎魔法 収束熱線×3】
3つの収束熱線を一つにまとめ、威力を向上させたものを回避行動がとれない騎士に向かって、放つ。
しかし騎士はアマリアの牽引魔法によって彼女の元へ引っ張られ、私の魔法は彼の片腕を焼き落とすに留まった。
そうして、私の収束熱線は地面を貫き、その膨大な熱量を以って周囲の土や石を溶かしながら大きな爆発を引き起こした。
【防御魔法 対炎魔法結界】
【術式強化 防御魔法 対炎魔法結界】
私は爆風から身を守るために防御魔法を発動した。
アマリアは皇女と少年を呼び寄せ、防御魔法でその爆発を凌いだ。
その爆発は辺りの木々を吹き飛ばし、大きなクレーターを形成した。
仕留め損なった。
こうなってしまうと、もう牽引魔法による不意打ちは通用しないな。
牽引魔法は自ら騎士の間合いに入るリスクを負っている。
次は引っ張った瞬間、それに合わせて剣を振ってくるだろう。
「大丈夫ですか⁉」
「だい、じょうぶです_!」
「無理しないでください。私、あなたを失ったら…」
「大丈夫_ですよ、皇女様。後継はもう育っています」
「そういう問題では…もう休んでてください」
私の魔法によって地中の水分が蒸発し、辺りから立ち上っている水蒸気越しにそんな会話が聞こえてくる。
炎魔法で腕を焼き切ったため、あの騎士はもう動けそうにないが、失血死することもなさそうだ。
少し面倒だな。
【術式強化 風魔法 風弾】
【術式加算 防御魔法 対風魔法結界×2】
次の魔法を用意しようとした瞬間、水蒸気を吹き飛ばしながら風弾が私めがけて飛んできたので、それを2枚の結界で防いだ。
今の魔法は、アマリアか。
「お姉さん、どうしてこんな事するの?ジェイドさん、とっても良い人なのに!」
「私が、悪い人だからよ」
「そんなわけない!お姉さんは魔獣に襲われてた私を助けてくれた、居場所の無い私を拾ってくれた、お腹が空いた私に料理を作ってくれた、非力な私に魔法を教えてくれた!悪い人な訳ないの!」
「…同じ髪のよしみで警告してあげる。アマリア、この先そんな調子で生きていたら、いつか痛い目を見るわよ。さっきからずっと私を悪人じゃないと思いたいようだけれど、いい加減現実を受け入れなさい」
心を鬼にして、私は冷たい言葉を言い放った。
この言葉をきっかけに、アマリアが世の中が善人だけじゃない事を知ってほしい。
【風魔法 風刃】
アマリアが反応できない速度で発動したその魔法は彼女の頬を掠め、背後の地面に着弾した。
「これは恩情。次は当てる」
「おいおい、さっきから聞いてりゃ色々コイツに好き勝手言いやがって」
黒髪の、アマリアにカイと呼ばれていた少年が彼女の一歩前に出て、アマリアとの会話に割り込んできた。
「カイ…」
「アンタがコイツの何なのかは知らないが、コイツから元気が無くなっちまったら、いよいよコイツの取柄が無くなっちまうだろ。そこらでやめてもらおうか」
「大口を叩くのは自由だけど、貴方、加護無しでしょう?魔法が使えない、魔力が操作できない貴方に、この戦闘で何か出来ると思っているの?」
「酷い言い草だな。そんなの、やってみなきゃ分からないだろ!」
カイは私に顔を向けたまま足を曲げ、思いっきり力を溜めてから地面を蹴って飛び上がった。
その跳躍は、強化魔法が使えるあの騎士でさえも諦めた高度に届き、私に向かって剣を振り下ろした。
私は咄嗟に身を捻りそれをかわす。
普段なら反撃の魔法を放っていたが、強化魔法が使えない少年がただの跳躍でここに届いた事に驚いてしまい、撃てなかった。
どういう事?
アレクの例もあるし、加護の無い人類種の身体能力は元々高いと思ってはいたけど、ここまでのモノだとは思わなかった。
【風魔法 指向性竜巻】
カイに意識が向いている私に、横から皇女が協力な風魔法を放つ。
やけに溜めが長いと思ったらこれか_!
【術式加算 防御魔法 対風魔法結界×3】
私の張った結界をその魔法は2枚砕き、3枚目に衝突した瞬間周囲に発散した。
この指向性竜巻は、さっき私が使った収束熱線と同じ、高難度の魔法。
皇女がこのレベルの魔法を使えるとは…完全に想定外だ。
だが、今ので皇女の魔力量はかなり削がれた。
撃ててもあと2発。
向こうも、私への有効打になりうるのは高難度魔法しかないと分かっているはず。
それを確実にいなす事が出来れば、皇女をただのでくの坊にすることができる。
アマリアはさっきから俯いて動かないし、そうなれば私の勝ちだろう。
そんな事を考えているうちに、カイによる二度目の攻撃がきた。
【防御魔法 対物理結界】
彼が振りかざした剣を対物理結界で弾く。
今度は反撃する。
【術式加算 凍結魔法 氷槍×3】
一つだと剣で防がれてしまうと思ったので、3方向から落下するカイにめがけて魔法を放った。
それに対し彼は剣を構え自身が回転する事によって、命中まで若干のタイムラグがあった私の魔法を全て切り防ぎ、かすり傷を作るにとどまった。
【電撃魔法 電撃砲】
カイが落下し、私から一定の距離を離れると皇女がすかさず高威力の魔法を発動する。
【術式加算 防御魔法 対電撃魔法結界×3】
皇女の魔法が再び私の結界に命中する。
ただ先ほどと違うのは、皇女の魔法が結界を1枚しか貫かなかった事だ。
私もまだ電撃魔法に対する知見が深くないので、必要な結界の枚数を見誤った。
この戦いで魔力にそんな余裕はないというのに、少し無駄遣いしてしまった。
気を付けないと。
先ほどから魔法を高威力の魔法を放ってきている皇女に手のひらを向け、魔法を発動する。
【術式加算 凍結魔法 追尾氷槍×2】
私は、習得する者が少ない凍結魔法を選択した。
皇女の魔法の練度から考えて、あまり多くの魔法、及び対応する防御魔法を習得していないだろうと考えたからだ。
基本的に防御結界で防げる魔法の数は一つ。
知っていた時に備えて、もう一つ追尾氷槍を放った。
皇女は対抗魔法を知らないようで、皇女はただ立ち尽くす。
その表情を見ると、どうも諦めたようには見えず、次の魔法の準備を始めた。
これは…
【術式強化 防御魔法 対凍結魔法結界】
二つの魔法がその強化された結界に衝突し、砕け散った。
「お姉さん。私、今更だけど決めた」
アマリアは何らかの魔法術式を組みながら私を見上げて話しかける。
「私、お姉さんの目的が何なのかは知らない。けど!私は帝国に、世界に、ルミアお姉さんを北の魔女として記憶して欲しくない!例え偽善だったとしても、誰かを助けて、養って、魔法を教えて。誰かの考えを尊重できる人だって、知ってほしいの!だからこんなことやめて、罪を償ってお姉さん。私、前々からお姉さんが隠れて何かやってるのは知ってたの。でも、目の前の優しさに甘えて何も言えなかった…私も、お姉さんを止めれなかったから、一緒に償うからっ_!だから!」
「貴方ね、そんなわがまま…」
アマリアは組んでいた魔法術式に魔力を込め、発動する。
【術式強化 反転 防御魔法 対侵入阻害結界】
これは…外からの侵入を拒む結界を反転させて、内から外に出られないようにした結界?
こんな高等な技術、私は教えて…
「うん、だからね、これは私の、最初で最後のわがまま。聞いてよ、お姉さん_」




