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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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アマリアの日常

ルミアお姉さんの元を離れて城にやってきてから2か月が経った。

朝日が昇ると共に目を覚まし、軽く寝ぐせを直してキッチンへ朝食を受け取りに行き、それを口にした。

ルミアお姉さんと暮らしている時、どうしてこんな風に隠れて暮らしているのかと聞いた事がある。


『私が他人と関わって、その結果傷ついて、嫌われてしまう事が怖かったの。私が原因で憎悪と嫌悪が連鎖して、私以外の白銀髪のエルフが嫌われて、迫害されてしまう事が、特に怖かった。それをはねのける勇気も、それでも尚他人と関わり続ける勇気も持ってなかった。だから私は、逃げたの』


その場の流れで城に来ちゃったけど、後悔はしていない。

私はあの時、おじさん達を助けたかったし、何より結果的にだけどお姉さんとは違う選択が出来た。

お姉さんが隠れて暮らさなくてもいいように、私が白銀髪のエルフに対するイメージを変えて見せる。

朝食のパンの最後の一切れを口に入れ、咀嚼する。

この2か月間色々な事があった。

ナナミラ様に電撃魔法を教えてもらったり、ジェイドさんに帝国でのあれこれを教えてもらったり、皇太子様おじさんが帝国研究所の所長を処罰する際の証言をしたりした。

この城での生活はとても新鮮で、毎日が楽しい。

そんな事を考えながら食べ終わった食器を戻した、その帰り、


「おはようございます!」

「お、おはようございます…」


城に来たばかりの頃は、みんな私の髪を怖がって話してもくれなかったけど、根気強く何度も挨拶し続けていたら、最近になって挨拶を返してくれるようになった。

まぁ、私が帝国魔法師の試験に合格したからというのもあると思うけど。

帝国魔法師試験はつい昨日に行われた。

試験は筆記と実技があり、筆記は余裕過ぎて試験時間残り半分くらいのところで終わってしまい、周りは年上の人ばかりにも関わらず堂々と寝させていただいた。

実技試験の形式はごく単純で、あらかじめ用意されたいくつかの目標物をそれぞれ指定された魔法で破壊するというものだった。

もちろん、目標物には耐性があり、一定以上の威力が無ければ破壊できない仕様となっていた。

が、正直これも簡単だった。

水魔法、炎魔法、風魔法…と順々にクリアしていき、最後、電撃魔法だけは少し不安だったけど無事合格することが出来た。

そして今、同日に帝国騎士の試験があったのにカイから何も聞いていないどころかあってすらない事を思い出し、カイの部屋へ向かっている。

コンコンコンと3回ノックして、中からの返事を待つ。

「どうぞ」と明らかにカイのものではない声で返事が来た。

私にはそれが誰か検討がついたので、特に気にすることなくドアを押し開けて中へ入る。


「おはようございます、ジェイドさん」

「おはようございますアマリア。カイに会いに来たのですか?」

「うん、まだ試験の結果聞いてなくて」

「そうですか、彼ならまだ訓練場に居ると思いますよ」


ジェイドさんにそう言われたので、お城にある訓練場に行ってみると、兵士や帝国騎士が朝の訓練をし終わってがらんとしている中、一人カイが剣を振るっていた。


「何してるの?」

「見たらわかるだろバカ」

「素人の私にわかる訳ないでしょバカ」


カイは年下の私が何でも理解できる天才なのが気に食わないらしく、いつもバカと罵ってくる。

それに対して私は、カイがただ先に生まれただけのバカなのでバカと呼んでいる。

何もおかしくはない。


「ねぇ、試験受かったの?」


私がそう聞くと、カイは剣を腰の鞘に納めて、


「お前はどうだったんだよ」

「もちろん受かったよ」

「…じゃあ言いたくない」

「落ちたんだ」


まぁ当然と言えば当然と言える。

私は元から魔法をルミアお姉さんから教えてもらっていたから合格できたけど、カイは2か月前から剣術を始めた初心者だ。

寧ろ、そんな奴が受かってしまうようなら帝国騎士の称号はあってないようなものだろう。


「…いや、一応合格はした。基準ギリギリで。ジェイドさんが言うには、ほぼ補欠みたいなモンだって…」


合格してた。

でも補欠って_


「あはは!それで凹んで訓練してたの?」


今までガキだのチビだのバカだの言われた分、思いっきり笑ってやった。


「何だよ、文句あんのか?」

「無いけど、らしくないなぁって」

「うるせーな、別にいいだろ」


そんな会話をした後、拗ねてその場に座り込んだカイの腹から大きな音が鳴った。


「朝ごはん食べてないの?」

「ああ、朝起きてからずっと訓練してたからな。今からキッチンに行っても、もう朝食の時間は終わってるし、元より昼まで我慢するつもりだ」

「ふーん。じゃあ私の実験台になってよ」

「は?どういうことだ?」


私は頭に?を浮かべているカイを背にして、訓練所を後にした。

城の廊下で仕事をしている使用人に挨拶を押し付けながら私がやってきたのは、キッチンだ。

扉をノックして、厨房の人に呼びかける。

少しして、中から料理長のパックさんが出てきた。


「あんたは確か皇女様のとこの…どうかしたのか?もう朝食なら終わったぞ」

「食材と厨房を貸してほしいの」

「そりゃまたどうして?」

「料理してみたい」


ルミアお姉さんと暮らしていた時はお姉さんが料理しているのを眺めていて、今更ながら私もやってみたくなったのだ。

今なら失敗しても、お腹を空かせたバカが1名いるので処理に困る事も無いし、丁度良い。


「そういう事なら自由に使ってもらって構わない。何なら、簡単な料理のレシピを書いてやろうか?」

「え、良いの?ありがと、パックさん」


これは予想外の収穫だ。

感覚で鍋に食材をぶち込もうと思っていたので、大変ありがたい。


〜季節野菜と高級豚肉のあっさりスープ〜

工程1 野菜と肉を一口大に切る。

工程2 油をひいて熱したフライパンに肉を入れ、さっと火を通す。

工程3 切った野菜も同様に火を通した後、水を適量入れ沸騰するまで煮込む。

工程4 煮立ったら塩胡椒で味をつけアシテル花の種をすり潰し、それで味を整える。

完成。


流石城の料理長。

もっと簡素な料理を教えてくれるのかと思ったら、めちゃくちゃ高級そうなものが出てきた。

そのレシピを片手に袖を捲り、厨房を十全に使うには身長が足りなかったので踏み台に登ってから、料理を始めた。


季節野菜の数々と肉を置き、包丁を持つ。

一口大…一口大ってどのくらいだ?

まぁ感覚でいっか。

そう思い、取り敢えず適当に食材を慣れない手つきで切った。

そして深めの鍋を用意して油を入れ、炎魔法の刻印に触れて熱した。

火力はもちろん感覚。

なんか油が跳ね始めたので、適当に切った肉を放り込み、その辺にあった炒めやすそうな棒を使って炒めた。

少しの間眺めていると、完全に肉の色が変わったので野菜を入れてもう一度炒めた。

この際、うっかり肉を焦がしてしまったような気がするが、気にしない事とする。

次の工程は水を入れる、か。

これは水魔法で適当に水を入れれば良いだろう。

味付け。

レシピと一緒にパックさんがそばに使う調味料を置いて行ってくれたので、感覚でそれらを振りかける。

最後にナントカの花の種?を、ちゃんとした道具を使うのが面倒なので強化魔法で強化した手で握り潰し、それをスープに放り込む。

すると、何だか少し良い匂いが漂ってきた。

よし、これで完成!


早速完成したスープを皿に取り分け、訓練所に居るカイの元へ持って行った。


「何これ」

「スープ」

「誰が作ったんだ?」

「私」


カイはそう聞くと、失礼な事に私のスープの受け取りを拒否してきたので無理矢理押しつけた。


「いいから食べて」

「わ、わかった」


カイは嫌々スープを口に運び、一口、また一口と食べ進めていった。


「ゲホッ_」

「ちょっと、人様が作った料理食べてる時に咳き込まないでよ。あまりにも私の料理が美味しいからせき込んだとかなら許すけど?」

「ちげーよ!お前これ肉焦げてて、めちゃくちゃ苦いんだけど!」


文句ばかり垂れるので私は炎魔法を構え、


「はぁ、大人しく私丹精込めて作った料理を拝領していれば良いものを…」

「ちょっと理解に時間がかかる言葉を使って俺の反論を封じようとしてくるのやめろ」

「はぁ、それで、元気出た?」


私には、カイの表情とか雰囲気とか、そういったものが少し明るくなったように感じられたのでそう質問した。

なのに…


「んなわけないだろ。元気が出たってよりも、未知の危機に体が無理矢理活性化させられたって感じだ」

「何、私の料理が危機と判断されるような毒物だって言いたいの?」

「そういう意味以外に聞こえたなら、自分で耳に治癒魔法かけた方がいいんじゃないか?」

「そんな事言うんだったら、もう料理作ってあげないから!」

「俺から料理を作ってくれなんて言った覚えはない」

「あー、もう!バカ!補欠バカ!」


私はなんだかとてもムカついたので、適当な捨て台詞を吐いて、自分の部屋に駆け込んだ。

ベッドに倒れ、枕に顔を埋める。

何、何なのアイツ!

人がせっかく作ってあげたのに人の料理を毒物扱いして!

ホントムカつく!

そんな調子で心のむしゃくしゃを発散すべく、ベッドの上で跳ねてみたり、枕に顔を埋めて思いっきり叫んでみたりしていると、ナナミラ様の護衛開始時間が迫ってきた。

部屋を出て、ナナミラ様の元へ向かおうとした時、料理に使った鍋をまだ片付けていない事に気が付いた。

そのままにしてたらパックさんに怒られる。

スープは後半分くらい残ってるし、どうしよう。

温めて自分で飲もうかな。

厨房の扉を開け、中へと入る。


「あれ?なんでだろ」


残っていたはずのスープが、鍋の中からキレイさっぱり無くなっていた。

ここに来た誰かが食べたのかな?

自分で食べる手間が省けたし、まぁいいや。

鍋を洗うため流しをふと見ると、食器が一つだけポツンと置かれていた。

他に洗うのはこれだけ?

それじゃあさっさと洗って…あ、そういえば、私帝国魔法師になったからもう魔法自由に使えるんだ。

普通に洗うの面倒だし、魔法使お。

私はそれらを洗浄魔法で綺麗に洗い、元々あったであろう場所に戻してから厨房を後にした。

ナナミラ様の部屋へ向かう途中、1名のバカと遭遇した。


「何でこんな所からカイと顔合わせなきゃいけないの?」

「それはこっちのセリフだ。できればお前とは仕事以外で顔を合わせたくないね」


互いにそんな事を言いながら同じ部屋を目指して歩みを進める。

カイと遭遇してから間もなくしてナナミラ様の執務室に到着した。

扉をノックする前に、さっきのイライラが段々蘇ってきたので、カイの背中をなんとなく叩いた。


「痛って、何すんだよ。スープが出てきちまうだろ」

「そんなにいっぱい食べてな_」


もしかして、残りのスープ全部食べたの、カイ?

他の人が勝手に食べて自分で食器を片付けた可能性だってあるし、ちょっと鎌をかけてみようかな。


「もう、そんなに美味しかったなら素直に言ってくれればいいのに」

「…ちげーよ、ただお腹が空いてただけだ」

「じゃあ残りのスープを食べた事は認めるんだ?」

「…うるせー、魔法バカ」

「ああっ、またバカって言った!そんなんじゃもう本当に料理作ってあげないから!バカバカバカバカバカバカバカ!補欠バカ!」


そうやって喧嘩していると、中から扉越しに「喧嘩してないで早く入ってきてください」とジェイドさんに怒られた。

大人しく喧嘩をやめて、一応ノックをしてから扉を開ける。

豪勢な装飾の部屋の中心で、ナナミラ様が何やら頭を抱えている。


「おはようございますナナミラ様。どうかされたのですか?」

「宣戦、布告です」

「はい?」


あまりの事に、聞き間違えたのかもと思い聞き返す。


「アイゼルド王国から、宣戦布告されました_」


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