皇女と2人の嫌われ者2
「は、初めまして…」
少女は少し怖がりつつも、しっかりと私の目を見て挨拶をした。
少女が怖がっているのは私というよりも、人が回りにいっぱいいるこの状況のように思えた。
私も反射で挨拶する。
「初めまして、私はナナミラ・イル・サイルです。お名前は?」
「…アマリア」
「アマリア、よろしくお願いしますね。それでお兄様、この子がどうかしたのですか?」
「…いや、お前が話して何も感じないなら良い」
過去にも一度、こういう事があった。
その事から察するに、この子の魂を見て欲しかったのだろう。
大丈夫。
この子の魂は綺麗な白_
大丈夫、だよね?
魔女の魂は白く、その行動は他人に害をなすものだった。
もしこの子もそうだったら…
「皇女様?」
お兄様が歩き出しても動かない私に、ジェイドが後ろから声をかける。
「ごめんなさい、ボーっとしてました。私達も行きましょう」
お兄様と互いの状況を話す前に、私達はとりあえず荷を解いて、ジェイドとカイ、軍医を残して解散した。
その後、いつもお兄様が使用している会議室へ向かった。
ドアをノックし、中へ入る。
「来たか」
会議室にはお兄様と護衛のハイルさん、その隣のイスにはアマリアがちょこんと座っていた。
私は初めての事でどうしたら良いのか分からず立ち尽くしているカイを隣に座らせ、近況報告を始める。
「ではとりあえず私から…」
私からは公務で国境を視察し感じた事と、取り決めた事を報告。
そして、カイを保護し、研究に協力してもらう事も報告した。
お兄様はカイが加護無しだと聞いた時は非常に驚いていたようだが、その後の私の方針を聞いてそれに賛成してくれた。
「偶然とはいえ今まで詳細が分かっていなかった加護無しについて明らかにする機会を得たんだ、しっかりやれよ」
「はい」
「カイ君も、よろしく頼むよ」
「ああ」
「次は俺からだな」
お兄様は手元の紙を見ながら、一つ一つそこに書かれた数字を読み上げていく。
「一般兵185名、帝国騎士13名」
「お兄様、それは?」
「今回の魔女討伐作戦で失った戦力だ」
お兄様は事細かに、一体何があったのか口にする。
「俺は今回、今読み上げた戦力に加えて、ハイルと傀儡2体を連れて行った_」
お兄様が言うには、作戦は順調に進んでいた。
が、騎士の傀儡と兵士で弱った魔女を叩く段階で予期せぬ事が起こった。
傀儡エファリア・フランローズの自爆。
その爆発はもう一体の傀儡を道連れにするに留まらず、辺り居た者全員を巻き込んだ。
「アマリアが守ってくれなければ、間違いなく俺もハイルも死んでいた」
「そうだったんですか…アマリア、ありがとうございます」
「ううん、感謝しないで、ナナミラさん。私は皇太子さんとハイルさん以外守れなかったんだから」
アマリアは守れなかった人達の事を重く引きずっているようだった。
そんな彼女の頭にぽんと手を置いて、ハイルさんは励ましの言葉をかける。
「確かに、守れなかった奴らは居た。だが、お嬢ちゃんは精一杯の力で俺や皇太子サマを守ってくれたじゃないか。だから、落ち込まないで、寧ろ誇ってくれ」
「…分かった。ありがと、ハイルおじさん」
その会話を終えた後、アマリアもカイと同様にうちで暮らす事に決まった。
そうして話題はアマリアとカイを王城に留める理由についてになった。
「アマリアとカイは、当初保護という名目で預かるつもりだったが、そうなると2人に多くの制限がかかってしまう」
「制限って、具体的には何なんだ?」
話の内容を理解するのに精一杯になっていたカイが、ようやく口を開いた。
「…例えば、城内での移動を制限されたり、監視役を付けられたりだな。それは俺としても不本意な事だ。2人は大切な客人である訳だし、そんな目には遭わせたくはない」
なんとなく髪をいじりながら考えていると、一つ良い案を思いついたので、口にしてみる。
「…では、アマリアは帝国魔法師に、カイには帝国騎士になってもらい、私の護衛にしてはどうでしょう。護衛は一人と定められている訳でもないですからね。そうすれば、私のそばにいなければならなくなりますが、何か制限を受ける事も無くなりますし、少しであれば融通も利きます」
「なるほど、確かにそれなら問題なく城で寝泊まりできますね。問題は2人が了承するかだが…」
「大丈夫」
「問題ない」
2人は即答した。
本当にそれでいいのかとも思ったが、2人にそれ以外の選択肢が辺り存在していないという事なのだろう。
「なってもらうとは言いましたが、私達に出来るのは試験にねじ込むくらいで、その試験にきちんと合格してもらう必要があります。アマリアはどのくらい魔法が出来ますか?」
「電撃魔法以外はできるよ」
帝国魔法師の合格条件は、基本と言われる炎魔法、水魔法、風魔法に加えて近代魔法学の基礎となっている電撃魔法を習得し、且つそれを十全に使いこなせる事。
合格条件に牽引魔法や浮遊魔法といった生活魔法と凍結魔法が入っていないのは、生活魔法は加護を持っているものなら誰でも簡単に習得できる魔法だから、凍結魔法は水魔法の延長線上にある魔法だからだそう。
岩石魔法に関しては、攻撃にしか向いておらず、応用が利きにくいからだそう。
術式を弄ればどうにかなりそうな気はしているが、その探求は研究者に任せるとしよう。
それにしても凄いな、この子は。
幼い頃から魔法を習ってきた私でさえ、まだ水魔法と治癒魔法を習得していないというのに。
アマリアのためにも彼女には帝国魔法師になってもらわないといけないし、電撃魔法を習得してもらう必要がある。
「それじゃあ、電撃魔法を習得するだけで問題無さそうですね。折角ですし、アマリアには私が電撃魔法を教えましょう。カイの方ですが、ジェイド、お願いしても構いませんか?」
「もちろんです」
帝国騎士の合格条件は、現役の帝国騎士から指導を受け、一定レベルの剣術を修めること。
あまりカイが加護無しであることはまだ広めたく無いし、事情を知っていて実力も申し分ない彼に頼むのが最善だろう。
その後の話し合いで2か月後の試験にねじ込む具体的な手筈について決めた後、一度休憩を取る事となった。
なんとなく勢いでアマリアには自分が教えると言ってしまったが、そんな暇あるのだろうか思い今後の予定を確認すると、昨今の情勢の影響で外に出向くような公務が軒並みなくなっていた。
アマリアに魔法を教えないといけないが、城でゆっくり出来そうだ。
やったね。
久々の休みに、スキップしながら廊下を移動していると、無情にも休憩が終了したとジェイドに言われたので、気持ちを入れ替えて会議室へと向かう。
カイとアマリアが来て、この城もにぎやかになりそうだ_




