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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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36/47

最期に出来る事

私は、誰かに命令されたからといって、誰かを殺すなんて御免だった。

だから、精一杯抗った。

それでも、体は本気で、あの白銀のエルフを殺そうとした。

その上で、負けた。

能力の有無は言い訳にならない。

魔法師としての実力で負けたのだ。

そしてその戦いの最中、割り込んできた子供を見て思い出した。

その姿が、かつての記憶と重なった。

どうして今まで忘れていたのか不思議なくらいだった。

ルミアだ。

私の体が殺そうとしていたのは、ルミアだったのだ。

私が帝都から逃亡し、エルフの森付近でひっそりと暮らしていた時に拾った、エルフの子供だ。


木の実を取りに森へ入った際、倒れているのをたまたま発見した。

その時代の生活水準でも考えられない、布を一枚体に巻いただけのような服装。

何より、その特徴的な白銀髪を見て、怖いと思った。

白銀髪のエルフは危険な魔女。

それが常識だったからだ。

でもそれ以上に、助けたいと思った。

だから彼女を連れ帰り、治療した。

彼女の内臓はボロボロで、どうして生きていられるのか不思議なくらいだった。

持って生まれた魔力量の多い者は体が丈夫だと聞くし、きっとそのおかげだったのだと思う。


『あ、あなた、誰?エルフ、じゃない』


彼女は怯えていた。

奇妙な事に、彼女は人間を知らなかった。

エルフの村と言えど人間の国の中にあるので、多少の交流はある。

普通に暮らしていれば知っていて当然のはずだ。

もっと奇妙なのは、彼女はどう見ても成人しているのに、語学力が一般的に子供と言われる程度のそれなのだ。

彼女に話を聞くと、相当辛い環境で育った事が分かった。

しかし彼女にはそれが当たり前で、どれだけ不当な扱いを受けたのか理解していないようだった。

折角なので、食べるタイミングを見失っていた魔獣の肉を使って料理をふるまった。


『きっとそれはね、”美味しい”って言うのよ』

『おいしい?』

『そう、美味しい。幸せの味よ』


美味しいと言ってもらえた。


『今、幸せ!』

『そう、良かった__』


私は一時の感情に身を任せ人を殺し、飢饉で多くの人を殺した、ただの人殺し。

誰かを幸せにすることなんてできないと思っていた。

だからその言葉を聞いて、思わず泣いてしまった。

子供の前で泣くなんてみっともないけれど、それ以上に嬉しく思うと同時に、魔女と呼ばれ忌み嫌われるこの子を、今だけは幸せにしてあげようと思った。


『名前が無いと不便だから、私が付けてもいいかしら?』

『名前…?』

『そう、名前。今日から貴方はルミアよ_』


この子は他の子と何も変わらない、普通の子。

だから私は、高貴でも、特別な意味を持つ名前でもない、普通の名前を付けた。

この子に普通の生活を送ってほしい。

その願いを込めて。


ルミアに核を砕かれたはずの私だが、まだ少しだけ意識がある。

少しずつ魔力が抜けていくのを感じるし、じきに意識も消えるだろうと思っていた時、何やら話し声が聞こえた。


「魔女、貴様を討伐する」


少し低めなどこか気品を感じる声だ。

階級の高い貴族の男性だろうか。


「貴方、それ本気で言っているの?その程度の数の兵士だけで私を殺せる訳ないでしょ?」

「万全の状態のあなたであれば、ね。エファリア・フランローズとの戦闘で相当魔力を消費したのではありませんか?」


男の言う通りだ。

ルミアの能力、術式加算は、一度の発動できる魔法の数を3つまで増やすというものだけれど、魔力も3倍消費する。

私との闘いで術式加算をかなり使っていたので、ルミアの魔力量的に残り3割といったところだろうか。


「貴方達なんて、魔力残量が少なくても余裕よ」

「強がるのをやめて、大人しく帝都まで来ていただけるのなら、減刑も検討致しますが…」

「する訳ないでしょ」


帝国とルミアは、何故だか敵対しているようだ。


「そちらの子供は、あなたの仲間ですか?」


男はルミアと協力していた若苗色の瞳の子供に言及した。

あの子と同じ白銀髪のエルフ。


「いいえ違うわ。白銀の髪を持って生まれたせいで家を追い出され、たまたまさっきの戦闘に巻き込まれてしまった、可哀そうな子供よ」


その子供は、何も言わなかった。


「そうですか。これは魔女しか攻撃しないようになっていますが、怪我をしたくないならもう少し離れる事をお勧めします」


男がそう言うと、その後ろから私が先ほどまで纏っていた不気味な死の魔力を感じた。

この気配、私と同じ…!


「それでは、お願いします」


どういった人物が現れたのか、私にはわからない。

けれど、それが歩む度に鳴る鎧が擦れる音。

それから分かる、それが騎士であろうという事。

通常、騎士と魔法使いの戦いが戦いと呼べる程度のものになる事はない。

間合いの違いから、一方的な蹂躙になる場合がほとんどだからだ。

だがそれは、距離が離れていればの話。

今、ルミアとそれはそれほど離れていない。

ルミアが魔法を放つよりも速く、騎士が攻撃できる間合いだ。


「また、誰かを無理やり操っているの?よくそんな事が出来るわね」

「…諸事情であなたに戦力を割けない今、仕方のない事なのですよ。やりたくてやっている訳ではありません。ただ、それが国家という集団を治める上で追わなければいけない罪ですから」

「…しっかり子孫ね、貴方」


ルミアが皮肉っぽくそう言うと、騎士から鞘から剣を抜く音がした。

あの子の残りの魔力量的に、あの子自身はギリギリ守れるかもしれないけど、隣の子は無理ね。

こうなってしまったのは私のせい。

だから最後は、あの子の師匠として良いところを見せるとしましょうか。

男は端的に「やれ」と命令を下した。


【牽引魔法  反転 生体牽引】


私は自分をその騎士の元へ引っ張り、それに纏わりついた。

牽引魔法は引っ張るための基準と対象を入れ替える事が出来る。

だからこうやって、自分を相手の元へ引っ張る事が出来る。

これを教える前に私は死んでしまった。

これが、貴方に唯一教えられなかった技術。

見て、学んでくれたかしら?


「師匠!」


もう何も見えていないから、最後に貴方の顔が見れないのが少し残念。


【炎魔法 物体爆破ファイアブレイク


この魔法は本来、炭鉱夫などが採掘の為に使う、対象を爆破する魔法。

その対象は、物体に限られる。

が、今の私の肉体は、人工的に作られた人形。

この魔法の対象とすることができ、疑似的な自爆魔法として運用できる_

さようなら、ルミア。

貴方が今何を目的に何をしようとしているのか分からないけれど、頑張ってね_


エファリア・フランローズの意識は、ここで途切れた。

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