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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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35/47

師匠

師匠の容姿に師匠の魔力。

ただ、同時に纏っている死の魔力と、時折服が風で捲れて見える球体関節が不気味な雰囲気を漂わせていた。

目の前にいる物は、本当に師匠なのだろうか。

師匠はとうの昔に死んでいる。

墓を作って埋葬もした。

それから400年程経った今、師匠が生きている訳がない。

おそらく、私の知らない傀儡魔法の一種だろう。

あれの中身は確実に師匠だと思う。

けど、その押し込められている体は師匠のものではない。

時折見える球体関節からして、人形か何かに師匠の肉体の情報を降ろす、またはそれに近い効果の魔法を使用したのだろう。

じゃあ、一体誰か?

何のために?

彼女からは明らかな敵意を感じる。

つまり一番可能性があるのは_

あまりの出来事に、つい考え込んでしまっていると、師匠が魔力を術式に充填する気配を感じ取った。

魔法が来る_


【風魔法 風刃】


術式が展開され、風の刃がそこから放たれる。

速度はそれほど速くない。

容易に回避でき_ない!

私の後ろの小屋にはアマリアが居る。

私が避けてしまえばアマリアが危ない!


【防御魔法 対風魔法結界アンチウインド


風の防御魔法を展開し、師匠が放った魔法を防いだ。

次の攻撃が来ないので、少し歩いて師匠の攻撃範囲から小屋を外した。

一応アマリアには不気味な気配を感じ取った時点で小屋から出るなと言ってあるので、これでひとまずは安心だ。

正直、何が起きているのかまだ理解出来ていない。

分かっているのは、師匠と思われるものが私を殺そうとしている事くらいだ。

私を攻撃したのが師匠の意思であろうがなかろうが、今の私には絶対に達成しなければならない事がある。

師匠を超えて、私は生きる。


【術式加算 風魔法 風弾×3】

【防御魔法 対風魔法結界】


私がその魔法を展開してすぐ、師匠は圧倒的な速度で術式を展開し、対風魔法結界を発動した。

が、私は構わず魔法を放った。

防御魔法は、その結界に触れた魔法を打ち消す魔法。

その効果は一つの結界につき一つの魔法まで。

つまり、師匠が防げるのは一つだけだ。

私の魔法は2つ目で師匠の結界を破壊し、3つ目が命中し小屋から離す事に成功した。

このくらい離れていれば、大規模な魔法を使っても問題ないはずだ。

師匠は吹き飛びながらも魔法の準備をしている。

魔法の発動速度は私より師匠の方が上。

師匠は能力を持っていない。

それは彼女の磨き上げられた技術によるものだ。

初撃を受けた感触からして、おそらく師匠は全盛期じゃない。

というよりも、当時の感がまだ戻っていないように思えた。

つまり、発動速度で押されない限り、私にも十分勝機はある。

私がやるべき事はただ一つ、私の得意を押し付ける。


【術式加算 水魔法 流水圧線ウォータープレッシャー×3】


限界まで圧力を高めた水を一直線状に放出する、水魔法の中でも特に殺傷能力に秀でた魔法。

それを避けられないようにそれぞれ別の方向から薙ぐように師匠へ向けて放った。


【強化魔法 全身強化】


師匠はそれに対して、防御魔法では防ぎきれないと判断し自身に強化魔法をかけ、魔法と魔法との間をすり抜けようと試みた。

が、通り抜け切る寸前で私の魔法に当たってしまい、右腕が切り落とされた。

よし、行ける。


【風魔法 風刃】


そうやって油断した瞬間、風刃が師匠から放たれた。

強化魔法を使ったばかりなのに、いくら何でも次の魔法発動までが短すぎる。


【風魔法 風弾】


私は咄嗟に発動が簡単な風弾を放った直後に、それに込められた風を開放する事で自分を吹き飛ばし、風刃を回避した。

飛行魔法を使い、すぐさま空中で体勢を立てなおす。

木々の葉で彼女の位置が視認出来なかったので、それを解除して着地した。

師匠は腕が切り落とされたで宿されている人形のバランスが崩れたのから、少しフラフラしている。

チャンスだと思い、追撃の魔法を放とうとした時、師匠が纏っていた死の魔力が黒い手のようになって伸び、切り落とされた右腕を拾って無理矢理くっつけた。

死の魔力は纏っている者の肉体を修復し、生物の魂を追い求め続ける。

だから腐肉体ゾンビは死の魔力を宿している心臓を破壊しない限り動き続けるし、私達生者をその魂を狙って襲う。

もし仮に、師匠もその腐肉体と同じ状態にあるのなら、心臓の位置にその代わりとなる物があるはず。

やる事は決まった。

後はそれを何とかして実行するだけだ。


【術式加算 風魔法 風刃×3】

【風魔法 風刃】


風刃を1つずつ時間差をつけて放つ。

始めの2つは回避され、最後の1つは同じ魔法で相殺された。

それにより風が巻き起こされ、砂埃が舞った。

思わず目に入らないよう、目を閉じてしまった。

その数秒で、師匠は次の魔法を発動する。


【水魔法 水牢ウォータープリズン

彼女の背後から大量の水が生成され、私を足元からすくうようにして閉じ込めた。

水魔法水牢ウォータープリズン

閉じ込める事に長けており、中に閉じ込められた者を溺死させる。

不意をつかれたせいで、水を飲みこんでしまった。


「あ゛、らが、な゛い」


閉じ込められてから2秒後、慣れない浮遊感と息苦しさ。

閉じ込められてから5秒後、息苦しさが増して、頭が段々回らなくなってきた。

閉じ込められてから10秒後、息苦しさはどこかへ行って、代わりに意識が朦朧として、今にも気絶してしまいそうだ。

マズイ、このままじゃ、溺れ死ぬ_


【術式強化 風魔法 風弾】


水牢の前でただ私を見つめていた師匠に、通常のものより数段大きい風弾が直撃した。

その衝撃で師匠は魔法を維持する事が出来なくなり、水牢は解除された。

ギリギリ意識を保てていた私は飲み込んでしまった水を吐き出し、地面に手をつきながら大きく息を吸った。


「お姉さん!」


師匠に魔法を放ったのは、アマリアだった。


「小屋を出ちゃいけないって、言ったでしょ」


咳き込みながら、言い付けを守らなかった事を怒った。


「でもだって、ルミアお姉さんが危なかったから…」


アマリアは少し落ち込んだみたいだが、反省する気はないようだ。

戦闘に集中するあまり気付いてなかったが、小屋からは1kmくらい離れてしまっている。

この子はやっぱり天才だ。

あの小屋から探知魔法でここに居る私が危ない事を把握できるなんて。


「アマリア、ここに来てしまった以上、貴方にも手伝ってもらうから」

「何をすれば良い?」

「あの人形を、濡らして欲しいの_」


アマリアに丁度作戦を説明し終えると、強化された風弾を喰らって遠くまで飛ばされていた師匠が戻ってきた。

それわ見てすぐアマリアはそばの低木に身を隠し、移動を開始した。

強化された風弾を受けたと思われる右腕は、関節部分が少し壊れていた。

アマリアの魔法でもあの程度のダメージなら、これしかない。

師匠程の人なら低木に隠れた程度で見逃す訳がない。

私の方だけを見ているという事は、やはり操り主に私を殺せとでも命令されているのだろう。


【術式加算 岩石魔法 岩石散弾ロックバレット×3】

【防御魔法 対岩石魔法結界アンチロック


私はそれらを一斉に放ち、師匠は対岩石魔法結界でそれらを防いだ。

岩石散弾。

生成した岩石を細かく砕き、正面に放つ、初心者が最初に習得する簡単な魔法。

私がこれを選択した理由は1つ。

あまりに広範囲すぎて、防がざるを得ないから。

発動された対応結界は、その対応している魔法属性にしか効果は無い。

つまり今、師匠は岩石魔法以外には無防備な状態。


【術式強化 水魔法 水弾ウォーターショット


一際大きな意味水の塊が、勢いよく師匠に衝突した。

それを喰らって転倒した師匠は、ずぶ濡れだ。

チャンスだ。

今から放つ魔法は、私もつい最近まで知らなかった魔法。

通りすがりの皇女に出会わなければ、ずっと知らないままだったかもしれない魔法_


【電撃魔法 電撃弾プラズマショット


その魔法は見事に命中し、ダメージをほとんど与えられてはいないがその代わり、それを痺れさせた。

400年前に死んだ貴方が、この魔法の対応結界を使える訳がない!

痺れた師匠は、動きを鈍らせている。

至近距離で、最大威力の物理攻撃_


【牽引魔法 生体牽引】


この魔法、師匠のとっておきでしたっけ。

私はその魔法で痺れている師匠を、胴体を曝け出させるような形で引っ張った。

師匠、どんな奴に、どんな理由でこんな人形に宿されたのかは分かりません。

けど、


「師匠に会えて、嬉しかったです」


【術式加算 強化魔法 部分強化 右腕×3】


最大限に強化した腕で、その胴体を思いっきり殴った。

胴体の装甲は割れ、内臓されていた核が砕け散る。

その瞬間、微かに聞こえた気がした。


「ごめんね。ありがとう_」


核が無くなった影響で残った人形から死の魔力が全て抜けて、その活動を停止した。

達成感からか若干興奮気味でアマリアが駆け寄ってくる。


「やった、やったね!ルミアお姉さん!」

「…ええ、そうね」


何だか複雑な気持ちだ。

倒せて嬉しい、生き延びれてよかったと思っているが、その反面師匠にこんな事をした奴に対して怒りも覚えている。

腹立たしい。


「お姉さん、誰か来る」


アマリアの言葉が、私を一気に現実へ引き戻した。


【探知魔法 生体探知】


探知魔法を展開しながら目を凝らし、反応のある方を見る。

陣形を組みながら近づいて来ている…?

これは、人間の兵士__?




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