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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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33/47

帝国の為に

今、この男は、何と言った?

死人を蘇らせて魔女にぶつける?


「それは本当に可能なのか?」

「ええ、私の隣におりますこの男が可能にしました」


そんな非人道的な魔法、流石に何かの冗談だと思いたいが、どうやら本当らしい。

眼鏡をかけたその男の隣に居る華奢な男は、俯きながらぶつぶつと呟くように話を始める。


「あ、その、僕が発見した魔法は、傀儡魔法の一種でして、魂そのものに干渉するものではなく、死した肉体に刻まれた情報をですね_」


男はギリギリ聞き取れない速さと小ささで魔法の詳細な情報?を話している。

本当にそれを話しているかは分からない。

聞き取れないからね、仕方ない。

お兄様も私と同じだったようで、彼によりハッキリ喋るよう促した。

そうしても華奢な男はもじもじしてばかりだったので、眼鏡の男がしびれを切らしたようで、


「すみませんねぇ、こいつは天才なんですが同じくらい口下手なんですよ。代わりに私が説明いたします。20年程前に発見されました腐肉体ゾンビなどが身に纏う死の魔力ついて調査していたところ、副産物として発見されたのが提言させていただいた策で使用する、傀儡魔法、死者操作ネクロマンスでございます」


ライルの説明によると、その魔法を使用する事の出来る人物は、今現在生きている多くの知性を持った生物に記憶されている事。

分かりやすい例を挙げるなら、歴史上の人物などだろう。

これはライルらが部屋に入って来た時に話していた事だ。

そして条件はもう一つあるらしい。


「対象となる人物が死した場所、または埋葬された場所でしか、傀儡魔法は発動できません。ですがご安心を!私どもはすでに、エファリア・フランローズ、初代帝国筆頭騎士の墓を発見しております。ので、後は陛下のご命令一つで実行できる状態にあります」


ライルが魔法について説明し終わると、お兄様が質問した。


「一応聞くが、それの実行にいくらかかる?」

「そうですね…魔法を発動する魔法師4人の人件費、加えてエファリア・フランローズの墓に移動する為の旅費、肉体の情報を降ろす為の人形の製作費くらいでしょうか。初代帝国筆頭騎士の墓については帝都の大衆墓地にございますので、こちらの旅費は必要ありませんし」


エファリア・フランローズは、当時の皇族を殺害し、大飢饉による被害の拡大の原因を作った歴史的犯罪者。

帝国筆頭魔法師だったそうなので、その実力も折り紙付きだと言える。

初代帝国筆頭騎士も相当な実力差で、教科書にはドラゴンと1戦交えて生き残ったと記載があるほどだ。

こちらもかなり実力者だ。

非人道的である事に目を瞑れば、帝国にとって最低限の費用で実行できる有効な対抗策だろう。

非人道的である事に目を瞑れば、か。

そこが一番大事な所なのに、目を瞑れる訳が無い。


「私は、この案の実行に反対です。いくら対象が歴史的犯罪者だからといって、そんな行為が許されてはいけません」

「私も、ナナミラと同様の理由で反対です。それに、近頃の貴様らは怪しすぎる」


私の言葉に続いて、お兄様も反対した。


「ライル所長、その操った人物を、どうやって魔女と戦わせる気だ?戦わせて、何の得がある?」


お父様はどうやら、彼らの話をしっかり聞いてから判断したいようだ。


「この城に残った魔力の痕跡を使います。傀儡にその魔力の持ち主を探し出し、抹殺せよと命令を下します。そしてエファリア・フランローズを少し離れた位置から尾行するのです。魔女との戦闘が確認でき次第、魔女の討伐、または遺体の確認を行う、というのが、魔女がどこに潜んでいるか分からない今、一番有効な運用方法でしょう。傀儡魔法の持続時間はおおよそ1週間ですが、彼女程の実力者であれば見つけ出せるはずです。今現在、斥候による北の大陸入り口付近の調査では、未だ魔女の軍勢は確認出来ていないと聞きます。その場合、その軍勢は魔女の魔力により操られる、または作り出される物である可能性がある。その場合に備え、一般的に魔力の全快には4日程かかる事を考え、2週間後にエファリア・フランローズを放ち、魔力を使わせる事で戦争開始時刻の遅延、また、戦争を我が軍の優位で開始する事を目標に行うものであります」


ライルが返答し終えると、お父様は再び何かを考え始めた。

今、反対しているのは私とお兄様。

けどこの意見は、お父様が実行すると言えば簡単に覆ってしまう。

そのせいかお父様が口を開くまで、妙に緊張した。


「ライル、すぐ実行に移せるよう準備をしておけ」

「わかりました!それでは、準備してまいります」


ライルはそう言うと、早々に華奢な男も連れて立ち去ってしまった。


「お父様、どうして許可なされたのですか⁉」


私は強く、お父様に抗議した。

お兄様は黙ったまま、私とお父様のやり取りをただ聞いている。

「まだ側近以外の誰にも言っていなかった事なのだが」とお父様は切り出す。


「…アイゼルド王国が、兵を集め始めた」

「それは、つまり…」

「軍を集めた我々の動きに警戒してのものかもしれないが、それにしては物々しすぎる。おそらく奴らは、戦争を仕掛ける気だ」


前々から隣国のアイゼルド王国とは、国境付近の資源をめぐって何度か問題が起きている。

それでも、戦争をするほどでは無かった。


「彼らは、魔女に戦力が割かれているのを利用して、資源のある地域を奪い取るつもりなのでしょうか?」

「分からない。だが、奴らが本当に戦争をする気ではないにしても、国境警備を強化しなければならない以上、魔女に戦力を割く事が難しい。だから、あの案の実行許可をだしたのだ」


お父様が許可したのは、私が思っていたよりも帝国が危機的状況にあったからだった。

国の為なら、非人道的な事もするべきなの?

私にはそれが良い事だとは到底思えない。

でも、帝国民を確実に守るためには、それをやらないといけない。

これが、国を治めるという事なのだろうか。


「すまない。少し、休ませてもらないだろうか」


お父様は体調がまた悪くなったらしく、そう申し出た。

私とお兄様は騎士を連れてすぐに部屋を出た。

護衛の騎士が扉を締め切ったところで、


「ナナミラ、今後の役割を決めておきたい。時間はあるか?」

「はい、大丈夫です」


お兄様と話し合った結果、お兄様は魔女の件を、私はアイゼルド王国の件を担当する事になった。

理由としては、幼い頃から帝国内を飛び回っていた私は国内の貴族と強いつながりがあり、アイゼルド王国と領地が接している貴族と連携がスムーズに行えるからだ。

お兄様は国外に使節団の長としてよく仲の良い他国に派遣されていたため、私程国内の人脈は広くないのに加えて、また魔女と遭遇した際、私が取り乱さないとも限らないので、こういう役割分担になった。

お兄様に負担のかかる仕事ばかりを任せてしまっている気がする。

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「皇女様、これからどうなさるのですか?」


お兄様と別れた後、城の廊下でジェイドにそう質問された。


「私が担当するのはアイゼルド王国の件なので、とりあえず軍の編成の見直しと、帝都からどのくらい兵をそちらに回すか検討します」

「了解しました!軍の詳細な編成状況や具体的な兵士数を軍の運営部に算出するよう伝えておきます」

「お願いします」


正直、少しモヤモヤしているが、今目の前の仕事に集中しなければ多くの帝国民が死んでしまうかもしれない。

そのモヤモヤにはもう少しそのままで居てもらおう。

ふぅ、ここが踏ん張りどころだ。

がんばれ、私。


ーーー

【傀儡魔法 死者操作ネクロマンス


「やあやあ、お目覚めかな?」


ここは、どこ?

いや、そもそも、私は死んだはず。

私は、私は…

私は誰だ?

なんだか頭がぼんやりしていて、全身の感覚が無い。

目の前に立っている胡散臭そうな男ですら、ぼんやりと位置が分かる程度だ。

視界もぼやけている。


「成功したのか?」

「ええ、成功です、皇太子様」


感覚は無いのに、頭が痛い。

時間が経つにつれ、段々と視界はハッキリとしてきた。

目の前の胡散臭い男は、私に向けて一つ、魔力は封じられた試験管を突き出した。


「命令だ。この魔力の持ち主を見つけ出し、殺せ、エファリア・フランローズ_」


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