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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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アマリア

間違いない、この子も、魔女だ。

驚いている私を見て、少女は少し不安そうな表情をする。


「え、ええ、同じよ。だから、心配しないで」

「ほんとに?」

「本当よ」


少女を安心させる為に屈んで目線を合わせ、彼女の手を両手で握った。

最初は彼女を検問所の騎士が気付けるくらいの位置に置いて去ろうかと思っていたけど、彼女が私と同じ、白銀の髪のエルフなら話が変わってくる。

森を出て開けた平原に出た所で彼女と私はフードと帽子を被り、頭部を隠してから話を始めた。


「それで、貴方は何処から来たの?」

「分からない。でも、ここよりも南だと思う」

「ここよりも南…エルフの村かしら」

「村、じゃないと思う。小さな家ひとつで、パパとママと暮らしてたから」


両親と3人だけで暮らしていたという事だろうか。

と、なると南方にある村から出て暮らす、はぐれエルフなのだろう。

平原にポツリとある少し出っ張った岩の陰に移動して、彼女がどうやってここに来る事になったのか質問した。


「えっと、私の13歳の誕生日に、ママに言われたの。村に戻れって言われたからもう限界、出て行ってって」


少女自身もまだ困惑しているのか、話の時系列が少しあべこべだった。

彼女の両親は村に戻れとの命令を受けたらしく、彼女を隠れて育てる事が出来なくなった。

ので、彼女に必要最低限の者を持たせ、家から追い出したらしい。

それから彼女は北に行けば都市があるという両親からの情報を元に、こちらへ歩いて来たという。


「パパとママ、多分私の事あんまり好きじゃなかったんだ。この髪も、隠しにくいからって長く伸ばさせてくれなかったし」


少女の髪が肩の辺りまでしかないのは、そういう理由らしい。


「貴方、これから帝都に行くつもりなの?」

「うん、そこに行けばなんとかなるかもしれないから」

「やめておきなさい」

「どうして?」

「その髪を隠して都市で生活するのは、無理よ。それに、私のせいできっと白銀髪のエルフに対しては風当りが強いから」

「…分かった」


少女は特に聞き返すでもなくそう答えると、俯いて動かなくなってしまった。

彼女には、困ると一人で考え込む癖でもあるのだろうか。

この間に私も少し考えよう。

彼女を帝都に送る事は出来ない。

だからといってここで放っておくこともできない。

帝都に送れなくなったのが私のせいだからなのか、この子の面倒を見なければという気が起こっている。

責任感なのか、はたまた同族意識か。

どちらでもいい。

私は運が良かったから師匠と出会えて、色々な事を教えてもらった。

今度は、私がそれをしてあげる番だ。


「行く所が無いなら、私の家に来る?」

「…良いの?」

「ええ、もちろん」


この子は一旦、帝国と争う事になった際の拠点として活用するつもりだった中央大陸の北端に建てた小屋で暮らしてもらおう。


「私の家、少し遠い所にあるのだけど、まだ歩けそう?」

「遠いのは、無理かも」


少女は岩にもたれかかりながら怪我をした足をさする。

ここは帝都の北部にある平原。

私は乗合馬車などは使えないし、今から歩いて向かうとなると大体2日か。

私は強化魔法が使えるから何とか歩けるけど、それが使えない怪我をしている少女が歩けというのは酷というものだ。


「それじゃあ、今から見る事は内緒ね」

「内緒…?」


私は少女に浮遊魔法を付与し、彼女を強化魔法で強化した腕でしっかり抱え、飛行魔法で飛び立った。


「わぁ、すごい!」


少女は防止が飛ばないようしっかり押さえながらも、この空を飛ぶという体験を楽しんでいるようだった。

陸路では2日かかる距離にあった私の拠点だが、飛行魔法を使用すれば地形を無視して進む事が出来るのに加えて、速度もかなりのものなので日が沈む頃には到着した。

拠点は帝都と争いになった際に使うため建てられただけあって、生活できそうなのはポツンと経っている小屋しかない。

周囲にはホワイトベアやスノーラビットが一時的に住めそうな洞窟を大量に生成したので、少ししかスペースが確保できなかったのだ。

中には最低限生活するための家具や生活用品が用意してある。

この子が暮らすのには不自由無いだろう。


「ここが、お姉さんの家?」

「ええ、そうよ。ここにある物は自由に使っていいから」


少女は小屋の中を物色している。

初めて来る他人の家というものに興味深々のようだ。

夕食を食べるか聞こうとした時、そういえばまだ彼女の名前を聞いていない事に気付いた。


「ねえ、お名前教えてくれる?」

「…アマリア」

「そう、アマリア…私はルミア、よろしくね」

「うん」


アマリアは帽子を外すついでに顔を隠しながら相槌を打った。

まだ目を合わせて話すのは少し恥ずかしいらしい。

かく言う私も他人と会話するのは得意じゃないので、彼女の気持ちは理解できる。

まだそんなに仲良くない人と話すのは、難しいよね。


「それじゃあ日も暮れた事だし、夕食にしましょうか」


この小屋にはあまり食料を置いていない。

元々は私一人が使っても数日だろうと思っていたからだ。

少ないが、それら全てを使えば二人分の夕食を作る事はできる。

アマリアもお腹が空いているようだし、量は多い方がいいだろう。

蓄えていたのは少しの肉とここらで取れる山菜。

私は肉をしっかり、山菜を軽く炒め、塩で味付けした。

これを今日の朝帝都のパン屋で買ったパンと合わせれば、完成。


「ルミアお姉さん、何、これ?」

「うーん、そうね。肉と山菜のサンドイッチかしら。パンの種類は本来の物とは違うけれどね」


私はこれに近しい食べ物をサンドイッチしか知らないのでそう名付けたが、このパンの本来想定される食べ方をしていないので、サンドイッチではないと思う。

まぁ名前なんてわかりやすければ良いのだ。

誰が気にする訳でもないし。

私もアマリアも食べ終わった所で、まだ3週間後に城に送る使いの準備が出来ていない事を思い出した。


「アマリア、私は今から少し用事があるから、先に寝ていてね」

「待って!」


用がある事を告げて小屋を出ようとした私を、アマリアは私の服を掴んで引き留めた。


「待って、一人にしないで…」


弱々しく発せられたその言葉は、彼女が何かに怯えていることを示していた。

この子は、一人になるのが怖いのだろうか。

口先では両親は私の事好きじゃないと言っていたが、アマリアは両親の事が好きだったのだろう。

彼女はまだ13歳なんだ。

そんな人たちに、ましてや肉親にいきなり追い出されたら、トラウマになるに決まっている。

この子は私と違って中途半端に愛されて育っているようだし、当時の私より知識があって自分以外の事も良く分かる。

だから余計に、1人になるのが怖いのだろう。

私はアマリアの頭をそっと撫で、


「大丈夫よ、どこかに行ってしまったりしないから」

「ほんとに?」

「…分かったわ。今日はこのまま一緒に寝ましょう。用事に行くのもやめておくから」


つぶらな瞳の圧力に負ける形で、私はその晩アマリアと同じベッドに入った。

私は椅子で寝るつもりだったのだが、アマリアがどうしてもと言うのでそうなったのだ。

アマリアはやっと落ち着けて安心したのか、5分もしない内に寝てしまった。

ベッドはいつもより狭かったけど、いつもの何倍も心地よく感じる。

こっそりベッドを抜けて家に戻る事も考えた。

でも、急がないといけない訳でもないし、それはやめておいた。

アマリアの頭をそっと撫でて目を閉じる。

今までに感じたことの無い温かさを感じながら、私は眠りに落ちた。



3週間後。

私は小屋の中で使いの魔鳥と視覚を共有する為の通信魔法の確認をしていた。


「ルミアお姉さん!魔法教えて!」

「はいはい、これが終わったらね」


アマリアと3週間暮らして分かった事がある。

彼女は、天才だ。

それも、私が霞んでしまう程の。

私がアマリアに魔法を教え始めたのは2週間半くらい前、この小屋でくらし始めてから3日経った頃だ。

彼女は何一つ自衛の手段を持っていなかったので、魔法を習得しては?と勧めたのだ。

私としては魔法の基礎と初級レベルの魔法を習得出来れば上出来だろうと思っていた。

しかしアマリアはそれを上回る速度で上達し、今では中級レベルの魔法に加えて、まだ持続時間は短いものの飛行魔法まで習得した。

その要因は、彼女が同年代の子に比べて賢いからだろう。

私が普通に難しい単語や理論を用いて説明しても、アマリアはそれを難なく理解できる。

そのおかげで、もう私が教えられる事が無くなってしまいそうだ。

魔力量に関してはまだ体が成長しきっていないので私より少ないが、成人する頃には私と同程度か私よりも多くなっているだろう。


「ルミアお姉さん。今日はどんな魔法?」


使いの魔鳥と繋がり確立し終えたので、小屋の外に出て、アマリアに一つの魔法術式を見せる。


「今日はこれ」

「これは、何?」

「何だと思う?術式を読み解いて、考えてみて」

「うーん、何かを引っ張る魔法?」

「正解」


今日アマリアに教えるのは牽引魔法。

師匠に教えてもらった生物を対象としたものではなく、普通の物体を引っ張る魔法だ。


「これを覚えておけば、何かと便利よ。とりあえず、あそこにある大きな岩をこの魔法で動かしてみて」

「わかった」


アマリアは教えたばかりの術式に魔力を流し込み、魔法を発動した。

岩は、びくともしなかった。


「流し込んだ魔力の量が少ないわ。もう少し増やしてみて。それじゃあ、私は小屋の中でやらなきゃいけない事があるから」


そう言って小屋の扉に手をかける。

中へ入る前に「能力は使っちゃダメだからね」と念押ししておく。

魔法を教えている際、アマリアにも能力がある事が判明した。

魔法を習得しなければ意味を成さない、私と同じ系統の能力。

術式強化。

魔法の効果や攻撃力を増大させるというシンプルな能力。

使い勝手の良い能力で、それがあると判明した時は羨ましいと思ったものだ。

私の術式加算は3つまで魔法を同時に発動出来るが、その分制御が難しい。

魔力の消費も3倍。

それに比べて、アマリアの術式強化はそういったデメリットが無い。

魔力の消費量が増えることなく使えるのだ。

羨ましい。

それに、アマリアはとてもいい子で、暮らし始めた当初は多少のわがままを言われるんだろうなと覚悟していたのだが、アマリアに年相応のわがままを言われたことが無い。

相手の心境や状況をくみ取る力が高いからなのか、ただ単に無欲なのか、理由は良く分からないが、私としてはそれはそれで心配というものだ。

私がちゃんと育ててもらった事が無いから、接し方もこれであっているのかわからない。

アマリアに窮屈な思いをさせていなければいいんだけど。

小屋の中に設置してある水晶に触れ、使いとの繋がりを確立する。

それを操作し、帝都へ向かわせる。

あの契約についての返事は今日。

出した結論を聞かせてもらおう__




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