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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
終章

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遭遇

城を襲撃して契約書を突き付けた後、飛行魔法で空を飛び、私は帝都の西側にある森に逃げ込んだ。

この森は都市の近くにあるとは思えないほど不気味で、魔獣も探知魔法の範囲内だけでもかなりの数が居ることが分かる。

森の木の幹にもたれかかって、深呼吸する。

あの路地で出会った少女が皇女だったのは少し驚いた。

世の中は以外と狭いらしい。

それと、どうせあんな要求受け入れられないと思って少し高圧的な態度を取ったけど、うまく出来ていただろうか。

…こんな事気にしたってしょうがない。

とりあえず、目的は達成した。

早く帰って使いの魔獣を送る準備でもしよう。

そう思って再び飛び立とうとした時、発動していた探知魔法に一つ、人類種の反応を検知した。

それの後ろから、魔獣が来ているようなので、魔獣に追いかけられているのだろう。

…これからたくさんの人間を殺すんだ、ここで一人救ったところで、私が犯す罪の大きさは変わらない。

…でも、私の心はこれを見過ごす罪悪感にはきっと耐えられない。

耐えられる気がしない。

私は自身に強化魔法をかけて反応のあるほうへ駆け出した。

付近の魔獣を探知魔法を頼りに回避しつつ、その反応にたどり着いた。

人影が見えた時点で術式に魔力を込め始める。


【風魔法 風刃】


魔法を頭上で待機させ、人影を今にも襲おうとしている魔獣が見えた瞬間、それを放った。

魔法によってその4足型の魔獣の首を刎ねることに成功した。

襲われていたのは、まだ幼い少女だった。

頭よりも明らかに大きいサイズの帽子をかぶっているのが、少し気になる。


「…大丈夫?」

「こないで!」


私が声をかけると、そう言ってその少女は木の陰に隠れてしまった。

木の幹に隠れ切らず見えてしまっている少女の片足は、地面に滴り落ちる程の量の血を流している。

魔獣から逃げる時に怪我でもしたのだろうか。


「怪我してるじゃない。治してあげるから、こっちに来て」


少女に怖がられないよう、できるだけ優しく話しかける。


「お姉さんは、私を怖がらない?」


少女は、木の幹からその若苗色の瞳を覗かせる。


「ええ、怖がらないわ、絶対に」


彼女が他人に怖がられる存在にはとても見えない。

それに、どちらかと言えば私は、怖がられる側だ。

少女は恐る恐る私の前に片足を引きずりながらやってきて、怪我をした部分を見せた。


「さっき怖いまじゅう?に襲われた時に転んじゃったの」

「そう、分かったわ。治すから動かないでね」


少女をよく観察しながら、治癒魔法によって彼女の体力を消耗しすぎないよう注意を払いながら怪我を治療する。

魔獣から逃げていたせいか少女の体力はすぐに無くなってしまい、怪我は半分程度しか治す事が出来なかった。


「ごめんなさい、今これ以上は怪我を治せないわ。歩ける?」


少女はゆっくり足を動かして、小さな声で「うん」と答えた。

それと同時に伸ばした私の手を握った。

探知魔法を頼りに付近の魔獣を避けながら、とりあえず森を出る事をめざして歩く。

この子はどうしたのだろうか。

こんな危険な森の中で一人なんて。

少しずつ、子供に対する口調が分かってきた。


「お父さんとか、お母さんはどこ?」

「…私を追いだした」


少女は、私の手を強く握った。

追い出された、か。


「それじゃあ、どこで寝ていたの?」

「木の上」


更に話を聞くと、少女は師匠に拾われる前の私と似た境遇にある事が分かった。

違うのは、少女はまだ成人前で、当時の私より語学力があるという事くらいだ。

そんな事を考えていると、目の前に1匹の魔獣が現れた。

しまった。

考え事をしていたせいで油断した。


【風魔法 風弾】


私は現れた魔獣を風弾で遠くに吹き飛ばし、探知魔法で周囲を確認する。

さっき魔獣の首を刎ねた所へ魔獣が段々と集まってきていた。

今遭遇したのは、その血の匂いの元を目指していた道中の魔獣だろう。

あの血に引き付けられているうちに抜けてしまおう。

少女の手を引いて再び歩き出そうとすると、少女が小さな声で呟いた。


「お姉さん、髪が…」


その言葉を聞いてすぐさま頭部に触れる。

フードが、取れてる…

先ほど放った魔法の風でフードが取れてしまい、白銀の髪が露わになっていた。

しまった、怖がられてしまう。


「ち、違うの、これはね」


何とか取り繕おうとする私に少女は真っ直ぐ私の目を見て、被っていた帽子を取った。

帽子で隠されていた髪と耳が出てきた瞬間、私は思わず息を呑んだ。

特徴的な銀髪の髪に、エルフの証である長耳。


「お姉さん、私と同じ_?」



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