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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
始章

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3/17

共同生活1


「なぁ、あの魔道具があればこの大陸の探索も可能になるか?」

「それは、難しいでしょうね。あの魔導具はそれほど高性能というわけでも無いから、ここの寒さだと少し和らげる程度の効果しか期待出来ないわ」

「そうか、ありがとう」


アレクは食事中なのにも関わらず、手を止めて何か考えている。


「アレク、食事中だというのに、何を考え込んでいるの?」

「ああ、すまない。魔道具が有れば依頼続行できると思ってたから、どうしようか考えてたんだ」


そういえばアレク冒険者だったわね。

確か北の大陸の調査、だったっけ?

漠然としすぎて何をすれば達成なの分からないわ。


「その依頼って何をすれば達成になるの?」

「まぁ?簡単に言えば住めそうな場所があるかどうかを調べるって感じだ。だから明確な達成条件は無い。俺が住めそうな場所の有無を判断すれば達成じゃないか?」

「なんで貴方がよくわかってないのよ」

「俺ってば人権の無い加護無しだから、そういう依頼の詳細って聞けないんだよね。ハハハ」

「それ笑って良いやつなの?」


だいぶいいかげんだ…

住めそうな場所の調査、ねぇ。

わざわざそれだけの為に外へ出るのは、ちょっと嫌。

他に何か用事があればいいんだけど。

そういえば肉の貯蓄が無くなってきてたような...


「ねぇアレク、私なら魔法で半日程だけど外に出してあげる事は出来るわよ?」

「良いのか?俺の受けた依頼を手伝ってもらって」

「まぁ魔獣を狩りに行くついでで良ければ、だけどね。それに、どうせここに住むなんて無理だもの」

「無理なのか…でも、ありがとな」

「言ったでしょう?魔獣を狩りに行くついでだって。貴方が礼を言う必要なんて無いわ。そんな事より、早く食べ切りましょう。冷めてしまうわよ」

「はは、そうだな」


再び互いが無言になり食べ進める。

アレクが先に食べ終わり、その後すぐに私も全て平らげた。

そして食器を片付けて出発の準備をする。

私の準備は一瞬で完了したが、アレクは少し時間がかかった。


「ねぇ、何をそんなに準備してるの?」


せっせと準備をしているアレクに話しかける。


「何って、防寒とか、護身用の短剣とか、色々だ」

「護身用って、そんなの要らないわよ?魔獣なんて魔法で一発だし。それに、そんなボロボロの服を着る事を世間では防寒とは言わないのよ」

「まぁ確かにそうだが、あるに越した事は無いじゃないか」

「貴方がそうしたいのなら、どうぞご勝手に」


アレクの準備が完了するのを待つ。

その間に私は念の為探知魔法で辺りの索敵を行う。

この家から半径2キロメートル以内に魔獣は居ない。

いつもの事ね。

魔獣は本能的に私の強さがわかるようで、滅多な事が起きない限りこの家には近づいてこない。

そのせいで肉を調達する時はかなり遠くまで行かないといけないのだ。


「すまない、待たせたな」


後ろに振り返ると、この家にあるはずの無いマフラーを巻いたアレクがいた。


「アレク、そのマフラーどうしたの?」

「ああ、これか?昨日編んだんだ。部屋に毛糸があったから作ってみたんだが、あの毛糸使っちゃいけなかったか?」

「いいえ、それは問題ないのだけれど、貴方、編み物とかできたのね」

「俺は昔から母と二人で暮らしてたんだが、普通に買い物する余裕がなかったから服を自作してたんだ。まぁ所謂昔取った杵柄だな」

「随分と悲しい杵柄ね」


そのボロボロの服も直せるのでは?と思ったが、それを直さないという事はできないという事なんだろう。

この家にはまだ毛糸と布がいくらかあったはずたし、後でアレクに渡そう。

そうしたらきっと自分で服を作るわよね?


「つまんない俺の特技なんて置いといて、さっさと行こうぜ。日が暮れる前に帰って来なきゃだしな」

「そうね。さっそく出発しましょうか」


私は自分とアレクに保存魔法を付与し、寒さを軽減できる状態にした。

ドアを開けて吹雪の中へ入る。


「おい、戸締りしなくていいのか?」

「ここで盗みを働くような生物が生存できる訳無いでしょ?それに、もし魔獣近づいてきても認識阻害の魔法に加えて、結界が張ってあるから安心よ」

「なるほどな」


私は保存魔法に加えて自分に飛行魔法、アレクに浮遊魔法をかけ、彼の服の襟を掴んで飛行する。

飛行魔法での飛行速度はドラゴンと同じくらい。

一般的な人類種が全力で走った時の速度の約5倍と言った方がわかりやすいかもしれない。

それほど速いわけじゃないが、地形を無視して移動する事ができるので、結果的にかなりの時間短縮になる。

ちなみにこの魔法は私のオリジナル。

先程索敵した範囲から外に出てすぐの所に洞窟が見えた。

私は徐々に高度を下げてそれの前に着地する。


「着いたわよ」


そう言って掴んでいた襟を離す。


「ここは?」

「私がいつも肉を調達している場所よ」


そう、ここは魔獣の棲家。

絶え間なく雪が降り続けるこの大陸で、入り口が塞がっていないのは魔獣が棲みついているからだ。


「どんな魔物が住んでいるんだ?」


アレクが洞窟の方を見つめながら私にそう聞いた。


「正確な名称は知らないけれど、真っ白な体毛を持った熊がいるわ。後たまに白いうさぎもいたりするわね」

「なるほど、それはおそらくホワイトベアとスノーラビットだな」


へぇー、そんな名前だったのね、アイツら。

アレクの説明によると、ホワイトベアは大陸中央にある巨大な山脈の雪が積もる高所に生息していて、一流の冒険者が束になって戦わないと勝てないくらいの強敵らしい。

一方スノーラビットはホワイトベアと同じ場所に生息しているが、戦闘力は全く無い。肉もあまり美味しく無い為、貴族が道楽として飼う事がたまにある程度だという。

あのうさぎ、私的にはかなり美味しかったのだけれど、そんな評価をされてるなんて、可哀想ね。


「それじゃあ、狩りに行くわよ」


私は発光魔法を発動し、それで洞窟内を照らしながら進んでいく。

アレクは私の後方で背後の警戒を行なっている。

洞窟内を少し進んだ所で、出力を抑えた状態で探知魔法を発動する。

その範囲は私から半径3メートル程。

探知魔法はかなりの魔力を使用する。

さっきの様な範囲で発動し続ければ、保存魔法を今使っているのも相まって一瞬で魔力が尽きてしまう。


「ルミア、後方から魔獣の気配がする」


私の探知魔法より先にアレクが魔獣の気配を感じ取った。

足を止め、戦闘の準備をする。


「数は?」

「3体だ。気配の大きさからして、おそらくホワイトベアだろう」

「そう、わかった。なら貴方は前方の警戒をしておいて。私が倒す」


「了解」と言ったアレクと配置を交代する。

その時、私の探知魔法にも3体のホワイトベアが引っかかった。

移動の仕方を見ると、私たちの動きを観察しているようだ。

魔獣は本能的に私の強さが分かるので基本的に襲いかかってきたりはしない。

棲家に侵入された時以外は。

なので家の近くで遭遇しても警戒をしたりしないのだが、こういう場面では私でも油断すれば怪我をしてしまう。

けど、私の能力・・を使う程ではないわね。

術式に魔力を込め、展開。

魔力と術式を以って、世界の法を行使する。

それが、魔法だ。


【牽引魔法】

【風魔法 風刃ウィンドカッター


私は牽引魔法を使って3体のホワイトベアの内、最も近い1体を目の前に引っ張り、その浮いた1体の頭を風の刃で切り落とした。

仲間が仕留められて焦った残りの2体は私に向かって突進してくる。

さて、どうしてやろうかな?

出来ればあまり肉に傷は付けたくないし。


【凍結魔法 範囲凍結バインド


私は凍結魔法で2体の足を止めた。

この位置なら、一本で貫けそうだ。


【岩石魔法 岩石槍ロックスピア


その後、岩石魔法で鋭い岩を作り出し、それで2体を同時に貫いた。

貫かれた直後は凍結魔法に足を取られながらも、まだ私に接近しようともがいていたが、少しして絶命したのを確認した。

後はこれを持って帰るだけだ。


「アレク、そっちはどう?」

「今のところ魔獣の気配は無い」

「そう、ならこれを持って帰りましょうか」

「了解」


探知魔法を発動させたままというのは魔力をかなり消費してしまうので解除した。

その後アレクにホワイトベアの死体を一箇所に集めさせた。

私がホワイトベアの死体に浮遊魔法を付与し、それをアレクが引っ張って洞窟の外まで運んで行く。


「なぁ、さっきのって牽引魔法か?よく荷物とかを運ぶ時に使われてる」

「厳密に言えば違うのだけれど、まぁそういう理解で構わないわ」

「へぇ、ルミアってたまに見たことも無いような魔法使うよな。あれってオリジナルなのか?」

「飛行魔法は、私のオリジナルね。さっきの牽引魔法もどきは私のじゃないわ」

「ルミアって凄い奴だったんだな」

「凄いというよりも、魔女と呼ばれるくらいには魔法に秀でているってだけよ」

「…それは十分凄いと言って良いと思うぞ」


そんな他愛のない話をしながら洞窟の外へ向かっていた時、突如謎の揺れが私たちを襲った。

何なの、この揺れ⁉︎


「ルミア、逃げろ!」


何かを感じたアレクが私に駆け寄る。

その瞬間、洞窟の壁が崩れ、そこから先程のホワイトベアよりも2回りほど大きい巨大なクマが現れた。

そのクマは私が防御魔法を発動するよりも早く、私にその巨大な腕を振り下ろす。


回避するための魔法も防御魔法も間に合わない、岩石魔法で壁を作り出すには時間が足りなさすぎる。

他にも様々な方法を可能な限り考えるが、この状況を打破できる物は無い。

まぁ、別にいっか、ここで死んだって__


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