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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
変章

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16/17

帝国へ

「シェーンさん、積み荷これで全部ですか?」


贔屓にしてもらっている商会の長、ミドラさんが商品リスト片手にそう私に確認した。

ミドラさんは帝都でこんなにも大きな商会を営んでいるのに、まだ商人を初めて2年の私にも仕事をくれる、良い人だ。

私は荷物を下ろす際崩れてしまった髪を整えてから元気よく答えた。


「はい!それで今回の商品は以上になります!他に何かご注文がございましたら遠慮なく!」


ついでに追加の仕事を受け付けている旨を伝えると、ミドラさんは高級そうな上着の内から1枚の紙を取り出し、それを私に手渡した。

紙にはかなりの数の商品が書かれており、上部には物品詳細とあった。


「これらの品物を後でお渡しするので、ここから北にあるミミナ村に届けていただけますか?もちろん、報酬は弾みます」


依頼内容は比較的簡単で、報酬額も悪くない。

私は行商人。

断る理由は無い。


「はい、喜んでお受けします!」

「それは良かった。では、早速その仕事の詳細についてと、折り入ってお願いが1つあるのですが」

「お、お願いですか?」


私が引き受けるって言うまで黙ってたんだし、絶対面倒なお願いでしょ…


「面倒ではありませんよ」


ミドラさんは私の心を見透かしたかのようにそう言った。


「あのーミドラさん、どうしてそう毎回私の心読めるんですか?私顔には出していないと思うんですけど」


私は一介の行商人兼に過ぎないが、それでも表情に考えている事を出さない程度は心得ているつもり。

だからもし私が分かりやすい表情をしてしまっているのなら、今後の為にも治したい。


「大丈夫ですよ、シェーンさんはしっかりと隠せています。ただ、私の能力が、そういうものだというだけですよ」


え、何それ、商談の時とか最強じゃん!


「はは、そんなに使い勝手の良い物でも無いんですよ、これ」

「十分強い能力だと思いますけどね」

「褒めていただきありがとうございます。それでは次のお仕事の話を始めましょうか」


仕事内容は至ってシンプル、預けられた荷物を送り届け、向こうで預かった物を持ち帰るだけ。

道中で旅の人相手に商売もできるし、荷物の運送も請け負っている私にピッタリの依頼だ。

説明を一通り聞き終わり、ミドラさんからミミナ村へ運ぶ荷物を受け取り、私の小さな馬車を引いてその場を後にした。

ミミナ村へ向かう前に、私は冒険者協会へ赴いた。

昼間というのもあってか非常に混雑している受付に並んだ。


「すみません、護衛の依頼を出したいのですが…」


私の番が来たので、受付嬢にミミナ村までの護衛を探している事を伝えた。

それほどお金を持っている訳では無いので依頼料は少ないが、それでも2人くらいは見つかるだろうと踏んでいた。


「今多くの高額な依頼が出されていて、この依頼料だと見つからないと思います」

「そ、そうですか…依頼料を引き上げずに受けてもらう方法があったり?」

「しませんね」


このままだと護衛無し行くことになっちゃう。

でもミミナ村のある帝都の北は魔獣が少ないって聞くし、護衛無しでも行ける…?

護衛無しで行くと完全には決めていないものの、いつまでもここに居ては邪魔なので受付嬢に礼を言ってから冒険者協会を出て、とりあえずそばに停めてあった馬車に乗った。

うーん、一応護衛は居た方が安心だし、酒場に行ってみよう。

あそこなら暇を持て余した冒険者が居るだろうし。


「冒険者?今日は見てないなぁ。きっとみんな依頼に行ってるんじゃないかな」


誰も居なかった。

なんでこういう時に限ってみんな仕事熱心になるの?

はぁ、もうこれ以上は時間を使えないし、護衛無しで行くしかないかぁ…

ガランとした酒場で昼食を取ってから、帝都の北の門から出発した。

帝都には四方に門があるけど、北から出たのは初めてかも。

帝国北部は他の地域に比べ、村や町が少ない。

加えて、その地域ならではの特産品なども需要があまり無く、新人の私が商人として赴く機会は無かった。

丁度良いし、北部の特産品の販路と人脈を築いておこう。

きっと役に立つ。

ミミナ村は帝国最北端の村で、道中雪が降り積もっていたりするが、ほとんどが平坦な道なので2日程で到着した。

心配していた魔獣も、魔獣除けの魔道具を使ったので襲われることは無かった。

魔道具と言っても、魔力を注入する機会に術式を刻んだ銅板を張り付けただけの簡単な物だけどね。

それでもかなり高価で、結局往復で護衛を雇うより高くついてしまった。

この依頼の報酬金を受け取ってようやくプラマイ0。

私っていつもこうなんだよなぁ。

うっかりこけて売り物を壊したり、道端でお腹を空かせていた子供に無償で食べ物をあげたりしちゃって、商人を始めて2年、収益がプラスになった事が無い。

今回はもうこれ以上不幸な事が起きないと良いけど…


「商人さん、どうかされましたか?」


商品の受け取り手であるミミナ村の村長が私にそう質問した。

どうやら考え事に集中しすぎて会話を疎かにしてしまっていたようだ。


「いえ、ちょっと考え事をしてました。そんな事よりも、今回お届けした荷物は確認していただけましたでしょうか?」

「ええ、確認できました。それではこの村からミドラさんの所へ持って行ってもらう物についてなのですが…」


村長と仕事についての話をした後、この村で商売をする許可を貰ってからその場を離れた。

村の人達はみんなとても親切で、この辺りの事が分からない私に色々と教えてくれた。

この村に外から人がやって来るのは珍しいみたいで、その代わりに根掘り葉掘り帝都について聞かれたけどね。

特産品についても、その生産者と引き合わせてくれたり、今後についての話し合いもできた。

帝都に戻ったらこの機会をくれたミドラさんにお礼言わないとだね。

話し合いが終わっても日はまだ暮れていなかったので、私は村の中央にある広場に馬車を移動させ、それを簡易的な店にした。


「さあさあ!シェーン商店開店だよ!」


私がそう大きな声で開店を知らせると、興味を引かれた村人たちが続々とやって来た。

私は主に回復薬や短剣などの冒険に役立つような物を販売している。

しかしこの日、村人たちにウケたのはそのような品物ではなく、知り合いに少しだけ譲ってもらい、どうせならと思い並べていたオルゴールだった。

でも結局「1つをみんなで回せばいいんじゃない?」とか言い出して1個しか買ってもらえなかった。

そんな事されたら商売上がったりだよ!

まぁ高価だから仕方ない部分もあるけどさ。

それにしても商人の前でそんな話をするなんて酷い!

それが悪意によるものじゃ無い事はわかっていた。

止めたかったけどこの村の人たちには優しくしてもらった恩があるし、心のどこかでこの人達ならまぁ良いかと思ってしまった。

商人失格だよ私は!


「いやー、この度は村に新しい物を持って来てくださりありがとうございます」


すっかり日が暮れ、村長宅に泊めてもらう事になった私は、そう村長にお礼を言われた。


「ハハハ、ゼンゼン複数個買ってくれてもよかったんデスヨー」

「はは、確かにそうですね。でも、こんな所で売ってしまわれるよりも、もっと高く売れる場所で売った方が良いでしょう?」


それはそうだけどさ、私は取り敢えずこの依頼における収益を大幅にプラスにしたいの!

はぁ、これ善意で言われてるから言い返し辛いんだよね。

悪意で言ってくれた方が対応は楽かもしれない。

その後も少し村長と話し、明日のお昼頃にミミナ村を発つ事を伝えた。

かなり強く引き止められたが、運ぶ荷物の中に食料品があるので早くミドラさんに届けなければならず、発つのが遅いと危険な夜間も移動しなければならなくなってしまうので、丁重にお断りした。

村長宅の一室で就寝し、目を覚ますと日が昇ったばかりだった。

…もう少し寝よ。

疲れが溜まっていたのか瞼が重かった。


…二度寝しちゃった。

お昼過ぎちゃった。

ヤバいヤバいヤバい!

急いで準備しないと!

跳ぶようにしてベッドから起き、急いで身支度を整えて部屋を出た。


「おはようございます村長!これで失礼しますありがとうございましたー!」


私は部屋でイスに座ってのんびりしていた村長に対して、そう一方的に感謝の言葉を投げかけ走って村長宅を出た。

出発する前に馬車に積んだ荷物のリストと照らし合わせ、全てそろっている確認した。

そしてすぐ馬車に乗り、村の人達に声をかけることなく出発した。

最初の方は順調だった。

というのも、村を出発したのが遅かったせいで夜間も移動しなければならないのだが、まぁ終盤に急げばいいやと思って夜は魔獣除けの魔道具を使ってしっかりと休息を取っていたからだ。

ミミナ村から帝都までは馬車で大体2日くらいの距離にあるので、夜も移動すれば1日半で到着することができる。

しっかり睡眠も取れて、予定通り帝都に到着する。

なんて完璧な計画!


「ふわぁ、眠い」


やっぱ嘘、全然完璧じゃない。

森の中を通っているからなのか、その雰囲気が私を眠くさせる。

終始私を襲う睡魔の事を一切考えていなかった。

まぁ馬車に揺られている限り寝る事はなさそうだけど。

そんな調子で必死に睡魔と格闘していると、少し遠くの低木が揺れた。

それも明らかに生物の体に当たったような、そんな揺れ方。


「流石に、気のせいだよね?」


流石に怖くなったので馬車の明かりを強くし、馬に鞭打って移動速度を上げた。

それに呼応するように草木の揺れもその頻度を増していく。

嘘嘘嘘、なんでこんな時に限って魔獣が現れるの!?

と、とりあえず魔獣除けの魔道具を_

片手で手綱を握りながら後ろに積んであった魔獣除けの魔道具を手に取り、それに魔力を流し込んだ。

が、魔道具は発動しなかった。

何で、何で発動しないの!?

暗い中その魔道具をよく見ると、取り付けていた術式が刻まれた銅板が無くなっていた。

それが分かった瞬間、私は魔道具を後ろに放り投げて、この状況を切り抜けたい一心で手綱を両手で握った。

まずいまずいまずい!

これは本当にまずい!

更に馬車の明かりを強くしようと横を向くと、その奥に何やら黒い体毛の生物がこの馬車と並走しているのが見えた。

その次の瞬間、反対側から強い衝撃が加えられ、馬車が転倒してしまった。

私は御者席から投げ出され、近くの木の幹に強く打ち付けられた。

背中が、痛い。

そのせいか立とうとしてもうまく足に力が入らない。

少し離れた所から何やら音がするが、私は痛みだけで精一杯で確認する余裕が無かった。

今までに経験したことの無い状況に置かれた私に追い打ちをかけるように、正面に3匹、魔獣が現れた。

黒い体毛、馬の体毛と血が付着している爪、仄かに光る金色の瞳孔、よだれまみれの牙。

帝国北部に生息している狼型魔獣、ブラックウルフ。

攻撃的な性格と、常時3~4匹の群れで行動する危険な魔獣として知られている。


「い、嫌ぁ、食べないで…」


別名、人喰い狼。

よだれを垂らしながら恐ろしげなうなり声を上げて、1歩1歩私に近づいてくる。

近くにあった石を投げつけても、ブラックウルフは怯みもしない。

…まだ、私にはやり残したことがたくさんあるのに、私の商人人生はこれからなのに、こんな所で死にたくない。

ブラックウルフが口を大きく開け、私の喉元めがけて飛びかかる。

こんな所で_

そう思って諦めた瞬間、突然目の前に居たブラックウルフ全員の首がストンと落ちた。

え、何?

何が起きたの?


「ねぇ、貴方、大丈夫?」


空を見上げると、白銀の髪と紺碧の瞳の、コートのフードを深くかぶった女性が空中に漂っていた。

私はこの日、一人の魔法使いと出会った_



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