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他人に害をなすのだから、せめて悪人であろう  作者: りょっぴー ぴあ
始章

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12/17

アレク2

入口前に着地し、足元の悪い中滑らないよう気を付けながら奥へ進んでいく。

花畑のある空間を覆っているのはぶ厚いドーム状の魔法で作り出した壁ともう一つ、結界が張ってあるため、花畑に繋がっている洞窟の入口からは歩く必要があるのだ。

数分歩くと、結界をくぐった感覚を覚えた。

直後、あたりが光に包まれ、花畑が露わになった。

植えたばかりの頃とは違い、今では空間の半分程度にノルメラ植わっている。

早速中央にある水晶に触れて魔力を注入して空間内に雨を降らせ、あたり一面に水をやった。

ノルメラ達が降り注ぐ雨水を一身に浴びて歓喜の声を上げている、そんな気がした。

この光景を見ていると、アレクに髪飾りを渡された時の事を思い出して、とても心が温かくなる。

きっとこれを…

そんな事を考えていると、家の周囲に貼ってある結界からアレクが出たのを感じ取った。

外に出て何をするつもりなのだろうか。

彼の服に刻んだ保存魔法の刻印は10分程しか効果を発揮しない。

もし彼が何かするつもりで外に出たなら、手伝いに行った方が良いかもしれない。

水晶に触れている手を離し、魔力の注入を止める。

魔法の雨が止んだのをしっかりと確認してから私は花畑を後にした。


ーー


【強化魔法 全身強化】


騎士全員が強化魔法で身体能力を強化し、連携の取れた攻撃を仕掛けてくる。

アルファードが中央から接近し、残りは左右に展開。

彼が振り下ろした剣を後方に跳んで回避すると、残りの騎士が一気に距離を詰め、右からは俺の首を、左からは横腹、左足首めがけて同時に剣が振るわれた。

首を狙ったものはナイフで受け止め、横腹のものはタイミングを合わせて拳で叩き落した。

左足を狙っていたものはその叩き落された剣で阻み、弾く事に成功した。

ナイフを強く押し出し剣を弾き、更に後方へ跳んで体勢を立て直す。

今、かなり危なかった。

1人が隙を作り、残りの3人がその隙に攻撃を叩き込む。

今まで戦ってきた奴らとは、連携力が違い過ぎる。

まったく連携していなかった訳ではないが、連携の密度、急所の狙い方において、今回の奴らの方が圧倒的に上だ。

どうやって切り崩そうか思考しようとしたが、そんな暇を与えまいと俺が呼吸を整える前に彼らは再度攻撃を仕掛けてきた。

女騎士が剣を頭上に構え、大きく振り下ろす。

さっきはこれを躱した隙を狙われた為、俺はそれに対してタイミングよくナイフを剣身に当てて弾いた。

俺がこの攻撃を躱す前提で動いていた残りの3人は各々の方法で攻撃が弾かれ隙を晒している仲間を助けに入った。

左からは純粋な振り下ろし攻撃。

右、背後からは俺がこの味方を盾にする事も考慮した打撃。

今俺を剣で切ろうとしている奴は、この中で一番若く見える。

なのでおそらく経験が浅いのだろう。

この状況で、剣を用いた攻撃を選択してしまった。

そうでなければ俺がコイツを盾にする旨味は無かった。

が_


「ちょいと失礼」


俺は女騎士の胸ぐらを掴んで右方向へ回し、その遠心力で俺とその騎士の場所を入れ替えた。

攻撃の標的が居た場所に投げ飛ばされた騎士はうまく体勢を整えられず、北の大地の積雪に顔をうずめた。

その騎士はすぐさま顔を上げ立ち上がろうとするが、味方の攻撃を完全に避けるには至らなかった。

打撃を構えていた2人は停止することができたが、どうやら剣を振りかざしていた奴はその攻撃を完全に止める事が出来ず、身代わりにされた騎士の片腕の鎧を貫通して少し切り裂いてしまったようだ。

切ってしまった騎士はすぐさま腕を押さえて膝をついている騎士に駆け寄った。

その騎士は傷の具合を確認すると、こちらを恨むをような目つきで睨んできた。


「貴様、人を身代わりにするなど卑怯だぞ!」

「卑怯?はは、どうやら温室でぬくぬく育った騎士様は、下界の厳しい寒さをご存じじゃないらしい」

「貴様ッ_!」


過去に帝国騎士から受けた仕打ちを思い出してしまい、つい強く言い返してしまった。

今にも俺に襲い掛かりそうな若い騎士を、アルファードが肩を掴んで止める。

するとアルファードは若い騎士ともう一人で俺の動きを監視させ、切られた騎士の容態を確認した。

俺が思うに、切られた騎士はそう長くは無いだろう。

寒さ対策の魔道具を装備しているとは言え、北の大地で出血する事は、急激な血液の冷却による体温の低下を意味する。

俺も一度、浅い傷だったが経験しているので、分かるのだ。

体に傷が出来た瞬間、急激に体の動きが鈍くなり、まともに思考できなくなるあの感覚が。

慈悲、という訳では無いが、少しだけ忠告しておこう。

襲ってくる奴を俺が殺す分には良いが、同士討ちさせて凍え死なせたら目覚めが悪い。


「おい、アルファードだったか?」


俺がそう声をかけると、彼は俺の方を向くことなく返答した。


「なんでしょうか」

「今すぐにでもソイツの傷を塞いでやらないと、体温が下がって死ぬぞ」


アルファードはその忠告を聞くと、俺に聞こえないような小さな声で膝をついている騎士に何かを確認した。


「忠告ありがとうございます。ですが不要です」

「馬鹿だな、お前ら」

「忠誠心が強いと言ってください」

「そこまでして俺を殺したいのか?」

「ええ、帝国の平和の為に」


アルファードがそう言うと、怪我を負った騎士を含め全員が再度陣形を形作った。

…俺を殺した程度で得られる平和に、何の価値があるというんだ。

ナイフを逆手持ちし、前へ突き出す。

怪我を負っているあの騎士から、崩す。

相手が動き出すより先に、前へと駆け出した。

それに反応してアルファードとその他騎士が2人、剣を構える。

そして怪我を負った騎士が、目を閉じて何かに集中し始めた。

俺には感知できないが、おそらく魔法を使おうとしているのだろう。

どんな魔法なのかは分からないが、それの発動を許してしまえば俺の敗北が確定すると言っても良い。

魔力を感知できない俺にとって、魔法はそれほどの脅威なのだ。

少々危険を冒してでも、絶対に止める。

アルファードは迫りくる俺にシンプルな振り下ろしで対応した。

しかし俺はそれをナイフの刃に沿わせていなし、彼の振り下ろし切った腕、肩を足場にして跳んだ。

結果として、俺はアルファードの他に構えていた騎士2名を跳び越え、魔法を放とうとしている騎士の前の前に着地する事が出来た。

その騎士は俺に気付き、回避行動をとろうとしたが、その前に俺は躊躇なくナイフを心臓めがけて突き刺した。

が、女騎士は咄嗟に体を動かし、ナイフの突き刺さる位置を肺のあたりにずらした。

まずい、仕留め損なった。

早くナイフを抜いて離れ__ない⁉

手元を見ると、俺の腕を引き込むような形で握り押さえていた。

抑えられていな方の手で相手の手を必死に剥がそうとするが、なかなか腕を離す事が出来ない。


「皇帝陛下、万歳」


彼女はそう唱えるとより一層握る力を増した。

そして後ろからは先ほど跳び越えた騎士2人が俺に剣を突き刺そうと向かって来ている。

腕が痛くなるほど力を入れて引き抜こうとするが、ほとんど動かなかった。

どうやら強化魔法の有無は俺と騎士の力にかなりの差を作り出しているようだ。

向かって来ていた老いた騎士が剣を頭上に構え、振り下ろそうと加速する。

俺は騎士の腹に足の裏を当て、後転するようにして持ち上げ盾にすることに成功した。

が、老いた騎士は振り下ろしを突きに変更し盾にされている女騎士の胸を貫き、その剣は捕まれている腕を掠って俺の胸に届こうとしていた。

咄嗟にその剣を掴んだが、手のひらからあふれ出す血液で滑り少しずつ切っ先が迫ってくる。

いくら握る力を強くしても切っ先は止まらない。

視界の端でこちらに向かってきている若い騎士とアルファードを捉えた。

ダメだ、この状況を切り抜ける方法が何も思いつかない。

このままじゃ本当に、殺されてしまう_

そう諦めかけた時、突然どこからか全てを薙ぎ払うような勢いで暴風が吹き、俺に向かって来ていた騎士2人を吹き飛ばし、俺と瀕死の騎士を吹き上げ分離した。

その際高く吹き上げられたが、落下先では積雪がクッション代わりになり大したダメージは受けなかった。


「アレク、この人達は貴方のお友達?」


雪が飛び交う空からそんな言葉が聞こえた。

そちらを見ようと顔を上げようとする前に、彼女は俺のそばに降り立った。


「あれが友達に見えるのか?」

「いえ、ただアレクの事だから野蛮な友人が居ても不思議じゃないなと思って」

「俺を何だと思ってるんだ…」


地面に手をつき立ち上がり、辺りを見渡す。

どうやら戦っているうちにかなり遠くまで来てしまったようだ。


「貴方、手が…」


俺の手に触れた雪が赤く染まった事によって、ルミアが手のひらの傷に気付いた。

彼女はすぐさま俺の手に触れ、治癒魔法を発動した。

が、手のひらの傷は治らなかった。


「これは、呪いね。魔法じゃ治せない。というわけで我慢して」

「説明どうも。俺は治らなくても十分戦える」


深呼吸して再度集中する。

そして俺は簡潔に相手の情報を共有した。


「相手は強化魔法を得意とした近接戦闘専門の帝国近衛騎士4人。うち1人は致命傷を負っていて戦闘継続が困難な状態だ」

「…了解」


俺はナイフを構え、ルミアは体に魔力を巡らせる。

互いの準備が整った時、俺と騎士は駆けだした_


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