薬草のスープ
ブルアカの世界に浸ってました。
「帰ったよ、バオ。今日はおまけしてもらっちゃった」
ペルは近辺の村に毛皮などを売りにいき、調味料などを買ってきた。今ではこういったことは彼の役割となっていた。
「おかえり。よかったな」
「あとこれ。最近都で流行ってるアロマラスってやつ。珍しいから買っちゃった」
ペルは液体の入った小さな小瓶をテーブルの上に置いた。
「おいおい、また無駄遣いしやがって……」
「いやいや、バオもきっと気に入ってくれるよ。ほら」
ペルは小瓶を開け、バオグゥの顔にそっと近づけると、穏やかな華のような香りがした。
「これは……香水か?」
「いや、香りをつけた回復液なんだって。都の貴族やお金持ちたちの間で疲労回復アイテムだって人気らしいよ」
「そうか。しかしどうしてこんなものを?」
「そうそう、よくぞ聞いてくれました!!これさ、ウォムストーンにかける水に混ぜてみたら良さそうじゃないかなって。今度試してみようよ」
「なるほど。それは……ありだな」
「やったー!!今日は楽しみにしといてね」
出会った頃よりもペルの背は少し伸びたが、あどけない笑顔は変わらないままだった。バオグゥも今ではすっかりペルとの生活が当たり前になっていた。
「しかし、お前の歳なら遊び盛りというか、こんな森の生活で大丈夫なのかって心配になる」
「え?そうかな。僕はこの生活けっこう気に入ってるよ」
「そうか」
バオグゥは安心したように微笑む。
「あと今回は子供でも飲める薬草スープの作り方が載ってる本や、大昔の童話とかも買ってきちゃった。ちゃんと飲んでよね薬草スープ」
「だから、俺には薬草スープはいらないって……」
「もう、いくら君でも健康には気を使わなきゃ。早死にしちゃうよ?なんか最近は前と様子が違うみたいだし」
「そうか?傷といってもなぁ、かすり傷にもならん程度だぞ?」
「昔はそんなのすぐに治ってたじゃん!!多分食生活が偏りすぎてるね!!」
「でもなぁ……」
最近は2人は住処に本棚を作った。ペルは容姿から15〜16歳といった年齢であるが、文字が読め、時折みせる教養の良さがあった。バオグゥはペルが貴族階級の出身だと勘繰っていたが、彼らにとってはそれはどうでもいいことであったため深く詮索することもなかった。しかし、元々バオグゥは旅人から書物を引き取るなど本を読む趣味があり、ペルもたまに市場やお使いに出掛けると何冊か本を持ち帰ってくる。それならばと2人で本棚を作ったわけだが、まだ本よりも空いている空間が目立つ状態だ。ペルは新たに持ち帰ってきた本を本棚に入れる。
「はりきりすぎたな。こんなに大きくなくてよかった気がする」
「いやいや、これからどんどん増やしていくんだから、これくらいは必要だよ」
「これからか……」
「迷惑かい?」
ペルは困ったように笑ってみせる。
「今更だ。それとも出ていくか?」
「まさか。もうバオは僕以外が作ったご飯以外は食べられないから餓死にしちゃうよ?」
「ふん。無駄口叩く暇があるならほんとに追い出すぞ」
「はいはい、まってて。準備するから」
そう言ってペルは調理場へ向かった。