第七話 僕はあのときは頑張った。でも、その努力は今なっては、もう無駄、だよね・・・。僕達のサークルは、もうなくなっちゃったし、、、
僕は、大学時代に仲間と一緒に同人ゲームサークルを作っていた。
時は、数多の同人ゲーム制作サークルが、同好の士達によって結成され、同人誌即売会イベントでデビューしていく、そんな時代だった。
第七話 僕はあのときは頑張った。でも、その努力は今なっては、もう無駄、だよね・・・。僕達のサークルは、もうなくなっちゃったし、、、
デビューしていく同人ゲームサークルの、その中から有名となり、企業化し、衆人達もよく知っているような有名な企業も、実は、出発点は学生時代の同人ゲームサークルっていう企業、ゲームブランドも多い。
そのときは、『黎明期』、、、と言ってもいいんじゃないかな?その業界の。約二十数年前は、ちょうどそんな時代だった。
僕達も、『それ』を目指すそんな中の一つの同人ゲーム制作サークルの一つだった―――。
「、、、」
当時、僕達の他にもたくさんの同人ゲームサークルがあった。今の有名な、ゲームやアニメ制作企業の中には、出発点が学生時代の仲間内で結成した同人サークルというものも意外に多い。
かくいう僕達も、そのような企業化を目指して、学内で同人ゲームサークルを作った。七人の気の合う、趣味の合う同志達で結成したサークル。
本当に、あのときは楽しかった。
「―――」
今思っても、あのときが、僕のこれまでの人生の中で一番楽しかった『時』かもしれない。僕はまだ、当時十代後半の僕は、小説など全く書いたことはないような少年だった。
ただ、アニメやゲームの台詞を読み返したり、毎度のアニメの放送回のあらすじやせりふをメモしたり、覚えたりとか、そのようなことを行なっているような少年だった。
七人の気の合う同志達。僕達は、当時の代表彼の家に集まり、『あぁだこぉだ』『あぁでもないこうでもない』と、わいわいがやがや―――、
目頭が、あ、熱い、、、よ、僕。
「く・・・うぅ、、、っ」
最終的に僕達は、ゲームエンジンとして『吉里吉里』さまのを採用し、『l』や『r』は改行や、メッセージレイヤーや『前』や『後』だの、そのようなの勉強をしていた。
あれからもう二十年以上は経つ。
「もう、僕はそのゲームエンジンの『言語』の大半を忘れてしまったけどね、、、」
大学時代に仲間内と立ち上げた同人ゲーム制作サークルが、『小説家』たる僕の起点だ。あのとき、僕の先達だったサークル代表の彼には、ほんとうに世話になった。代表の彼は当時すでに小説を書いていた。
「いろいろ行ったなぁ、、、」
もちろんいろいろ行ったのは、当時の作品を造るにあたっての取材だ。先の『鵯越の逆落とし』の場所とか、他にも。
例えば、、、1335年の七月に起きた二十日間の『中先代の乱』で有名な、あの湘南の海に抱かれた美しい古都(八幡神社のある、とても美しい街だったよ、地酒や地ビールいっぱいあったー)や、
幕末維新の動乱期『稲田騒動』が勃発し、所属県が変更になるきっかけとなった国生みの島(海峡を眺めながら食べたシラスと鰆の海鮮料理おいしかったよー)。
また、平家の落人伝説が色濃く残る地にして、かずら橋のある、秘境と呼ばれている村(小便している小僧のところみんなで行ったよー、僕)。
「あのとき食べた、いなか蕎麦。美味しかったなぁ、僕」
わいわい僕達は話をしながら、蕎麦を食べたっけ。いやね、あのとき僕が食べたいなか蕎麦。意外と柔らかくて口当たりがよかったんだよね。そのいなか蕎麦を食べた場所は、川沿いの、土産物店だった、と思う。僕達はそこで、写真を撮ったり、おみやげを買ったり。
あとは、他にも僕が行った景勝地としては、
臨海鉄道の始発駅があり、一宮の社へと続く坂道の見晴らしのよい場に『剱聖』の像が、まるでその街を見下ろすかのように立っている街。あのときは、海から吹く風が強くて電車が遅延していたっけ。
今でもそれらの名勝へ行った光景をまざまざと思い出せるよ、僕は。
ほかにも僕は、地元の、僕が思う『いい所』も巡るのが好きでさ、一日フリーパスを買ってね。
「―――電気街から歩いてほんの十分ほどの位置に座す萌えで有名な神社、雷の門で有名なお寺、当地の下町、動物園、それからさ、有名な古き良き昭和の、古き良き匂いの漂う飲み屋が連なる街~~~♪~~♪」
その街の、なんでも揃う長い商店街。僕は、昭和の匂いが漂う街の雰囲気も好きなんだよね。下町の風景は好きだ。昭和の木造家屋がいっぱいで、特にあの、ビル群が少ないのがいいよね。
「~~~♪」
僕は有名な、その飲み屋街の、当地の駅のメロディにもなっていて、映画の中で謡う『行進曲』を口ずさみながら、あのときの場面を思い起こす。
そう言えばあのとき駅前で。
昼間からおじさん達が、お酒片手に駅前で円陣を組み、楽しそうにお酒を酌み交わしてたよね。その光景を僕は思い出し、僕はしぜんと頬が緩み、にこり、と僕は笑みを浮かべた。楽しそうな街だった、あそこは。
僕は、あのとき五丁目を越えて、呑川に架かる橋を越え、
「ん、っと、確かあのとき川に、なんか水鳥が何羽か浮いていたような。カモ?」
本当はなんていう水鳥だったんだろう?知らないや僕。
そして僕は、ぶらっかぶらっか赤い色の私鉄の、私鉄のほうの駅まで、カメラ片手に散策、、、じゃなかった取材したっけ、八幡神社に行ったり、下町散策したり僕。『メロディー発進』の快特早かったーっ。で、そのまま、あのとき僕は、電気街まで繰り出したんだっけ?
「ぐふっむふふふ♪」
あー楽しかったよー、いろいろ思い出してきたよ、僕♪
えっと、あとは―――。
―――、他にはどこ行ったっけ、取材に。そうそう―――、
「あそこも行ったね。そう、かわいい緑色の路面電車がくねくねと街中を走り、海に架かる橋を渡っていく島や、その紺碧の海に抱かれた湘南の街とか」
だって、あそこって、いろんな僕が好きな『アニメ』や『ゲーム』の舞台になっているんだよね。
「いやいや、だからそれ、ただの『聖地巡礼』だからね、書くん」
僕は自分で自分につっこみ。
「いやいや、そんなことはないさ、書くん。たまたま僕が執筆している作品の舞台と被ったのだけさー」
ただ、僕が執筆する作品のその舞台にする、僕の作品の舞台の参考にする街へ行って、僕は写真を撮るだけだったから、本格的な取材とは言えないだろう、けど僕の場合は。
写真を撮って、写真加工してゲームの背景も作ったっけ。プロの人達から見れば、僕の『背景』なんて稚拙なただの写真加工だろう、けれども。
僕はあのときは頑張った。でも、その努力は今なっては、もう無駄、だよね・・・。僕達のサークルは、もうなくなっちゃったし、、、。
「、、、」
しかも、そんなにもいろんなところを取材したのに、それを題材にした僕の作品も、僕の小説も全く芽が出ず、全然ダメだったよ、、、僕。
僕は気を取り直して。
「ふんす・・・っ」
それよりも―――、だ。
「それだけじゃないよ、僕は。もちろんっせっかく行くんだから、合わせて『聖地巡礼』もするよっ僕はっ♪」
そう、そのとき既に、小説を書いていた―――、
「―――」
―――当時の代表の彼に、僕は大きないい影響を受けた。本当に彼には感謝しているよ。もし会えることなら、直接彼と面と向かって『ありがとう』と屈託のない笑顔で僕はお礼を言いたいさ―――。