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僕は文豪。第一部、小説家志望の僕を「四十代無職」にカテゴライズしないでくれっ、僕は小説を書きたいから働かないだけだっ!!  作者: 高口爛燦
第一章 僕の決意。―僕は絶対に売れっ子作家になってやるっ!!―
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第六話 僕は、『鵯越の逆落とし』の如く―――

 尿をちびりそうになった僕は、自室の扉に向かってダッシュッ!!

「あと、もうちょっと―――待って、、、漏れないでっ」

 ダダダダダッ―――、っと僕は思い切り家の中を走る。もう、ちょっとだけ待ってくれ・・・っ、僕の膀胱、僕の尿意っつ。


第六話 僕は、『鵯越の逆落とし』の如く―――


 ガチャ―――、バタンッ、っと、僕は自室の扉を開け閉めした。

「ふぉおおおっ」

 ダッシュでふっ!!

 目指すはもちろん一階のトイレだってばっ!!


 ダダダダダッ―――、バタバタバタバタッ―――ッツ

 僕は、『鵯越の逆落とし』の如く―――、一階へと続く階段を駆け下り―――、ふふん♪僕は当然歴史の出来事ぐらいは知っているさ、僕は小説家だからね―――。

「はいやぁああああっ―――!!」

 1184年の三月、源義経率いる源氏軍の『鵯越の逆落とし』が、実際にどこで起きたのか、どの場所で行なわれたのかについて、諸説あるけど、その実際に行われた場所だね。

 その場所は、義経軍は相談が辻を越え、鵯越六甲八十八所、現在の鵯越駅付近で起きたという説と―――、それに因んで近くに『源平町』という地名も近くにあるしね。


 それともう一つ、現在の須磨浦公園駅近くの安徳宮という神社のある現在の『一ノ谷町』付近で起きたという説があってね。

「―――トイレにダッシュでふ・・・っ!!」

 僕は、自分の書く小説の舞台になる場所に、よく足を運び取材するんだけどね、そこの二つの場所も、昔、取材に言ったことがあるよ、僕。

 電車に乗って、家族で旅行がてら、、、

「あれはいつの頃だったかな・・・? トイレもうすぐっ」

 確か、、、僕がまだ二十八歳の頃? あのとき弟は一緒じゃなかったと思う。三泊ほどしたっけ?「・・・」

 どっちも、『源平町』も『一ノ谷町』も、『鵯越の逆落とし』に関連していそうな、とても急な坂ばかりのところだったよ。遠くというか、背山がすぐ後ろに迫っていてさ。でも、『源平町』のほうは山のほうにあって、『一ノ谷町』のほうはすぐ前が海だったっけ? もう行ったのは、ずいぶん前のことだから。

「、、、」

 そんなに明瞭な記憶ではなくなっているかな。その頃、ちょうど歴史ものを書きたかった僕は、新幹線や在来線に乗って、父さんと母さんと一緒に、全国各地の歴史的名勝に、取材がてらにちょくちょく旅行していた。

 もちろん、当然、当地のオタク街も忘れずに遊びに行ったよ、僕は。オタクだからね、僕は。


「はいやぁああっ―――」

 行けっ僕!!トイレに向かって早くっ!! 漏れちゃうでふ・・・っ!!


 ダダダダッ、っと僕は一階へと続く階段を降りる。こんなダダダダッ、っと家の階段を猛スピードで駆け下りることは、日常茶飯事のことだから、転がり落ちたりはしないさ、、、どやっ。


 ダダダダ―――、ガチャバタンっ、っと僕はトイレに急行電車でふっ!!

「ふぅー、間に合ったでふ」

 じゃーっ、っと僕は便器に水を流し、、、。じゃーっ(こっちは手を洗う音さ)。僕は綺麗好きだからね!!

「うっ」

 こ、この下腹部に走る感覚は―――。

 や、やばいっ///

「も、漏れちゃう、でふ・・・っ///」

 でもそんなときさ。ピリっとね、ピリッときたんだ。

「すぽぽーんっでふ」

 ひょいひょいっ、ぽんぽんっ、っと、僕は慌ててズボンやトランクスなどを脱ぎ散らかして便座に座った。

 ほわ~。便座あったかいねー。僕は、下衣を全部脱いで、大きい方の用を足さないと、安心できない性格なんだな。

「ふぅ」

 こっちも間に合って良かったー。

 便座に腰を下ろして、僕は人心地つき―――、、、。

「・・・」

 僕は一戸建ての家に住んでいる。物心ついたときから僕はこの家に両親と弟と住んでいる。

 僕の部屋は二階にある。

 トイレと風呂は一階。

 父さんと母さんは一階で寝ている。

 弟の部屋は僕の部屋の隣にある。今は物置だけどね。

「なぜ弟の部屋は、今は物置かだって―――?」

 僕は独り言ちた。

 それは当然、弟は家を出たからだ。弟は二十四歳のときに、大学時代から付き合っていたカノジョと結婚した。そして弟は、この家の隣にあった草ぼうぼうの空き地を買い取り、自分達の家を建てたんだよ。

「・・・」

 僕は、弟が結婚したとき、あのとき僕は心にもなく『おめでとう』って弟に言ったっけ?弟も僕のことを『売れるといいね、兄さんの小説』って言ってくれた気がする。ずいぶんと二十年ほど前のことだから、やり取りははっきりとは覚えていないけど。

 そのときの僕は、まだ二十六歳で絶賛頑張っていた。なにを頑張っていたか、だって?もちろん小説さ。それだけは鮮明に憶えている。

 僕は小説家を目指して、自分が思いを巡らし、考えることを、物語にして、それを執筆していた。

「僕は必ず売れっ子作家になってやる!!」

 いや、ううんそれ以前の問題、本当は。そのとき書き上げた作品を大手の出版社を郵送したけど、てんでダメだった全部門前払いの落選の山―――。


 落選通知の山かぁ―――。

「僕の何が、僕の作品のどこかいけなかったのさ・・・」

 僕は、用を足し終え、トイレのつまみを回す。最新の家だと、ボタン一つで水洗なんだろうけど、僕の家は、父さんがまだ現役の頃に建てた家だ。しかも、お金持ちだったようで、父さんは一括払いで家を買ったらしい。

 父さんが家を買ったのは、五十年前の話。だから、僕の家のつくりは昭和。

「僕は絶対売れてやる」

 僕は売れる小説を書いて、売れっ子作家になって、そのお金で僕は両親に新しい家を建ててやりたいんだよ。

 じゃわぁああ―――っと水を流して、流したあと僕はトイレをあとにした。

 僕は自分の部屋に戻り、定位置へ。またブラウザの前に陣取るように座ると、投稿された最新話を読んでいったんだ―――。


///


「ふぅ、、、ここで取りあえず」

 その僕が読んでいる小説の最新話は、そこでちょうど『回想』が終わっていて、僕はキリのいいその部分で『小説投稿サイト』のブラウザを閉じた。

 そして僕はまた文書作成ソフトを立ち上げ、カタカタカタ―――っと僕自身の作品の執筆に戻ったんだ。


「―――、ふぅ~~~」

 ちょっとちょっと小休止。僕はキーボードを叩く両手の指を止めた。物語を執筆中はそれ以外のことを考えず、頭に浮かんだ事象を文章化し、キーボードをタイプできていたはずだ。こうして一心不乱に僕は物語を書いていると、思い出すのは大学時代の愉しい思い出ばかりだ。

「、、、あのときは、愉しかった」

 僕はそのときのことに、今もずっと囚われている。はんっ、昔のことばかりに縋っている愚かな奴と言われるかもしれないけれど、いくらでも勝手に言わせて置けばいい。


 今の小説家(志望)の僕があるのは、そのときの大学時代に結成した同人ゲーム制作サークルで経験のおかげだ。

「ふむ・・・」

 僕は、大学時代に仲間と一緒に同人ゲームサークルを作っていた。

 時は、数多の同人ゲーム制作サークルが、同好の士達によって結成され、同人誌即売会イベントでデビューしていく、そんな時代だった―――。

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