第五話 僕の好きな作家さんの連載小説があがる時間 弐
(無論まずその豪華な肉料理が運ばれるのは、父王トゥグリルの名代指揮官たるオレが座る豪華な黄金の椅子に、である。先ずオレが一口、二口、三口と肉料理を食む。その残り、まだ暖かみを感じる皿をオレはカブルに差し出したのだ。)
第五話 僕の好きな作家さんの連載小説があがる時間 弐
(無論、オレが三口ほど食んだ肉料理は、まだ皿の上に乗っている。)
「『さぁ、カブルよ。アカティル族のカブルよ、オレは貴公が食事を摂ることを許そう。先ずオレが先ほど摂り、まだ暖かい豪華な羊の肉料理を、そなたにも食べさせてやろう』」
「『な、なんたる恥辱よ。アルスランよ、貴公に降れと申すか。そのような食事はいらぬ・・・。早くワタシを殺せ。ワタシの生き恥を晒してくれるな・・・』」
「『アカティル族のカブルよ。オレは貴公に、勝手に死なれたら困るのだ」
「『・・・ぬ、抜かせ・・・アルスラン。ワタシはこのエヴルの地にて殉死を。それができぬと言うのなら、、、ワタシは自らの手で、ワタシ自身の生命を―――』」
(オレはいま気づいたかのように、ややっ、っと口を開く。)
「『カブルよ、そういえば確か貴公には、母親が同じくした二人の妹君がいるそうだな。その名はなんであったか』」
(無論オレはカブルの妹妃達のその名は知っている。だが、オレの言葉を聞いたカブルの目の色が変わる。それは驚愕の、それによるものだ)
「『ッ!!』」
「『若?』」
「『うむ、イスィクよ』」
(イスィクは思案顔になってオレの意を仰ぐ。)
「『なるほどでございますね、若。つまり若は、カブル殿がもし、自らの手で逝かれた場合には、カブル殿の、そのお二方の妹妃を娶ると』」
「『ああ。オレの武功誉れある戦利品として、いつあるときも、カブルの二人の妹妃は、オレが愛でてやろう、そう思うのだ、イスィクよ』」
「『―――ほう、それはそれは若・・・っ』」
(オレは肯いた。すぐに、イスィクはオレの意が伝わったようで、イスィクは、にやり、っといやらしい笑みを浮かべる)
(そして、イスィクはその笑みを浮かべたまま―――、自身の前に差し出され、オレが与えた料理に、手を付けないカブルを見つめたのだ―――)
「『なっ・・・なん、、、だと―――っ ワタシの、二人の妹を・・・!!』」
(カブルは俺の目の前で、驚愕に眼を見開いたのだ。)
(カブルのその、動揺する目。驚愕に揺れる瞳。そのような顔でオレを、見詰めるのだ、カブルは)
(すると、イスィクは、俺の為に口を開く。)
「『カブル殿が自らの手で死なれたといたしましょう、しかし、もしそうなった場合には貴方さまの二人の妹君は、我が誉れある主の嫡子アルスラン殿の後宮へと送られることでしょう。もしや、そのあと、カブル殿の二人の妹妃が、アルスラン殿を拒めば、、、。そうなるぬためには、降伏を勧めますぞ、カブル殿』」
(そこでイスィクは一度、考える様の顔になり―――、)
「『・・・もし、カブル殿が、アルスラン殿の命に背き、自刃された場合には、、、この私アルスラン殿の、アタ・ベグであるイスィクには、貴殿のかの妹妃達の、命運はどうなることやら、、、皆目見当は尽きませぬ、、、』」
(―――やおらイスィクは話だし、そして自身の言葉を終えたのだ)
「うぐ・・・っ」
(そこでカブルは、絞り出すように、歯を食い縛りオレを見た。)
(ふむ、なるほどイスィクのやつ、こう来たか・・・。オレは、くくっ、っと悪い笑みを浮かべる。まるで頬を、口角を擡げて哂うかのように。)
「『くくっ・・・そうだ、アカティル族のカブルよ。貴公の二人の妹君の命運はオレ次第というわけだ。貴公の御母堂殿の遊牧地は何処だったか。確かエヴルより銀の尾根を越えた場所、貴公の母親の後宮の場所は、エヴルバリクよりそんなには遠くなかったかと思うが? カブル貴公の妹らはそこにいるのだよ・・・くくっ』」
「『く、くそぉ・・・―――』」
(まるで搾り出すようにカブルは苦悶したのだった。)
「『、、、そうだ。オレは、無駄な血が流れるのは、嫌いなのだ、カブルよ』」
(オレの勝ちだ―――くくっ。ま、どのみちカブルの二人の妹は、その双子の妹妃は、オレがものにするがなっ。美しく絶世の美女と噂されるカブルの双子の妹妃達は、これでオレのものだ。)
「『―――、、、っ』」
(オレは、にやにや、とした勝利の笑いを心の内に隠すのだ。まだ油断はできぬゆえ)
「『さぁ、どうするカブル?』」
「『・・・解った、アルスラン。ワタシは貴公に従って生き恥を晒そう。だ、だが妹達の尊厳を踏み躙るような非道い仕打ちや処刑はしないでくれ、頼む・・・!!このとおりだ・・・『天神』に誓って!!』
「『若』」
「『あぁ。オレも『天神』に誓ってそれを約束しよう、カブルよ』」
非道い仕打ち、処刑―――、今まだ、俺の考えには、ないがな。
「『ぐっ、、、す、すまない・・・アルスラン・・・!!』」
「『―――っ』」
(くく、、、くくくく・・・っ。見よ、皆の者っ!!この捕囚と成った憐れなアカティル族のカブルの姿をっ!! オレの勝利だ。尊き天神は、戦いにおいてオレに味方したのだ・・・!!)
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ちょび―――っ
「あ、でももう限界・・・っつ」
ちょっと漏れそう。ガバっ、っと僕は、ブラウザに釘付けになって、ドSのアルスを読んでいた席を立つ。ダダダダダッ!!ぴゅーっ。
「ドSですぅーアルスランっ」
尿をちびりそうになった僕は、自室の扉に向かってダッシュッ!!
「あと、もうちょっと―――待って、、、漏れないでっ」
ダダダダダッ―――、っと僕は思い切り家の中を走る。もう、ちょっとだけ待ってくれ・・・っ、僕の膀胱、僕の尿意っつ。