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僕は文豪。第一部、小説家志望の僕を「四十代無職」にカテゴライズしないでくれっ、僕は小説を書きたいから働かないだけだっ!!  作者: 高口爛燦
第一章 僕の決意。―僕は絶対に売れっ子作家になってやるっ!!―
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第二話 僕の、『おれうざ―俺のカノジョはうざななじみ~うざーい彼女は俺のかわいいカノジョ~―』

「ふふん♪」

 そこの港湾地区にあるイベント施設は、僕にとっては『庭』みたいなものだ。なぜかって? それはね、僕は―――


第二話 僕の、『おれうざ―俺のカノジョはうざななじみ~うざーい彼女は俺のかわいいカノジョ~―』 一


 ―――なんて言ったって、僕は何回も、何十回も、行ったことがあるから。そこの会場で開催される様々な即売会に、僕は一般参加しているんだもん。

「平日は、がらんとしているけどね」

 それはそうと、僕は頭の中で、別の事を、その想像を膨らしていく。それは、僕がサークル参加するほうの、創作系の同人誌即売会の、それに出展したときの、僕なりの当日『趣味レーション』だ。


 まだ、ちょっと想像するには早い気がするけどね、ま、いっか。

「まずはー―――」

 多くの机の中に割り当てられる僕のブース。僕はそこに―――、


 僕が書いた作品『おれうざ』を置き、そこの机に、椅子に座る僕に。

「・・・」

 リアクションを感じないんだよね、毎回、サークル参加しても、僕のブースの前は、みんな素通り。見向きもしない。されない。

 僕の作品を無料配布にしても、誰も僕に、僕のブースの机の上に並べた、僕の作品に誰も振り向いてくれないんだよね。ブースの前を通る人に、視線すら落とされないかな。


 だから、そもそも見向きもされない僕の作品を、面と向かって、そうだね、僕の作風を批判してくるような人はいない。

 少なくとも即売会イベントで僕は、ブース前で、そんな批判めいたことを言われたこともない。普通に無言で、僕の作品を手に取り、持っていってくれる人はちらほら、稀に。


 だから僕は、僕の判断で、自身の作品を無料配布にしている。

 批評・批判や感想のアクションがないのは、単に僕の知名度が低いだけかもしれないがね。

「―――」


 僕は、大学在学中に小説家になって早二十五年。小説家の僕は、想像力フル回転で、いろんな作品を書いてきた。そんな僕の作品達の背表紙の雄姿は、ほらそこに―――、おっとそこじゃないよ。埃よけにその透明なビニール袋に入れたカラフルなうすい本は、僕のコレクションさ、僕の書いた小説本はそれらのウスモノじゃなくて。


 そう、その本棚じゃなくて僕から見て、向かって右の本棚だよ。

「―――ほらそこさ」

 僕は独り言ち、自分の部屋の本棚を見た。そこには、僕が同人誌即売会イベントで配布してきた歴戦の僕の小説が並んでいる。


 印刷所に持ち込むのはバカ高いから、そのほとんどが僕の手織りだ。もちろん絵もない。表紙は題名だけを、プリンターで印刷した白紙だ。


 ほんとは絵師さんに頼んで、僕の小説の挿絵を描いてもらいたいんだけど、僕には、絵師さんの伝手はないし、頼むにはお金がいるし。

「だって絵師さんに頼むのはちょー高いって聞くし」

 僕は独り言ちた。かと言って、僕には絵の才能はないもん。絵に振る時間があれば、僕はその分の時間を、執筆に使いたいね。


「ふふん♪」

 僕ちょーすげーっ。この数年で僕の本棚の半分が僕の、僕の為の、僕による僕の作品だ。

 それら、僕著作の僕の同人小説の背表紙には、僕のペンネーム『Edgeカイト』を、僕は手書きで記した。だって僕の本名の刃櫛 書Hakushi Kaitoを、その名を背表紙に書くのは恥ずかしいし、こわいもん。


「僕は絶対売れてやるぅうううううッ」

 僕の心の思いの丈だ。僕は毎日、この言葉を叫ぶようにしてる。『僕は絶対売れてやる』この思いの丈を毎日叫んでいれば、いつかは絶対僕の作品は売れる気がするんだ。僕は売れて、周りの奴らを、僕をバカにした奴らを、絶対見返して、吠え面をかかせてやる!!

 ふと、

「―――」

 僕は真面目になって執筆に戻る。さっきの執筆の続きだ。えっとどこまで書いたんだっけ?



「―――」

 そうここの部分からだ、次に僕が、執筆していく箇所は。

///

「『うぅ・・・ぅく・・・ヒック・・・、かいとくんは・・・かいとくんは・・・、ほんとは・・・ひっく・・・

うっく・・・ぐしゅ・・・私のことが・・・ぐす・・・嫌いなんだ・・・』」


 僕はヒロインの台詞を口に出し、そう。えっと、ここ、ここ。


///

 (うわぁ・・・でたよ、妃紗の『泣き落とし』作戦・・・。)

「『い、いや、嫌いとかじゃなくて・・・妃紗。俺は』」

「『ぐす・・・ぐしゅ・・・うぅ、かいとくん・・・スンスンっ』」

 (っつ・・・妃紗の『泣き落とし作戦』が出るぐらいまで妃紗に強く言ってしまった、、、。俺が悪かったか・・・。っつ・・・ミスったな俺。)

「『すまん、悪かった。俺が言い過ぎたな妃紗、ごめんよ、ほんとに』」

 (ごそごそっ、と俺は机の中から午後の授業で提出しないといけない宿題を引っ張りだす。)

「『今回だけだからな。さっさっと写せよ、妃紗』」

「『てへっ♪ ありがと、さすがかいとくん♪ 私達幼馴染だもんねっ♪ 次の授業の先生、優しいからそのときに写すね♪』」

「『・・・え゛』」

 (授業中じゃなくて今写せよ、妃紗。)

「『やったーっかいとくん♪わーい!! っつ』」

 (分捕られるっ俺の宿題ノートが妃紗に持っていかれるっ!!)

「『あ・・・っ』」

 (ぶん、っと妃紗は俺が手に持つ宿題ノートを分捕って、意気揚々と水を得た魚のように彼女妃紗は自分の席に戻っていく・・・。)

「『・・・妃紗。かわいい(ぼそっ) 』」

 (―――と、俺は呟いた。ムッ、っとするところもたまにあるけれど、妃紗のやつは。今の妃紗はちょっとかわいかった。)

 ふっ、っと、ふと妃紗の脚が止まる。

「『ねぇねぇ、かいとくん、何か言った?』」

「『・・・いや、なにも』」

「『ふ~ん、くすくすっ♪』」

 (妃紗は一度だけ振り返ると微笑み、自分の席に戻っていった。)

///


「よしっキリのいいところ!!」

 っと、僕はちょうどキリのいいところで、僕は顔を上げた―――。

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