第一話 僕の小説家としての日常
第一話 僕の小説家としての日常
「ふむ―――、えぇっと―――、『かいとくんかいとくんかいとくんかいとくんっ!!かいとくんの所為で先生に怒られちゃったよぉ!!』」
カタカタカタ―――、っと僕は、僕の頭の中で描きながら書く、作中の登場人物の台詞を呼びながら、キーボードをタイプするんだ、そういうタイプの執筆の仕方なんだ僕は。
「『先生に怒られた?それは妃紗きみの自業自得だろ?―――妃紗が宿題をやってこなかったから・・・』」
「『ううん、それ違~う!! かいとくんが私に宿題を写させてくれなかったからっ!!だから私が先生に怒られたのはかいとくんの所為なんだよっ。かいとくんがぜーんぶ悪いんだよぉ~っうわーんっ!!』」
「『・・・いや、それは・・・、、、』」
「『かいとくんが写させてくれなかった宿題っ白紙だったんだも~ん。私とかいとくんは幼馴染でしょっ!! 幼馴染は助け合うものなんだも~んっ』」
「『あのな、妃紗。宿題と言うのは、自分の力でやらないといけないんだよ。それじゃないと、妃紗のためにならないし』」
「『うぅ・・・ぅく・・・ヒック・・・、かいとくんは・・・かいとくんは・・・、ほんとは・・・ひっく・・・うっく・・・ぐしゅ・・・私のことが・・・ぐす・・・嫌いなんだ・・・』」
ぶつぶつぶつ、っと僕は独り言を呟きながら、キーボードをカタカタカタ―――、とタイプする。
僕の書く『』で閉じた文章は、僕の執筆する作中の登場人物の台詞だ。僕はいつもそう、声に出しながら、物語を執筆するんだ。
「『かいとくんかいとくんかいとくんかいとくんっ!!』」
ちょっとここ、文章にするとちょっと分かりにくいかな? 僕は推敲作業でその『』の台詞だけを何度も何度も繰り返し、ぶつぶつと声に出して読み、変なところがないか自分なりに検証していく。
(うわぁ・・・きたよ、妃紗の泣き落とし・・・。)
う~ん、っと僕はいまいちしっくりとこなくて首を傾げた。()で括った主人公の心情、ここのところを、もうちょっと捻りたいかなぁ。
僕は主人公視点もしくは第一人称で、物語を書いていく。でも、たまには第三者視点でも書いたりするけど、今書いている物語は、主人公魁斗の視点で物語が推移していく、ように構成を行なった。
僕が今書いている作品は、ほかほかほのぼのとした心温まる学園ものだ。主人公『魁斗』と幼馴染の女の子達が繰り広げる日常のほかほかした、ほのぼのとしたお話だ。
シナリオをとおして、ゆくゆくは主人公『魁斗』と正ヒロイン『妃紗』の幼馴染関係は、恋愛に発展させていくつもりだ。
「・・・」
僕は文豪だ。と言っても、僕は『文豪』というものを独自に、僕自身の基準で解釈し、カテゴライズしている。
僕のいう『文豪』とは、売れている売れっ子作家のような人物を指さず、僕の『文豪』という人物像は、『僕自身』だ。
書いている年数や執筆速度、そして『犠牲指数』が大きい人物のことだ。『犠牲指数』というのも、僕による僕自身の僕の為の造語であり、僕が解釈する指数基準だ。僕はそれを自分自身にだけに使う用語として『犠牲強度』とも言う。
ちなみに―――、
「どいつもこいつもっ」
―――僕は独語が多い。ドイツ語ではなく、独り言のほうだ。そこは、僕は自覚している。
僕は僕の書いた小説を、大手出版社から中小出版社に応募し続けて早二十五年。その書き続けてきた二十五年は、僕の、僕の中の、僕でのみ通用する、僕の心の内なる世界で通用する造語であり、僕の小説執筆に費やした二十五年という歳月は、僕の内なる世界の、僕と言う人間が、これまでの自身の人生で燃やしてきた歳月だ。
僕は、心の中で考え、僕の人生を消費したのは小説執筆の失費であり、そこの犠牲度を自分なりに算出し、僕の基準で数値化されたそれは、即ち僕の『犠牲指数』であり、僕の作家人生の小説執筆に賭けた『犠牲強度』だ。
でもね―――、
「うおおおおーーーっ」
―――誰も僕の作風を理解してくれないんだ。よって、僕の小説作品が書籍化されたことも、当然アニメ化したこともない。コミカライズも、だ。
でも、僕は自分の作品をネット上の、『小説投稿サイト』には投稿していない。でもそのサイトを僕は、定期的には読んだりはしているんだ。
なぜ『あげない』のか、だって?だって、自作の小説をネット上にあげるのは『こわい』でしょ? 叩かれたりするんだよね? 自分の作品が批判されるんだよね? あぁそれはこわいなぁ、僕。
「あ、でも―――」
十数年前から僕は創作系に特化した『創作系オンリーの同人誌即売会』に、毎年、秋冬毎回参加しているよ。
あ、売り手のほうの、サークル参加でね。
「ふふんっ♪」
僕が参加するその同人誌即売会は、港湾地区にある二つの逆三角形がトレードマークの、そのイベント会場で開催される『日本最大の同人誌即売会』ではなく、いつもだいたいその、『日本最大の同人誌即売会』の一週間後から二週間後に、同じ会場で執り行われる『日本で最大の創作オンリーの同人誌即売会』だ。
「だって、『日本最大の同人誌即売会』のほうに、サークル参加するのは、、、」
ちょっと気おくれしちゃうし、、、それに僕の書いている、書いてきた作品は―――
「創作系のオリジナル作品だもん」
だからこそ、僕は毎年二回、春と秋に、その創作系のみを集める同人誌即売会に、サークルとして参加しているんだ。
ちなみにその『創作系の同人誌即売会』が開催される会場は、『日本最大の同人誌即売会』と同じ場所。港湾地区にある国際展示館見本市会場だ。
「ふふん♪」
そこの港湾地区にあるイベント施設は、僕にとっては『庭』みたいなものだ。なぜかって? それはね、僕は―――