72.平和な日常
フレイグ様の活躍により、私の個人的な問題から人間と魔族の問題まで、あらゆることが解決した。
彼のおかげで、私も世界も平和な日常を送れているのだ。
「いやあ、お嬢ちゃんの問題も解決したし、色々なことが無事に終わって本当に良かったな……」
「ええ、そうですね……」
私は、フレイグ様ラフードとクーリアとともに裏庭に出てきていた。
平和な世界になって少ししてから、私達はあることを思い出したのである。
それは、ラフードのお墓のことだ。彼は生きているので、このお墓は撤去しなければならない。
「それにしても、立派な墓だよな……まあ、俺としてはこれを自分で見るのは、少々複雑な気分ではあるが」
「そこまで立派でもない」
「いや、専門家でもないお前が作ったにしては立派だろう。そりゃあ、正式なものに比べたら劣るかもしれないが……」
「え? このお墓って、フレイグ様が作ったんですか?」
「ああ、そうだが……」
ラフードとフレイグ様の会話に、私は驚いていた。
目の前にあるお墓は、それなりに立派なものだ。見た目は綺麗だし、文字も刻まれている。
それは、普通に専門家が作ったものだと思っていた。しかし、実際はフレイグ様が作ったものらしい。それは、かなりすごいことだろう。
「フレイグ様って、器用なんですね?」
「いや、俺はそんなに器用ではない」
「まあ、確かに器用とは言い難いだろうな……色々と不器用な部分がある」
「……何故お前が俺のことを代弁しているんだ?」
「おっと……」
フレイグ様は、私の言葉を否定したが、これだけのものが作れるのは充分に器用といえるだろう。
ただ、ラフードの言っていることがわからない訳ではない。フレイグ様は、少々不器用な部分があるのも確かなことだろう。
「いや、悪い。つい今まで通り、茶々を入れてしまった……」
「……お前は、いつもそんなことを言っていたのか?」
「まあ、そうだな……」
「……」
「なんだよ、その目は」
フレイグ様とラフードは、楽しそうに会話をしていた。
ラフードやクーリアが肉体を取り戻せたことも、幸いなことである。二人の様子を見ていると、改めてそう思う。
「さて、それでこのお墓はどうするんですか?」
「うん? ああ、そうだな……ここまで来て、こんなことを言うべきではないかもしれないが、残しておいてもいいんじゃないか?」
「残しておくの?」
「ああ、せっかくフレイグが作ってくれたものだし、俺が本当に死んだ時に、再利用してくれればいい」
「……そうか」
ラフードは、このお墓を残しておく決断をした。
それはきっと、フレイグ様が自分のために作ってくれたこのお墓に思い入れがあるからだろう。
ラフードはまだまだ若いが、別にお墓を作っていても問題はない。このお墓は、遠い未来にまた利用される。それでいいのだろう。




