64.仕掛けられた罠(フレイグ視点)
俺は、荒野をゆっくりと歩いていた。
ここには、ラムフェグが罠を仕掛けているはずだ。だが、俺はそこを敢えて無防備で歩いている。
「む……!」
そんな俺は、自らの周りに何かの気配を感じた。
しかし、その時には既に遅く、俺は光の触手のようなものに囲まれた。
やはり、ラムフェグは俺の予想通り、罠を仕掛けていたらしい。わかっていたことではあるが、これは厄介だ。
「ぐっ……!」
俺に向かって、触手が素早く伸びてきた。
それを剣で捌くが、数が多すぎる。俺の体に光の触手が絡みついて来る。
俺は、触手によって動きを封じられた。そんな俺の前に、見覚えのある鎧が現れる。
「ふふふ、無様な姿だな、フレイグ……」
「ラムフェグ……」
ラムフェグは、笑みを浮かべていた。俺が罠にかかり、奴としてはご満悦なのだろう。
何度も相対してきたため、奴の性格はよくわかっている。恐らく、自らの手で俺を屠るために、このような拘束する罠を仕掛けたのだろう。
しかし、それは奴の油断だ。もっと恐ろしい罠を仕掛けいれば、戦いを有利に進められたはずなのだが。
「ここで、貴様は終わりだ! この手で八つ裂きに……うぐっ!」
次の瞬間、ラムフェグは後ろから貫かれた。漆黒の剣が、奴の胸に開いていた穴の部分に突き刺さり、その体を破壊したのである。
「な、何……」
突然の出来事に、ラムフェグは驚いていた。
それは、そうだろう。俺の他に戦える人物が、この場にいる。それは、奴にとっては信じられないことであるはずだ。
ラムフェグは、ゆっくりと後ろを向く。そして、その目を大きく見開いた。
「……貴様は、ラフード?」
「よう……久し振りだな、兄弟」
ラムフェグの後ろにいたのは、ラフードだった。
生身の肉体のあいつに、流石のラムフェグもかなり混乱しているようだ。
そんな奴の様子も気にせず、ラフードは剣の柄に噛みつき、それを一気に引き抜いた。そして、そのまま新たなる攻撃を繰り出す。
「ぬぐあっ!」
その一閃によって、ラムフェグの体は二つに分かれた。胸の大穴から遮断された肩から上が地面に零れて、残った体もゆっくりと倒れていく。
「おごっ……どうして、お前がここに、その姿で……」
「さて、どうしてだろうな……」
ラムフェグが倒れたのを見てから、ラフードは俺に絡みつく触手を切り裂いた。これで俺も自由の身だ。
そんな俺達の様子を、ラムフェグは未だ驚いた目で見ている。未だにその混乱は、収まっていないようだ。




