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6.友から見た彼

『さて、俺の自己紹介はこんなものでいいだろう。今度は、こっちから質問してもいいか?』

「あ、はい。どうぞ」

『あ、お嬢ちゃん、俺にそんな堅苦しくなる必要はないぞ? 貴族だとか、そういうしがらみなんて、俺にはないからな』

「えっと……それじゃあ、そうさせてもらう、ね?」

『おうよ』


 ラフードに促されて、私はその口調を変えることになった。

 こんな風に話すのは、あまり慣れていない。そのため、少々ぎこちなくなってしまう。

 私には、友達もいないし、家族もあんな風だ。気軽に話す機会なんて、今までまったくなかったのである。


『お嬢ちゃんは、フレイグの婚約者……というか、お嫁さんということでいいのか?』

「そうだね……うん。私は、フレイグ様と結婚するためにこっちに呼ばれたんだ」

『あいつが結婚か……まあ、貴族だから当然なのかもしれないが、あんまり想像できることではないなぁ……』


 ラフードは、何かを思い返すように天井を見つめていた。恐らく、フレイグ様との思い出を振り返っているのだろう。

 友人が結婚するということに対して、彼もまだあまり実感は湧いていないのかもしれない。特に、フレイグ様はあんな感じだから、よりそう思うのだろうか。


『おっと、勘違いしてもらったら困るけど、あいつは別に悪い奴じゃないんだぜ? まあ、多少不愛想だし、口は悪いし、俺の扱いは雑だったけど、本当は優しい奴なんだ』

「そ、そうなんだ……」


 ラフードは、慌てたようにフレイグ様のことをフォローした。しかし、これはフォローなのだろうか。

 不愛想で、口が悪くて、扱いが雑。それはまったく褒めているように思えない。

 だが、それを語っている彼はとても楽しそうだ。彼にとって、フレイグ様は本当に大切な友人なのだろう。それがその表情から伝わってくる。


『さっきのだって、そうなんだ。あいつが一人で行動するのは……他の誰かにも傷ついてほしくないからなんだよ』

「え?」


 そこで、私は思いもよらないことを言われて面を食らった。

 先程の会話、私が余計なことを聞いてしまった会話も、ラフードはしっかりと聞いていたようだ。


『もちろん、言っていることの半分は本当なんだとは思うぜ。あいつは、滅茶苦茶に強い。下手な奴なら、足手まといになるくらいには……』

「……その強さは、私も目の当たりにした。でも……」

『ああ、お嬢ちゃんが言いたいことはわかっている。どれだけ強くても、一人は危険だよな。せめて、俺がいれば違うんだが……』


 ラフードは、少し困ったような顔をしていた。

 もしかしたら、彼がこうなる前、二人はコンビで活動していたのかもしれない。その言葉と表情からは、そんなことが読み取れる。

 それに、今のラフードがフレイグ様にそれ程干渉できないのもなんとなくわかった。それができるなら、こんな風に悩んだりはしないはずだからだ。


『あいつはさ、なんでも一人で背負い込もうとするんだよ。周りの人を傷つけるくらいなら、その方がいいってな。そして、質の悪いことに、それでほとんどのことを解決できてしまうんだ』

「それだけ、フレイグ様は強いんだね……」

『ああ……そんなあいつの姿を見ていたらさ、周りの奴もそれでいいと思ってしまう。だから、あいつはずっと一人で行動しているのさ』


 ラフードの説明を聞いて、私はあの時のフレイグ様の表情が、どういう感情からきたものかを少し理解した。

 恐らく、彼はその真意を話すのが恥ずかしくて、どう答えていいものか困っていたのだろう。

 ラフードの話を総合すると、彼がそういう人間であることは想像できる。彼は多分、不器用な人間なのだ。

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