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継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。  作者: 木山楽斗


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59.屋敷内での攻防

「はあっ!」

「ふん!」


 二人は、同時にお互いに向かって行った。

 その直後、周囲に金属がぶつかり合う音が響く。二人の剣が、重なったのだ。


「くっ……」


 ラムフェグの体が、少しずつ後退していく。どうやら、状況はフレイグ様の方が優勢のようだ。


『剣の腕なら、フレイグの方が上だ。ただ、あいつの厄介な所は、あの頑丈な体がある。それが、厄介な部分だ』

「そっか……あの見た目通り、頑丈なんだったね」

『ああ……』


 ラフードの言葉に、私は自らの認識が甘かったことに気づいた。

 鎧という見た目の通り、ラムフェグは人間よりも固い肉体を持っている。いくら剣の腕が上回っていても、簡単なことではないのだ。


「やはり、貴様は強い……残念ながら剣の腕では勝てないか。だが、貴様もわかっているだろう。私の真価は防御力にあるということを」

「……」

「だから、私に攻撃してこない……私がお前の攻撃に耐えて、反撃してくるとわかっているからだ」


 ラムフェグは、また笑みを浮かべていた。

 フレイグ様優勢に見えていたが、実際はそうではない。この段階でも、二人の力は拮抗しているようだ。


「さて……ただ、このままでは私も勝てないか」

「くっ……」


 ラムフェグは、大きく後退してフレイグ様から距離を取った。

 流石に彼も、攻め手がないため後退せざるを得なかったようだ。


「……おっと、よく考えてみれば、そこに丁度いい的があったな」

「え?」


 そこで、ラムフェグの視線がこちらに向いた。

 その視線に、私は自分の過ちを悟った。どうして、私がここに留まっていたのだろうか。よく考えてみれば、私はフレイグ様の隙である。


「ふん! 足手まといを残していたことを後悔するがいい!」


 ラムフェグの指に、光が宿った。そこから、ゆっくりと光線が伸びてくる。


「ごっ……!」


 次の瞬間、状況が大きく動いた。ラムフェグが、ゆっくりとその場に膝をついたのである。

 それを私はフレイグ様の背中越しに見ていた。彼が、私を庇うように立って、あの光線を跳ね返したのだろうか。


「やはり、ラフードが何かを仕掛けていたか……」

「え?」

『ははっ……悪いが、お嬢ちゃんのことを少し利用させてもらった。あいつが狙ってくることは予測できたからな。俺がバリアを張っていたのさ』

「それで、あの光線が跳ね返ったの?」

『ああ、そういうことだぜ』


 ラフードの言葉に、私は驚いた。

 まさか、そんなものが張ってあったなんて思ってもいなかったからだ。

 ただ、思い返してみれば、私を逃がそうとしていた彼がこの場から離れろと言わなかったのはおかしなことである。

 どうやら、私はラフードの策略に用いられたようだ。それをわかっていたフレイグ様もだが、二人ともすごいものである。

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