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継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。  作者: 木山楽斗


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55.尽きない心配

 私は、ゆっくりと屋敷の廊下を歩いていた。

 私はこれから、フレイグ様の元を訪ねようと思っている。そろそろ明日の準備もできただろうし、少し話しておきたいのだ。

 本来ならば、戦いの前に声をかけるべきではないのかもしれない。ただ、フレイグ様の表情がどうしても気になって、私は彼を訪ねることにしたのだ。


「……失礼します」

「……アーティアか? 入っていいぞ」

「はい……」


 執務室の戸を叩くと、フレイグ様はいつも通りの口調で応えてくれた。

 戦いの前日であるが、落ち着いているようだ。それを悟り、私はもしかしたら自分の考えが杞憂なのかもしれないと思った。

 だが、ここまで来たのだから、引き返すことはできない。そう思いながら、私はゆっくりと執務室の中に入っていく。


「……どうかしたのか?」

「えっと……フレイグ様に、少し伝えたいことがあって」

「伝えたいこと? なんだ?」


 私の言葉に、フレイグ様は見ていた書類を置いた。

 こんな時であるというのに、まだ仕事をしているとは驚きだ。しかし、彼らしいといえば、そうだともいえる。


「明日、フレイグ様は戦いに向かわれます。そんなあなたに、一つだけ覚えておいて欲しいことがあるのです」

「なんだ?」

「帰って来て下さいね」

「……何?」


 フレイグ様は、少し目を見開いていた。恐らく、私の発言に驚いているのだろう。

それは、当たり前のことだ。急にこんなことを言われたら、誰だって驚くはずである。

 しかし、これは言っておかなければならないことだ。なぜなら、そう言っておかなければ、彼は帰って来ないようなそんな気がするからである。


「……もちろん、帰って来るつもりだ。ラムフェグを倒して、俺は平和を掴まなければならないからな」

「……はい」


 フレイグ様は、少し目をそらしながらそう答えてくれた。

 その返答を聞いて、私の疑念はさらに深まっていく。

 どうしてだろうか。私は、彼が何故かこの戦いから帰って来ないようなそんな錯覚を覚えてしまっているのだ。


「そんなに心配する必要はない。俺は以前、ラムフェグに勝っている。今度も勝つだけのことだ」

「……そうですよね」


 私は、フレイグ様の言葉にゆっくりと頷いた。

 彼が強いことは、私もよくわかっている。そのため、安心していいはずだ。

 しかし、私はその言葉を受け入れられない。どうしてか、心配になってしまうのである。

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