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継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。  作者: 木山楽斗


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53.突然の知らせ

「……失礼します」

「む?」


 私達が談笑している中、部屋の戸がゆっくりと叩かれた。

 この声は、シャルドさんの声だ。


「シャルドさんか……どうかしたのか?」

「フレイグ様、連絡が入りました」

「……そうか」


 部屋の中に入って来たシャルドさんは、フレイグ様に短くそう告げた。

 それが、なんの連絡かは予想することができる。恐らく、ラフードの部下だった魔族達から連絡が入ったのだろう。


「どんな連絡が入ったんだ?」

「ラフードの部下からの知らせです。ラムフェグの復活を確認できたようです」


 シャルドさんの言葉に、フレイグ様は表情を変えた。

 ラムフェグの復活が確認できた。それは、事態が動き始めるという合図だ。

 だから、彼の表情は真剣なものになったのである。談笑していた先程までとは、その表情はまったく違う。


「他に情報は?」

「ラムフェグは、かつての自分の部下に働きかけて、何かを企んでいるようです。ラフードの部下達が掴んだのは、そこまでのようです」

「なるほど……」


 当然のことながら、ラムフェグもかつての部下を頼っているようだ。

 その者達を使って、彼は何を企んでいるのだろうか。

 話に聞いた通りの魔族であるなら、彼は争いを望んでいるはずだ。つまり、今はその火種を探しているのだろうか。


『狡猾なあいつのことだ。何かを狙っているのは、まず間違いないだろうな……』

『ええ。しかし、彼の部下達もかつてのような勢いはないはずです。皆、彼のように争いを望んでいるという訳ではありませんから』

『まあ、単に争いを望んでいる奴は、あいつくらいだろうさ……だが、人間に復讐しようと考えている魔族はいる』

『確かに、血気盛んな魔族は、結果的に彼に賛同しますね……』

『厄介なことだ……例え勝ちの目がなくても、あいつらは戦いをやめようとしねぇ』


 ラフードとクーリアは、その顔を歪めていた。

 ラムフェグが行動を開始している。それはわかっていたことだが、嫌なことだ。

 これから、彼は騒乱を起こそうとするだろう。フレイグ様は、それを止めるために動かなければならないのだ。


「シャルドさん、俺は魔界に向かおうと思っている」

「やはり、そうなりますか……」

「ああ、ラムフェグは強大な力を持っている。それに対抗できるのは、俺くらいだ」

「いつ出発しますか?」

「明日にはここを発ちたい」

「わかりました。それなら、こちらも準備を進めておきます」

「ああ、頼んだ」


 フレイグ様は、魔界に向かってラムフェグを討伐するつもりらしい。

 それも、わかっていたことだ。しかし、私は心配になってくる。本当に、大丈夫なのだろうかと。

 それは、フレイグ様の表情を見て思ったことだ。彼のその憂いを含んだ表情が、私はなんだか気になってしまったのである。

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