51.変わった雰囲気
「……なんというか、フレイグ様は少し雰囲気が変わりましたね?」
「……変わった?」
「はい。前よりも少し柔らかくなったような気がします」
フレイグ様は、少し変わった気がする。
どうしてそうなったのか、その理由は言うまでもないだろう。ラフードが生きていることを知ったからだ。
そのことが、彼の心を少しほぐしたのだろう。
「それを言うなら、お前も少し変わったんじゃないか?」
「え?」
「自覚していないのか?」
フレイグ様の言葉に、私は少し驚いた。
しかし、すぐに理解する。確かに、私もフレイグ様に対する態度が、少し変わっているかもしれない。
「……確かに、言われてみれば、そうかもしれません」
私は、今までフレイグ様に隠し事をしていた。それがなくなって、心が少し軽くなったのかもしれない。
それに、ラフードとの話も影響しているだろう。彼と話すことによって、私は誰かと会話するということに慣れてきたのかもしれない。
「ラフードのことが伝えられたことが、大きいのかもしれません」
「……隠していたことに、罪悪感を覚えていたのか。そういえば、最初に謝って来ていたな……」
「それは……」
「気にする必要はない……大方、ラフードが黙っているように言ったのだろう?」
「え?」
フレイグ様の言葉に、私は驚いた。なぜなら、それが図星だったからである。
「やはり、そうだったか。あいつなら、そう言うだろうと思っていた」
「そうなんですか?」
「そういう奴だったからな……それに、そんな話はそもそも普通信じられないものだ。黙っている方が、自然とさえいえる」
私に対して、フレイグ様はそのような言葉をかけてくれた。
それは、私を励ますためにそう言っているだけなのかもしれない。だが、そうだとしても嬉しい言葉だ。
「フレイグ様は……本当にお優しい方ですね」
「優しい?」
「あ、いえ、私のことをいつも気遣ってくれますから、そう思ったんです」
フレイグ様の優しさに触れて、私は思わずそれを口にしていた。
そのことに、彼は驚いているようだ。それは当たり前である。急にこんなことを言われて、困惑しないはずはない。
「……俺が優しいか」
「ど、どうかしましたか?」
「いや……お前は、やはり不思議な奴だとそう思っただけだ」
「どうしてですか?」
「悪い意味ではない」
フレイグ様が何を言っているのか、私は少しわからなかった。
優しいという言葉で、どうして不思議な奴となるのだろうか。その繋がりが、よくわからない。
悪い意味はないらしいが、あまり納得できなかった。一体、どういうことなのだろうか。




