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4.難しい人

「……フレイグ様、少し聞いてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「えっと……あなたは、どうしてあの場所に?」


 フレイグ様は、いい人であるように思える。少し無口ではあるが、その裏には優しさが隠れているように私は今までのことから感じていた。

 だが一方で、冷酷無慈悲であるという噂は、間違っていないのかもしれない。野盗達に対して、彼は容赦も情けもなかったからだ。

 そんなフレイグ様に、私は少し気になっていることを聞いてみることにした。そうすることで、疑問のついでに彼の人となりも理解できるのではないかと思ったからである。


「最近、野盗が現れたという情報があったからだ。その辺りを捜索していた所、お前が襲われている場面に遭遇したという訳だ」

「……一人で捜索していたのですか?」

「ああ」


 私は、フレイグ様の言葉に驚いていた。

 もちろん、辺境伯である彼が領地を守るために動くことは理解できる。だが、だからといって、一人で野盗を捜索するなんて正気ではない。危険ではあるし、どう考えても無理なことだ。


「どうして、そんなことを……?」

「俺一人の方が行動しやすいからだ」

「でも、危険じゃないですか?」

「問題はない」

「問題ないなんてそんな訳……」


 フレイグ様は、私の質問に淡々と答える。まったく表情を変えずに、そんなことを言っているのだ。

 確かに、彼はとても強かった。野盗達がまったく敵わない程、見事な剣技を私は実際に見ている。

 しかし、それでも一人で行動するのは危険だとしか思えない。問題ないなんてことが、あるのだろうか。


「……」

「……えっと」


 そんな私の心配に対して、フレイグ様は少し表情を変えていた。それは、あまりいい表情ではないような気がする。

 恐らく、私の心配は彼にとっては鬱陶しいものなのだろう。それが、なんとなく理解できた。

 確かに、まだ彼のことをよく知らない私がこのように心配するというのは、おかしな話なのかもしれない。彼にだって色々と事情はあるのだろうし、この話はここで一旦中断するべきだろう。


「それで聞きたいことは終わりか?」

「あ、はい……そうですね」

「それなら、俺は隣の部屋に行かせてもらう。後は、ゆっくりと休むといい」

「ありがとうございます」


 それだけ言って、フレイグ様は部屋から出て行ってしまった。

 やはり、私の質問が不快だったのだろうか。そう思いながら、私は少し反省する。

 フレイグ様は、噂通りの冷酷無慈悲な辺境伯という訳ではない。だが、それでも結構難しい人ではあるようだ。

 基本的に、私は人と話すのがそこまで得意ではなかった。これから彼と話す時は、もっと熟考してから考える必要があるのかもしれない。


『相変わらず、あいつは冷たいなぁ……』

「……え?」


 そんなことを考えている私の耳に、突如声が聞こえてきた。

 それは、聞いたことがない声だ。男性の声のように思える。しかし、一体どこから聞こえてきているのだろうか。この部屋には、今私しかいないはずなのだが。


「……ええっ!」

『おわっ! なんだ!?』


 そう思って辺りを見渡した私は、天井付近に漂う謎の生き物を発見した。

 その生き物は、黒い狼のような姿をしている。ただ、後ろ脚や尻尾はない。

 その見た目から、私は頭上にいるのが幽霊であると理解した。どうしよう。怖い。そんな感想を抱いて、私は震えるのだった。

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