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継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。  作者: 木山楽斗


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37/73

37.領地の様子は

 私は、引き続きフレイグ様とともに町を歩いていた。

 メーファルドという町は、平和で賑やかな町である。それはきっと、フレイグ様の統治があってこそだろう。

 それは、領地の民のことを見ていればわかる。彼は、領民から慕われているのだ。


「フレイグ様は、いい領主なのですね?」

「……別にそんなことはないと思うが」

「領地の皆さんに、慕われているではありませんか。それは、フレイグ様が良き領主である証拠です」

「俺が慕われている?」


 私の言葉に、フレイグ様は少し不思議そうな顔をしていた。

 どうやら、彼は自分自身が慕われているということを理解していないようだ。

 だが、先程からの領民の態度を見ていれば、彼が慕われているのは明白である。領民達は、フレイグ様を見て穏やかな笑みを浮かべているのだ。その安心したような表情は、彼が悪い領主だったら出ないものだろう。


「ミラーナさんとジルースさんも、フレイグ様のことを慕っているようでしたし……」

「あの二人も、別に俺のことを慕っている訳ではないだろう。同胞というだけだ」

「そうでしょうか? 私は、そのように見えましたけど……」


 ミラーナさんとジルースさんは、間違いなくフレイグ様を慕っていたはずだ。

 二人の目には、少なからず羨望などいった感情が混ざっていたように感じられた。かつての被害者同士というだけではないはずだ。

 考えてみれば、この町の人々はフレイグ様が魔族によって両親を失い、その後最前線で戦っていたことを知っているだろう。領主が何をやっているかくらいは、領民だって知っているはずだ。

 そんな彼を慕ったりするのは、自然なことのような気がする。統治がきちんとさえしていれば、慕わない理由がないくらいにも思える。


「お前からそう見えるなら、そうなのかもしれないな……俺には、あまりよくわからないことだが」

「ええ、多分そうだと思います」


 フレイグ様は、そんなことはわかっていないのだろう。

 彼の中では、両親の意思を継ぎ、町を守るために戦っただけ。そんな所なのかもしれない。

 しかし、それは町の人から見れば、英雄のように思えるだろう。本人からすればわからないのかもしれないが、そのはずだ。


「……」

「……どうかしたのか?」

「あ、いえ、なんでもありません……」


 私は、ふとフレイグ様の顔を見ていた。

 彼は、いつも淡白だ。領民達からの評価についても、その淡白さが出ているのだろう。

 だが、彼は他人に優しくすることはできる。気遣いもできる。全てに淡白という訳ではないのだ。

 私は、少しだけ理解した。彼はきっと、他人からの関りに淡白なのだと。それがどうしてなのか、私は少し考えるのだった。

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