32.町に出て来て
私は、フレイグ様とともに町に出てきていた。
それは、私が頼んだからである。辺境伯の夫人になるにあたって、領地の様子を少し確認したいと思ったのだ。
継母のことといった色々な問題はある。だが、それでもそういう大事なことは忘れてはならない。
前提として、私はフレイグ様の妻になるのだ。その役割を果たさなければならないのである。
「この町は、賑わっていますね……」
「ああ、そうだな」
という訳で、私は辺境伯の屋敷から一番近い町に来ていた。
ここは、メーファルドという町らしい。辺境伯のお膝元ともいえるこの町は、とても賑わっている。その様子を見ただけでもわかる。フレイグ様が、良き領主であるということが。
「フレイグ様は、町の様子を見に行ったりされるのですか?」
「領主としてある程度の役割は果たすことにしている。手が回らないこともあるが、できるかぎり領地の様子は気にかけている」
「そうですか」
私の質問に、フレイグ様はそう答えてくれた。
その答えは、どこかぶっきら棒である。だが、それは恐らく謙遜しているからなのだろう。
私は、既になんとなくわかっている。フレイグ様が、自らの領地にきちんと目を向けていると。
「……あれ? フレイグ様ではありませんか?」
「む……」
そこで、フレイグ様に話しかけてくる者がいた。それは、私達と同年代くらいの女性である。
その女の子を見て、フレイグ様は少し表情を変えた。それはなんとなく、気まずそうな顔であるような気がする。
「ミラーナ、待ってよ」
「ジルース、フレイグ様がいたよ」
「え? フレイグ様が……?」
そんな女性を追いかけるように、今度は男性が現れた。彼も、私達と同年代くらいに見える。
彼を見て、フレイグ様の眉が少し動いた。よくわからないが、二人ともフレイグ様にとってはあまり会いたくない存在だったようだ。
『おっと、こいつは中々大変なことになってきたな……』
そんなフレイグ様の様子に、ラフードは苦笑いを浮かべていた。
その笑みから考えると、彼は事情を知っていそうだ。この二人は一体、何者なのだろうか。私は、それがとても気になっていた。
「あれ? そちらの女性はもしかして……」
「え? ああ、そういえば、そんなことを言っていたような気がするね……」
そこで、二人の視線がこちらに向いた。
私を見ながら、二人は笑顔を浮かべている。それは、一体どういう笑みなのだろうか。
疑問だらけで、私は困惑していた。とりあえず、二人が何者なのかということから、聞いていった方がいいだろう。




