31.許されざる悪事
「……俺は、お前の継母をのさばらせておくことが危険なことだと思っている」
「え?」
「貴族というものは、綺麗事だけで生きている訳ではない。時には、汚い手も使う。だが、お前の継母は度を越えている。野盗を利用して、娘を消そうとするような貴族をこれ以上この国にのさばらせておく訳にはいかない」
フレイグ様は、真剣な顔でそのようなことを言ってきた。
どうやら、彼は私の継母をかなり危険視しているようだ。
確かに言われてみれば、彼女はかなりあくどいことをしている。自分のことばかりに目がいっていたが、彼女の狂気が外部に向けられれば、恐ろしいことになるだろう。
「確かに野盗は厄介な存在だ。それを利用することに対して、色々と言いたいことがあるのも理解できる。だが、今回に関して、奴らが裏切る可能性は低い。裏切れば、死が待っているからだ。お前の継母は頼りにならない以上、あいつらに後ろ盾はない」
「それは……」
フレイグ様は、とても冷たい目をしていた。
それは、本当に実行するという目だ。彼は、裏切った野盗を本当に殺すつもりなのだろう。
「そして、奴らは例え減刑しても牢屋行きになる。そこで反省するかどうかは話は別だが、自由の身になる訳ではない。一方、お前の継母は尚も悪行を続けるだろう。俺は、それを許しておく訳にはいかない」
私は、フレイグ様の言葉に何も言い返せなくなっていた。
彼は、未来のことを考えている。それが理解できて、言葉に詰まってしまったのだ。
私は、自分の継母のことをそこまで重く見ていなかったようである。彼女が許せない。そういう単純な気持ちしか、私の中にはなかったのだ。
しかし、フレイグ様はそれ以上のことを見据えている。私の継母が自由の身でいることによる影響を考えているのだ。
「……フレイグ様、色々と言ってすみませんでした。どうやら、私の見通しが甘かったようです」
「……気にするな。お前が言いたいことも理解できる」
「どうか、よろしくお願いします。私の継母の悪事を暴いてください」
「ああ、必ず暴いてみせる」
私の言葉に、フレイグ様はゆっくりと頷いてくれた。
彼は、魔族との戦いに最前線で参加していた。そんな彼なら、きっと様々な手で継母を追い詰めてくれるだろう。
フレイグ様の言う通り、これ以上継母のような悪女がのさばることなど、許されることではない。これで、彼女の悪行が全て暴かれてくれることを祈るばかりだ。
こうして、私の継母を追い詰めるための作戦が実施されることになったのだった。




