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継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。  作者: 木山楽斗


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26.同じ言葉を

「確かに、お前の言う通りかもしれないな……」


 フレイグ様は、ラフードのお墓の方を見たまま、ゆっくりとそう呟いた。

 その顔は、先程までよりも穏やかである。きっと、彼がどんな人だったかを思い出して、そんな彼がどう思うかまで理解したのだろう。


「あいつは、いつも明るい奴だった。俺にも、もっと明るくなれとよく言っていたものだ……」

「そうでしょうね……話を聞いただけの私でも、そう思います」

「そんなあいつのために、俺は笑って生きていかなければならないんだろうな……それが、あいつの望みなのだから」


 フレイグ様は、少しだけ笑みを浮かべていた。

 その笑みからは、前に進んで行こうという気概が読み取れる。

 どうやら、彼の心の中にあった悪い感情は、少しだけ拭えたようだ。きっと、まだまだ思う所はあると思うが、ほんの少しでも彼が前向きになってくれるなら、私としても嬉しい限りである。


「……お前に事情を話すべきかどうか迷っていたが、話して正解だったようだな」

「そ、そうですか?」

「ああ、お前のおかげで思い出せたんだ。あいつが、最期になんと言っていたかを」

「え?」

「あいつは、俺に笑って生きてくれと、そう言い残していったんだ」

「それは……」


 私は、フレイグ様の言葉に驚いていた。

 まさか、ラフードが本当にその言葉を残していたとは思っていなかった。彼なら、絶対にそう思っているだろうとは思っていたが、それをフレイグ様に最後に伝えていたということまでは、予想できていなかったのである。

 そういえば、フレイグ様は私がそういった時にやけに驚いていた。今思い返してみれば、それはそういうことだったのだろう。


「ありがとう、アーティア」

「い、いえ……」


 私に向けて、フレイグ様は穏やかな笑みを浮かべながら、お礼を言ってきた。

 それに対して、私は思わず目をそらしてしまう。なんだか、気恥ずかしかったからだ。

 私は今、とても動揺している。今まで向けられたことがないその笑みは、私にとって困惑の対象だったのだ。


「……どうかしたのか?」

「な、なんでもありません」

「そうか」


 フレイグ様は、そんな私を少し心配そうな瞳で見つめてきた。

 彼の優しさは、前々から感じ取っていた。だが、こういう風に素直に表に出されると、なんだか困ってしまう。


『……なんだか、面白いことになっているな』


 そんな私の様子に、ラフードは楽しそうに笑っていた。

 その笑みは、晴れやかな笑みだ。それは良かったと思う反面、自分が笑われているという事実に、私は少しだけ怒るのだった。

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