13.好印象なのは
私は、与えられた自室のベッドの上に寝転がっていた。
今日から、私はここで暮らすことになる。そんなことを考えながら、私は周囲を見渡した。
部屋は、とても綺麗だった。二人でもなんとかなると言っていた通り、あの使用人二人はとても優秀なのだろう。部屋を見て、私はそんな感想を抱いていた。
「ふう……」
思い返してみれば、ここに来るまで随分と色々なことがあったものだ。
継母から冷酷な辺境伯の元に嫁ぐように言われて、その道中で彼女が差し向けて来た野盗に襲われて、フレイグ様に助けてもらって。
その後には、フレイグ様の友達の精霊に会って、今ここにいる。なんとも、劇的な道中だったといえるだろう。
「少し疲れたかも……」
私は、自然とそんなことを口にしていた。同時に、ある考えが浮かんでくる。
屋敷の必要最低限の場所を案内した後、フレイグ様は私をこの部屋まで連れて来た。
それはもしかして、私のことを気遣ってくれたのだろうか。よく考えてみれば、もっと話すべきことはあったような気がするので、そういうことなのかもしれない。
「……それは、ポジティブに捉え過ぎなのかな?」
しかし、直後にそんなことを思った。
私は、フレイグ様を優しい人だと思っている。だが、だからといって、全ての行動に優しさがあるとは限らないだろう。
額面通りに受け取れば、彼は最低限のこと以外実行しなかっただけという可能性もある。彼が優しい人であることは間違いないと思うが、そういう人であるのも多分事実だ。なんでもかんでもポジティブに受け取るのは違うのかもしれない。
「……どうして、そんな風に考えるんだろう?」
私は、自分のフレイグ様に対する印象を少し不思議に思っていた。
あんなに冷たい態度なのに、私はどうも彼から温もりを感じてしまう。それが何故なのか少しわからなかったのだ。
もしかしたら、それはラフードの影響なのだろうか。彼がフレイグ様のことを良く言うから、そう感じる。そういうことなのかもしれない。
だが、思い返してみると私はラフードと会う前から、フレイグ様に好印象を抱いていた気がする。最初に彼と話した時から、なんとなくその温もりのようなものを感じ取っていたのだ。
「助けてもらったからかな?」
野盗に襲われている所を助けてもらった。その経験が、私の中では意外と大きいのかもしれない。
あんな絶体絶命の時に助けてもらったのだから、彼のことを良く思う。そういうことなのだろうか。




