第5話 同窓会
高校では、毎月1回席替えをすることになっていた。男子13人と女子33人のクラスでランダムに席替えするので、自分の周りがみんな女子になることもある。
ある時一番苦手な女子が隣の席になったことがあった。嫌いというよりは、怖かった。彼女の体格がよかったのもあったのかもしれないけど、ハッキりした性格だったので、高圧的な態度で話しかけられているように感じていたのだと思う。
一方の僕は、幼い頃から何を言われても何をされても徹底して笑顔で会話するようにしていた。何故そうするのかと言われると良く分からない。ひとつは自分に自信がないからなのだと思うけど、それと笑顔で会話することを論理的に結び付けて説明することは僕にはできない。ただ、こうした振る舞い方は気の強い女性からすると余裕のある男性とうつるらしい。
苦手な女子なのにやたらと話しかけられるものだから、全力で会話するという日々が続いた1カ月後、ようやく離れた席に移動することができた。しかし、それからというものどういうわけか、僕とその女子は付き合っているという噂が流れていた。本人の僕の耳にも入ってくるくらいだから、相当その噂はひろまっていたのだろうと思う。噂は彼女にも伝わっていたはずだけど、否定しているようではなかったので、今にして思うと、まんざらでもなかったのかもしれない。
同僚のお姉さんもこの同級生の女子と同じ気の強い性格だったということを考えると、気の強い女性から好意を持たれやすいのかもしれない。
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同僚のお姉さんとのことで、東京で彼女をつくるということの意味を深く考えるようになった僕は一計を案じた。要は東京で同郷の女性で出会える方法を考えればいいわけで、同窓会に出席すれば確実に出会えることを思いついた。毎年自宅に専門学校から同窓会の案内が届いてきており、近く新宿で同窓会があることになっていた。
同窓会当日、この日は何を思ったのか車で会場近くまで移動していた。
誰ひとり知らない人ばかりが集まっている会場に入っていった。僕の目の前に座った若い女性と話が盛り上がった。聞けば自宅は横浜だという。
この日は車で来ていることもあってソフトドリンクだけを飲んでいたので、彼女に同窓会が終わったら自宅まで送ることを提案した。あっさりでもなかったと思うけど、送っていくことになった。
車に乗り込み、すぐに高速道路にのった。車中でどんな会話をしたのかは覚えていなけど、高速を走っているというのに助手席で窓を開けてはしゃいでいる彼女の様子を覚えている。彼女の自宅につくまでに、来週の週末に芦ノ湖に行かないかと誘ってあっさり承諾してもらえた。
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1週間後の約束の日。真冬の芦ノ湖は思いのほか観光客が少なくかなり寂しい雰囲気に包まれていた。ふたりで遊覧船に乗ったり、土産物屋さんに行ったり、あとどこか行った気がするけど覚えていない。帰路の車中までには随分打ち解けて手を繋ぐまでになっていた。あるいはこのままお付き合いするという流れになってくれたらと期待していた。彼女は自分の仕事のことや、故郷の実家のことまで話してくれた。
でも彼女の自宅が近くづくにつれ、彼女の表情は次第に暗くなってきていた。どうしたのだろうと思っていると、彼女が重い口を開いた。彼女にはお付き合いしている彼氏が居るのだという。
かなりショックだった。だったら何故・・・・。でも気持ちの切り替えは早かった。自分もかなり落ち込んだものの、助手席で沈んで今にも泣きだしそうな彼女に僕は大丈夫だからと彼女の自宅に着くまで励まし続けて、自宅前で彼女をおろしてすぐに車をだした。彼女は僕の車が見えなくなるまで、その場で立ち尽くしていた。
自宅に帰り着いた僕はすぐに手紙を書いた。僕は大丈夫だから気にしないで欲しいとしたためて投函した。彼女からの返事はなかった。