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桃花神鷹記  作者: 守田
桃花島編
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第4話 対決!蜘蛛功

陸破空は意外にも簡単に見つかった。


貧しい村に武芸のできる者は少ない。

その中に達人がいるわけだから、すれ違いでもすれば卓越した内功を見逃すはずがない。


「よし。ひとまず、奴の跡をつけよう。」


すると陸破空も俺に気付き、尾行をまこうとする。


しばらくすれば、村はずれまで来ていた。


これは狙い通りだった。

民がいるところで戦えば、犠牲が出るかもしれない。

尾行すれば村から離れるはず、とふんでいたのだ。


「わしに何の用かな?」


振り返りざまに陸破空が問いかけた。


「陸殿とお見受けしました。」

「段公主は俺の妻です。お返しいただけますか。」


言いながら、戦いに備えて構えをとる。


「それは聞けぬ願いだな。」


奴は答えながらも、同じく構えをとる。


しかしその構えが珍しい。地面に這いつくばるような格好なのだ。

一見すると吹き出してしまいそうになるが、これが蜘蛛功の構えということだろう。


「仕方がない、力ずくで返していただくことにしましょう。」

「百毒邪教!」


陸破空は中原では聞かない名だが、間違いなく比類ない内功を持っている。

初めから全力で臨むべきだろう。


「蜘蛛功!」


俺が飛び出すと、奴はもう眼前に迫っていた。

恐ろしいまでの瞬発力だ。


何とか初撃をかわすと、反撃に出る。

十手ほど戦うが互角、二人とも飛び退き距離をとる。


「陸殿、なぜこんな村で隠れているのですか?」

「段公主を金との交渉に使いたいなら、さっさと連れて行けば良いでしょう。」


これは、俺の素朴な疑問だ。


「わしは、何の地位も名声も持っていない。」


「恐らく宋は金に敗れるだろう。そうなった時が好機だ。」

「次に狙うであろう大理国の公主、それをわしが差し出したらどうなる?」


「この武芸があれば、将軍として召し抱えられるだろう。」


そんなことを考えていたのか、くだらない奴だ。


俺は指を曲げ伸ばしさせ、コキコキと音を鳴らす。

もう奴に聞きたいことはない。


いくら達人とは言え、初見の技には簡単に対応できないだろう。


「鷹爪擒拿法!」


百仙功でシュルシュルと音を立てながら、陸破空の懐に飛び込む。

そして、関節技で瞬時に奴の右腕をからめとり、投げ飛ばすと同時に骨を折った。


「うぐっ!」

「何だその奇妙な技は?」


陸破空は飛び退くと、恐怖の表情を浮かべる。

そのまま全力の軽功で逃げ去って行った。


「この技に敵うはずはない。しかし、次に戦う時にも勝てるかどうか…」


「それにしても、阿月の居場所を聞かずに奴を逃がしてしまったな。」


仕方なく村中を探す羽目になった。



ようやく見つけると、彼女は小汚い民家に監禁されていた。


「遅くなってすまなかった。」


そう言いながら、椅子に縛り付けている縄を解く。

阿月は、自分が悪いと何度も俺に誤った。


「違うんだ。君の気持ちを考えず、俺の発言が軽率だった。」

「許してくれるかい?」


彼女は涙を流しながら、二度三度と頷いた。


「せっかくだ、帰りに寄り道していこう。」


「長沙も良いけど遠いから、今回は臨安府で羽を伸ばそう。西湖なんてどうかな?」


すると、今泣いた鳥が笑うように明るくなった。


昔から大人びたところがあったが、こういう一面もあったのかと驚きながら、李寨村を後にした。



西湖のほとりで東屋を見つけると、二人で茶を飲みながら美しい景色を楽しんでいた。


「教主、こちらにおられましたか。」


近づいてきたのは馬長老だ。


「おくつろぎのところを失礼します。」


「桃花島にはご不在でしたので、臨安府で情報を集めてどうにかお目通りできました。」


「今さら急ぐことでもありませんが、任長老の過去についてお耳に入れておきたいことがあります。」


直接会って話したいということか、一体何なんだ?


「任長老からは口止めされていましたが、やはりお伝えすべきだと判断しました。」

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