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桃花神鷹記  作者: 守田
邪教の秘宝編
3/45

第3話 山賊 三峡寨

鄖陽を出てしばらく進んだ頃、生まれて初めて山賊なるものに出くわすことになった。


「おいお前、ここを通りたければ銀子を置いていけ。」


何てことだ。

旅を再開したばかりと言うのに有り金を全て取られてしまったら、鄖陽にも戻れぬ俺は行き場がなくなってしまう。


しかし、相手は山賊。町の商人とはわけが違う。

反抗などしようものなら、簡単に殺されてしまうだろう。


困り果てていたその時、


「山賊、痛い目を見たくなければここを去れ!」


俺を助けてくれたのは…俺よりもみすぼらしい服装の男だった。

歳は俺のひと回り上くらいか。


「物乞いが何の用だ?」

「まぁ良い、二人ともあの世へ行け。」


そう言うと、山賊は刀を振り上げる。


「待て!!」


さらにもう一人、二十代の男が現れた。

山賊は手を止めて振り返ると、ばつの悪そうな顔で言う。


「柳寨主、これはその…」


柳寨主と呼ばれた男は、怒り心頭の様子だ。


「あれほど、罪のないものを襲うなと言いつけただろう。」


「どうしても理解できないなら、寨から出て行ってもらうぞ。」


彼が説教している間に、物乞いの男が俺の手首を取り脈を診る。


「お前、子供のくせに邪派の武芸を修練しているな。」


「それなら助ける必要もない、さらばだ!」


何と言っているのか分からないが、彼は軽功で飛び去って行った。

物乞いなのに凄い武芸だ、夢でも見ているのだろうか。


「配下が申し訳ないことをしたな。」


「俺は柳四復、三峡寨の寨主だ。」


この人は悪い人には見えない。

何やら謝っていること、彼の名前が柳であることは分かった。


「もしかすると、言葉が分からないのではないか?」


「俺たちの山寨はこの近くだ。良かったら来ないか?」


言葉を理解できていないことを察してくれたようだ。

それに、誘ってくれていることも分かった。


少林寺へ行くつもりだったが、毎日息苦しい生活より、こっちの方が楽しいかもしれない。

付いて行ってみよう。


「行きたいです。」


そう言うと、彼は俺の腕をとり馬に乗せる。


「やはり李殿が言う通り、邪派の武芸を修練しているな。」


「まぁ良い、まだ若いのだから三峡寨で更生させよう。」


馬でしばらく進むと、川で船に乗り換える。

俺は知っているはずもないが、かの有名な長江を渡るのだ。


反対の岸には、どうやって作ったのか分からないが、切り立った岸壁に通路が作られている。


そして、険しい道のりを行った先に彼らの山寨はあった。


「ここが俺たちの山寨だ。」


柳寨主が指さす先には、木で作られた大きな門があった。

まるで城門だ。


中に入ると、沢山の木造の家が所狭しと建てられていた。

その家々は、なかなか見かけることのない高床式の住居だ。


「こんな山の中に村があるなんて、驚きだな。」


俺は彼に精一杯の感想を伝える。

拙い中国語だが、彼にも意図は伝わっただろう。


「ところで、お前の名前は?」


柳寨主は微笑みながら質問した。


「墨小風です。」


彼は池の方へ視線を移すと、話しを続けた。


「俺たちは世間から山賊と言われている。」


「だが、真面目に生きている人間から金品を奪うことはない。役人を狙うんだ。」


「そのうち、墨兄弟にも手伝ってもらう。それがここに置く条件だ。」

「何も心配は要らない。ずっとここで楽しく暮らせるさ。」


ほとんど何を言っているのか分からなかったが、穏やかに話しかける様子を見て、やはり柳寨主は良い人だと思った。

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