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桃花神鷹記  作者: 守田
邪教教主の運命編
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第7話 金との戦い

開封府を金に略奪されてからも、宋と金の攻防は続いていた。


そんな時、宋軍の海州攻略に五大門派、少林派、狐山派が参加するとの話しが舞い込んできた。

海州は、北は山東省、南は浙江省に挟まれ、海に面した地域。

商業が盛んな主要都市のひとつだ。


「任霖さん、海州の戦いに参加したい。」

「ここで神鷹教の汚名を返上しようと思うんだけど、どうだろうか?」


俺の考えを聞き、彼女は頷く。

同意するだけではなく、むしろ今こそ戦う時だと言う。

これは、横にいた馬長老も同じ意見だった。


反乱を起こした黒玄は、言ってみれば曹教主派。

奴らを撃退してからというもの、間違いなく神鷹教が一つにまとまっている。

教団の結束を高めるのに良い機会だったのだ。


「よし。それでは、馬長老と半数の教徒を残し出発する。任霖さんは付いてきてくれ。」


黒玄の足取りが分からない状況のため、戦力を残す必要があったのだ。


半数と言っても200名以上の編成になったから、十分な戦力になるはずだ。



海州に着くと、もう戦は始まっていた。


俺たちの周りには、崑崙派と峨嵋派の姿が見える。

狐山派は…随分と離れたところにいるな。


「皆、俺に続け!」


そう言うと、先頭に立ち敵へ突っ込んでいく。


今回は俺たちの善行を見せつける狙いが大きい、だから神鷹教の旗を持たせた。

しかし、これが裏目に出た。


「教主、ご報告します。」

「味方であるはずの宋軍、それに正派から攻撃を受けています!」


なんと、俺たちは金軍を攻撃していると言うのに、奴らもろとも俺たちまで攻撃しているのだ。


事ここに至れば、神鷹教と力を合わせて戦うものと思っていた。

こんな時でさえも、邪派が許せないのか。

狐山派は遠いところにいるから、この状況に気付いていないだろう。


「分かった。任霖さんは皆を先導し、退却してくれ。」


退却していく姿を確認すると、俺は一人で敵陣に突っ込む。

漢人の攻撃は百仙功でかわし、とにかく前へ進む。


「百毒邪教!」


右腕、左腕と振るうと、紫色の煙と共に金軍の兵士が倒れていく。

一度に10人ほど倒しながら、100人、200人となぎ倒すように進む。


気が付けば、俺は一人敵陣の中にいた。

さすがに息が切れてきた。


「もはや退路もないか。」


「でもこれで良い。頑固な正派には、ほとほと愛想が尽きた。」

「俺が一人で金の大将を仕留めてやろう。」


そうすれば、もしかしたら過ちに気付いてくれるかも、という期待がなかったとは言えない。


さらに百毒邪教で突き進んで行くと、俺の通った後には禍々しい毒の道と死体の山が築かれている。


200人、300人と倒したところで、ついに敵大将の集団を見つけた。


「はぁはぁ、やっとここまで来た。」

「だが、あそこまでたどり着けるかどうか。」


俺の体は、致命傷こそないものの傷だらけで、あちらこちらから流血していた。

内力も限界に近い。


これは戦争なのだ、一人で局面を変えることなどできない。

そう自分の無力さを痛感したが、時すでに遅しである。


「ふんっ、上等だ。力の限り戦ってやる!」


もう内力を制御する意味はない、百仙功全開だ。

俺は上空を舞い、体を横に回転させながら、敵大将を目指して飛び出す。


派手に立ち回るから、辺りは毒の霧で包まれている。

しかし、大将の集団を目前にして、ついに力尽きてしまった。


「くそっ、あと一歩というところで。ここまでか…」


死を悟った、その時だった。


「小風、無事でいるわね!」


「皆、教主を囲みに入れなさい!」


そこに現れたのは、任霖さんだった。

20名ほどの教徒を連れている。


しかも、その教徒たちは大きな盾を持ち固まりとなって動いている。

その中心に俺を入れ、囲んで守ろうと言うのだ。


「驚きだな、こんな陣形を考えていたのか。」


「任霖さんのお陰で、もう少し生きながらえそうだ。」


任霖さんは盾の外で琴を奏でると、その発頚で敵を寄せ付けない。


それにしても、とても悲しい音色だ。

今の俺の気持ちを理解してくれているのは、彼女だけかもしれない。


「任霖さん、無理をしないでくれ!」


そう言うなり、意識を失ってしまった。

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