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桃花神鷹記  作者: 守田
邪教教主の運命編
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第2話 正派の裏切り

落ち着く暇もなく、林掌門に会うため臨安府へ向かうことにした。


桜梅小侠に伝言は頼んだものの、直接会って本音を伝えたいと思っていたのだ。

それに、俺も神鷹教の教主となったのだから、会談する資格はあるだろう。


少し寄り道して季刀苗寨という村に立ち寄ることにした。


ここには、苗族という少数民族が住んでいる。

彼らは刀法を得意としているから、来るべき倭寇との戦いに備え勉強するためだった。


「ここが季刀苗寨か。」

「静かな山村も良いものだな。」


馬長老に話しかけると、ゆっくり見渡しながら注意を促す。


「少数民族は山奥に追いやられるのが世の常、彼らが望んで山村にいるかは分かりませんよ。」

「食べ物も保存食が多いので、あまり期待などされませんように。」


任霖さんは神鷹教の再興で手が離せないから、代わりに馬長老を同行させたが、どうにもつまらない人だな。


それはさておき、まずは村人に刀法を見せてもらう。


「この刀は日本刀に近いものだな。」


「それに、刀法も子供の頃にTVで見た時代劇に似ている。」


干し肉をかじりながらつぶやいた。


「教主が何を言われているのか分かりませんが、彼らの刀法は倭寇の影響も大きいようです。」

「ここに来て正解でしたね、しばらく滞在して習っていきましょう。」


馬長老の言う通り、数日滞在した頃だった。


俺たちの宿へ、倭寇が現れたのだ。


「倭寇と一緒にいるのは、青城派ですね。どういうことでしょう?」


焦ることはないから、しばらく様子を見ようと彼に伝える。


すると、倭寇の者らはとんでもない相談を始めた。


「先日の件ですが…断掌門のご提案通り、江湖の制覇をお手伝いしましょう。」


「しかし、見返りは金だけという訳にはいきません。」


断虹子は武士の話しに頷くと、真っ白に伸びたあご髭を触りながら答える。


「有り難い、助太刀に感謝する。」


「分かっているとも。例の物は必ずお渡しする、そう山代殿へお伝え頂きたい。」


武士が去ると、外から入れ替わりに男が入ってきた。


「掌門、倭寇などと一体何の話ですか?」


断虹子は面倒臭そうに答える。


「姜永、お前は何も考えるな。わしを信じておれば良い。」


どうやら、青城派はこの2人だけのようだ。


「教主、今入ってきた男は、青城派の一番弟子です。」


馬長老の説明が終わるのも待たず、俺は断虹子の前へ出て行った。


「俺は神鷹教教主の墨です。」

「断掌門、倭寇の力を借りて江湖の覇者になろうなど、許されることではありませんよ。」


姜永は驚愕の表情を浮かべている。


「ふん、何を証拠にそんな言いがかりをつけるのだ。」


こいつ、俺が見ていたというのにとぼける気か。


「断掌門、往生際が悪いですね。」


「ここでは他の方にご迷惑がかかります。外で話しましょう。」


彼を連れ出し、再び話し出そうとした時だった。


「青峰針!」


突然、暗器を放ってきた。


まさかこんな卑怯な手を使うとは思わず、至近距離だから避けることも出来ない。


俺は背中に針を受けてしまった。


「何て奴、こんな人間が五大門派の掌門とは。」


「悪事を認めるということで良いですね?」


俺の問いには答えず、剣を抜いた。


「虚無剣!」


暗器を放った上に、いきなり必殺の一撃を繰り出してきた。


こいつに手加減する道理はない。

百毒邪教と八法殺法で迎え撃つ。


三手も交わせば、俺の方が一枚上手と分かった。


「民のため、成敗させて頂く!」


そう言うと、内力全開の一撃を放つ。


「ぐはっ!」


肩に当たると、奴は大量に吐血した。


傷口の周辺は、見る見るうちに紫色へ染まっていく。


「なぜ毒針が効かないのだ。」


「くそっ、こんなところで死ぬわけには…」


俺の体には百毒が共存している。

奴の毒針など効くはずがない。


断掌門が気を失うと、姜永が担いで軽功で飛び去って行く。


「待て!殺す気はない!」


俺の言葉が届いたかどうか分からないが、姜永の姿は見えなくなってしまった。


実は、すぐに毒を消してやるつもりだった。

断掌門の処遇は、林掌門が決めれば良いのだから。


しかし、連れ去られてしまったから、もう奴の命は助からないだろう。

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