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左遷の鬼──異世界に追いやられたモブ社畜最強説──社内のカスどもを俺は蹴散らすぜ  作者: 猫目少将@「即死モブ転生」書籍化
8 新しい朝と招かれざる客

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8-3 タマゴ亭さん、ミフネとアーサーの黒歴史を次々暴くw

「なんだって」


 いつも冷静沈着な渋いおっさん――あのミフネ――が大声を上げた。旧都遺跡王宮地下、混沌の門を潜った先、例の「知覚の扉」の前だ。ミフネだけじゃなくて、アーサーや居並ぶ近衛兵・スカウト連中も目を見開いてるな。


「もう一度言ってくれ」

「王女の行方がわかった。それに本人にも会った。この人だ」


 傍らにちょこんと立ったタマゴ亭さんを手で示す。


「こんにちはー」


 微笑んだタマゴ亭さんが、ぴょこっとお辞儀した。


「ちょっと待て、平」


 ミフネは唸った。


「このかわいいお嬢さんが、シュヴァラ姫だってのか」

「ああそうさ」


 俺は説明した。姫は古代の魔術式を起動して、転生という形で異世界――つまり俺と吉野さんの世界――へと飛んだと。しかも過去に遡って。


「馬鹿なことを言うな」


 アーサーが笑い出した。


「荒唐無稽だ。それにその女、全然姫に似ちゃあいない」

「それは転生だからだよ。アーサーさん。ちゃんと日本人の両親がいるし」


 俺の胸からレナが説明した。


「王女は一年前、二十二歳の夏に失踪して転生したんだ。十八年前の日本にね。だから今は十八歳。計算上は五年くらい若返ったことになるんだよ。記憶は保ってたから、人生の経験は四十年ばかりになるわけだけどね」


「まあ待て、アーサー。確かに……」


 澄んだ瞳で、ミフネはタマゴ亭さんを見つめた。


「たしかに他人だが、どことなく姫の面影はある。仕草とか、ちょっとした表情とか。顔の造作自体もな」

「ミフネ、あんた相変わらず渋いね」


 怪しい地下で武装した兵士に取り囲まれても動じず、タマゴ亭さんが言い放った。


「昔好きだった人のこと忘れられず、今でも独身なんでしょ」

「むっ」


 ミフネは顔をしかめた。取り巻く近衛兵は目を見張ってる。多分これ、触れちゃいけない話だ。


「あたし言ったじゃない、こっそりと。あんたはキフネ家の令嬢と結婚しなって。名字だって似てるし、あの娘、性格最高で、体だってあたしが言うのもなんだけど、とてつもなく――」

「なんで知ってる。その話を」

「なんでもくそも、あたしとミフネだけの秘密でしょ。あんた赤くなってたし」


 近衛兵たちは、真面目な顔をしていいのか笑っていいのか迷っているようだった。まあ俺なら笑うけどな。クソ真面目な隊長の意外な一面が見られたわけで。


「それにアーサー」


 今度はアーサーに向き直った。


「あんたとはあんまり会ったことはないけど、お父様から話は聞いてる。なんだっけほら、辺境の村で娘に一目惚れしたら実はハーピーで。エッチなことしようとしたら総排出腔が――」

「よせ」


 アーサーの部下は、遠慮なく笑い出した。


「マジすか隊長」

「いや嘘だ。決まってるだろ」


 アーサーは言い切った。


「お前、部下の前でなんということを……」

「もっと話そうか。あんたの武勇伝。えーとなんだっけ……。そうそう。まだ十代の頃、童貞を持て余したあんたは、バレたら恥ずかしいからお忍びで城下の曖昧宿に行ったんだけど、待合室でばったり上司と――」

「止めろっ。もういい」


 大声を上げたなw


「うーん……たしかに、城下の噂話は、暇を持て余した姫様があちこち聞いて回ったとはいうが……。まさか」


 改めて、初めて見るかのように、タマゴ亭さんに上から下まで視線を飛ばしている。


 まあ気持ちはわかるわ。なんたって姫とわからせるためとはいえ、自分の黒歴史をガン披露されたんだからな。お気の毒w


「見た目は俺はよくわからんが、この性格の悪さ――もとい好奇心旺盛な感じ――は、まさにおてんば姫そのもの……。本当なのか」


言っていいことと悪いことがあるぞ。アーサーw


「王宮に戻ろう」


 突然、ミフネが提案した。


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